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日記『栗を拾いに』


先日、近所のおばあちゃんたちと、栗を拾いに行きました。

おばあちゃんたちはいつもの散歩コースの栗の木、というかすべての木を把握しており場所はどこそこ、この時間帯に行けば栗がたくさん拾える、遅くになると獣が栗を目当てにやってきて危ない、もう少しするとここは葉が染まってきれい、といったことをたくさん教えてくれます。

僕の祖母は、近所でもひろく顔の知れた人なので、その手のお誘いには事欠きません。

「アヤトくんも行かんかいね」

彼女たちは、なぜかどうしても僕を連れていきたいようでした。


***


せっかくのことだし、僕も栗を食べたいので参加することに。

祖母をはじめとする『栗あつめ隊』の面々には、歴戦の色が浮かんでいます。

彼女らについていって、いくつかの栗あつめスポットを巡りました。

道行く先々で、たくさんのイガが地面に落ちているのが見えます。

僕は中に実がつまっているイガをみつけて、取り出そうとしましたが、上手くいきません。

茶色くなった栗のイガは針の一本一本が硬く、軍手ごしでも、とても触れられないほどなのです。


***


後から知ったのですが、栗のイガはもともと葉の一種なのだそう。

そういえば、まだ木についている栗は緑のものが多かったように思います。

落下して硬く、茶色くなったものはさながら落ち葉といったところでしょうか。

そしてこれも後に知るところによると、食べる部分は種なのだといいます。

分類としては果実ではなく、ナッツ。

そう思うと、一個の命を頂いているというありがたみを感じるから、なんだか不思議なものです。


***


さておばあちゃんたち『栗あつめ隊』は、というと、僕の痛がる様子をみて愉快そうに笑っていました。

「よう見とけよ」

そう言うと、おばあちゃんの一人がイガを足でむんずと踏んづけ、年季のはいった鎌を取り出し、刃先で割るようにして実を取り出したのです。

鎌を借り、見よう見まねでやってみると、ランニングシューズのメッシュ生地を貫いてくるイガの痛みを感じながらも、なんとか実を取り出すことに成功。

10月にしては強い陽がさすなか、僕たちは目を皿にしてつやつやの栗の実を追いかけました。

「これを採るのが楽しいんや」

おばあちゃんたちは、みんな子どもみたいに見えました。


***


「アヤト、あれ届かんかいね」

言われて祖母が指した方をみると、枝にくっついている、まだ青い部分も残るイガ。

「あそこにもあるわ」
「あれ採って、あれ」
「あの枝ひっぱって」

『栗あつめ隊』は夜空に散りばめられた星を数えるように、口々にそんなことを言い始めます。

僕が連れてこられた理由がわかった気がしました。


***


やがて近所の栗の木を巡り終え、目につくイガの中身はあらかた取り出したかなという頃。

祖母が携えたトートバッグの中は、たくさんの栗の実で溢れていました。

当然、僕はそのような大量の栗を見たことがありません。

『栗あつめ隊』は、自分たちが採った栗をすべて祖母にくれたのでした。どうやら本当に『栗、あつめたい』だけだった様子。

持って帰るのも、ちょっと一苦労な量の栗。

我が家の冷蔵庫の、野菜室を占拠してしまった栗たち。

このとき、僕はまだ知りませんでした。

ほんとうに大変なのは、あつめてからなのだということを。


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