支離滅裂な話をする子どもへの理解と支援
~「伝わらない」ではなく、「伝え方が違う」だけかもしれない~
はじめに:子どもの話に「困惑」していませんか?
「ねえママ、今日さ、学校でカエルがいてね…あ、そういえばテレビのやつでさ…先生が笑ってて、アイス食べたくなったんだよね!」
このように、話が飛び飛びで何を言いたいのかわからない…そんな子どもと向き合っていると、「この子は何を考えているの?」と戸惑ってしまうこともあります。
特に発達障害のあるお子さんでは、「話が支離滅裂になる」ことがよく見られます。しかしそれは「頭の中が混乱している」からではなく、「伝えたい気持ちはあるのに、順序立てて話すことが難しい」という背景があるのです。
本記事では、支離滅裂な話し方をしてしまう子どもの背景と、家庭や教育現場でできる具体的な支援法を詳しく解説します。
1. なぜ話が支離滅裂になるのか?考えられる背景とは
1-1. 実行機能の発達に課題がある
発達障害、とくにADHDやASDのある子どもには、「実行機能」と呼ばれる力に弱さがあることがあります。これは、「計画を立てる」「物事を順序立てて行う」「目的に向かって進める」といった力です。
話をするときも、実はこの実行機能が大きく関係しています。話したいことを整理し、順序よく、相手に伝わるように組み立てて話すには高度なスキルが必要です。これがうまく働かないと、話がとびとびになってしまうのです。
1-2. 言語表出の特性
ASD(自閉スペクトラム症)のあるお子さんの中には、頭の中でのイメージは鮮明でも、それを言葉で表現する力に弱さがある場合があります。本人の中では筋が通っているつもりでも、周囲には飛び飛びにしか伝わらないため、結果的に「支離滅裂」に聞こえてしまうのです。
1-3. ワーキングメモリの弱さ
話の内容を一時的に記憶しながら組み立てる力(ワーキングメモリ)が弱いと、話の途中で前の内容を忘れてしまい、急に別の話題に飛んでしまうこともあります。
1-4. 情報処理スピードの特性
処理速度がゆっくりな子どもは、話しながら情報の整理が追いつかず、前後の文脈がつながりにくくなることがあります。
2. 大人が誤解しやすい「支離滅裂な話」の受け取り方
2-1. 「ふざけている」「話を聞いていない」と誤解される
実は、本人はとても真剣に話しているにもかかわらず、「話が飛ぶ」「焦点がずれる」ために、大人からは「ふざけている」と見られたり、「集中して話せない子」と誤解されたりします。
2-2. 「相手に伝えることができない子」として扱ってしまう
支離滅裂な話し方の裏には、「伝えたい」「聞いてほしい」という強い気持ちがあることが多いのです。それを汲み取らずに「何を言っているのかわからない」と片づけてしまうと、子どもは「どうせわかってもらえない」と自己肯定感を下げてしまいます。
3. 家庭でできる具体的な支援の方法
3-1. 「話す準備」を一緒に整える
いきなり話すのではなく、何を伝えたいのか一緒にメモをとったり、絵に描いたりしてから話させることで、頭の中が整理されます。
例:「今日あったうれしかったことを3つ、順番に絵に描いてから話してみよう」
3-2. 話の順序を視覚でサポートする
「はじめ・なか・おわり」など、話の構成を見える化することで、順序だてて話す練習ができます。
支援ツール例:
「お話しマップ」(絵カードで「いつ」「どこで」「だれが」「なにをした」などを並べる)
ホワイトボードにキーワードを並べる
3-3. 最後まで聞いてから、整理してあげる
話の途中で「なに言ってるの?」「関係ない話はやめて」と遮らず、「なるほど、○○があったんだね。その後は?」と、相手の話を一旦最後まで聞くことが大切です。
その上で、「じゃあ最初から順番に言うと…」と大人が整理して返してあげることで、子どもは「どう話せば伝わるか」を学んでいけます。
3-4. 「言い換え」のモデルを示す
本人の言葉をそのまま真似するのではなく、「そういうことがあったんだね。○○っていうと伝わりやすいかも」と、自然に言い換えるモデルを日常で見せていくことも効果的です。
4. 学校や支援機関でできる工夫
4-1. 話し方練習の機会をつくる
「話す力」は練習で育ちます。グループでの「今日のひとこと発表」や、「3コマ漫画を描いて発表する」など、楽しく伝える経験を日常的に取り入れると効果的です。
4-2. 書いてから話すワークの導入
「話す」前に「書く」工程を挟むと、思考が整理されやすくなります。
例:
「今日のできごと新聞」
「○○ちゃんの一日レポート」など
4-3. 話がずれても否定しない環境づくり
支援者や教師が「話がずれてる!」と即座に指摘するより、「あ、今ちょっと話が飛んだね。戻ろうか」と柔らかくつなげ直すスキルが求められます。
5. 長期的な目標は「伝わる体験の積み重ね」
子どもが話す力をつけていくためには、「話したらわかってもらえた」「聞いてもらえた」「伝えられてうれしかった」という体験の積み重ねが何より重要です。
一度の会話ですべてをまとめさせる必要はありません。「今日は順序よく言えたね」「前より長く話せたね」と小さな変化を喜び合う姿勢が、子どもの自己効力感を高めていきます。
おわりに:わからない話の中にも“伝えたい”がある
「支離滅裂な話」に耳を傾けるのは、時に根気がいることです。しかし、その中には必ず、子どもなりの「伝えたい思い」が詰まっています。
私たち大人が「何を言いたいのかな?」と興味を持って接すると、子どもは「話していいんだ」「わかってもらえるんだ」と安心して話せるようになります。
「伝わらない」ではなく、「伝え方が違うだけかもしれない」。そんなまなざしで子どもの言葉に寄り添っていきましょう。
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