【食事中に適切な行動をとることができない子どもへの理解と支援】歩き回る、こぼす、投げる・・・
〜落ち着いて食べるには、“安心”という土台が必要です〜
■ はじめに:食事の時間が“悩みの時間”になっていませんか?
「席を立ち歩く」
「遊び食べがやまらない」
「食べ物を投げる」「わざと汚す」
「他の子にちょっかいを出す」
「すぐに立ち上がる」「食べるのに極端に時間がかかる」
保育や家庭、学校現場でこうした悩みを抱えていませんか?
大人から見ると“マナーが悪い”“ふざけている”ように見えることもありますが、
実はそれらの行動の背景には、発達の特性や心理的な要因が潜んでいることが多いのです。
■ 第1章:「食事中の不適切な行動」はなぜ起こる?
◎ 1. 感覚の過敏・鈍感さが影響している
食器の音に強く反応してしまう
特定の食材の感触やにおいに敏感
食事中のざわざわした環境に落ち着かない
口の中の感覚が鈍く、食べる量・ペースを調整しづらい
これらの子どもにとって、**食事中は“苦手な感覚が集中する時間”**でもあるのです。
◎ 2. 姿勢の保持が難しい
体幹が弱くて座り続けられない
足がつかない椅子でふらふらする
肘や上半身を支える筋力が不足している
→ 結果として、座るのがつらくなり、動き出してしまうのです。
◎ 3. 発達特性による注意のズレ
ADHD:周囲が気になって集中できず、話しかけたり歩き回る
ASD:ルールやマナーの理解が難しい/刺激に過敏
知的障害:“食事中に静かにする”など抽象的なマナーの理解が難しい
◎ 4. 食への不安や不快感
食べ物そのものへの不安(味・食感)
食事の経験が少なく“楽しい時間”として認識できていない
過去の失敗体験(こぼして叱られた/吐いてしまった)から来る回避反応
■ 第2章:大人が陥りやすい誤解とNG対応
❌ 「ふざけてる」「やる気がない」
→ 実は“座っていることがつらい”“食べるのが不安”などの背景があることも。
❌ 「ちゃんとしなさい」「食事中は静かに!」
→ 何度も叱ることで“食事=ストレス”になり、問題行動が増える悪循環に。
❌ 「他の子はできているのに」
→ 比較することで自己肯定感が下がり、ますます不安や抵抗を強めることも。
■ 第3章:家庭でできる支援と工夫
◎ 1. 椅子と机の環境を見直す
足がしっかり床に着くよう調整
肘が90度になる高さの机
前かがみになりすぎないよう姿勢サポートクッションを使う
◎ 2. 食事の時間に「安心できる」環境をつくる
音(テレビ・話し声など)をできるだけ少なく
配膳をシンプルにする
食具や食器を子どもに合ったサイズに
◎ 3. 行動の切り替えを視覚でサポート
タイマーや時計で「始まり」「終わり」を予告
視覚的スケジュール(絵カードなど)で「今なにをする時間か」を明示
◎ 4. 「食べやすいもの」「食べやすい形」からチャレンジ
苦手な食材も、刻む・混ぜる・温度を変えるなど工夫
手づかみを認める→スプーン→箸と段階的に支援
■ 第4章:保育・学校現場での支援のポイント
◎ 着席できない子には“個別テーブル”や“立食エリア”の導入
動けるスペースをつくることで落ち着いて食べられる子もいます
◎ “食べない子”は叱らず、「触れるだけでもOK」からスタート
嫌な思い出を減らすことで“食べようとする姿勢”が生まれる
◎ 食事前後の時間を丁寧に切り替える
食事=楽しい・落ち着ける時間 と感じられるように配慮
◎ 支援者全体で「静かに座ること」より「安心して食べること」を重視する
マナーの習得はその次です
■ 第5章:「適切に食べられない」のは“育っている途中”
食事のマナーや集中力は、発達の成熟と経験を通じて育っていく力です。
「できない」のではなく、「まだ学びの途中」と考えて関わることが大切です。
■ 第6章:行動ではなく“背景”を見る視点を育てよう
同じ「席を立つ」という行動でも、
感覚過敏で長時間座れない
注意がそれてしまった
ルールが理解できていない
食事が苦手で逃げたい
その“理由”によって、対応は変わります。
大人がすべきことは、表に出た行動だけで判断せず、その奥を見ようとすることです。
■ おわりに:食事は“スキル指導”ではなく“関係性”の場
食事の時間は、子どもにとって「栄養を取る」だけでなく、
安心や信頼、人との関わりを感じられる貴重な時間です。
「静かに食べなさい」と注意する前に、
「この子が安心して食べられているか?」を問い直してみませんか?
マナーは、安心の上にしか育ちません。
まずは「食べることが楽しい」と感じられる環境づくりからはじめましょう。
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