日記『栗を拾いに』
先日、近所のおばあちゃんたちと、栗を拾いに行きました。
おばあちゃんたちはいつもの散歩コースの栗の木、というかすべての木を把握しており場所はどこそこ、この時間帯に行けば栗がたくさん拾える、遅くになると獣が栗を目当てにやってきて危ない、もう少しするとここは葉が染まってきれい、といったことをたくさん教えてくれます。
僕の祖母は、近所でもひろく顔の知れた人なので、その手のお誘いには事欠きません。
「アヤトくんも行かんかいね」
彼女たちは、なぜかどうしても僕を連れていきたいようでした。
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せっかくのことだし、僕も栗を食べたいので参加することに。
祖母をはじめとする『栗あつめ隊』の面々には、歴戦の色が浮かんでいます。
彼女らについていって、いくつかの栗あつめスポットを巡りました。
道行く先々で、たくさんのイガが地面に落ちているのが見えます。
僕は中に実がつまっているイガをみつけて、取り出そうとしましたが、上手くいきません。
茶色くなった栗のイガは針の一本一本が硬く、軍手ごしでも、とても触れられないほどなのです。
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後から知ったのですが、栗のイガはもともと葉の一種なのだそう。
そういえば、まだ木についている栗は緑のものが多かったように思います。
落下して硬く、茶色くなったものはさながら落ち葉といったところでしょうか。
そしてこれも後に知るところによると、食べる部分は種なのだといいます。
分類としては果実ではなく、ナッツ。
そう思うと、一個の命を頂いているというありがたみを感じるから、なんだか不思議なものです。
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さておばあちゃんたち『栗あつめ隊』は、というと、僕の痛がる様子をみて愉快そうに笑っていました。
「よう見とけよ」
そう言うと、おばあちゃんの一人がイガを足でむんずと踏んづけ、年季のはいった鎌を取り出し、刃先で割るようにして実を取り出したのです。
鎌を借り、見よう見まねでやってみると、ランニングシューズのメッシュ生地を貫いてくるイガの痛みを感じながらも、なんとか実を取り出すことに成功。
10月にしては強い陽がさすなか、僕たちは目を皿にしてつやつやの栗の実を追いかけました。
「これを採るのが楽しいんや」
おばあちゃんたちは、みんな子どもみたいに見えました。
***
「アヤト、あれ届かんかいね」
言われて祖母が指した方をみると、枝にくっついている、まだ青い部分も残るイガ。
「あそこにもあるわ」
「あれ採って、あれ」
「あの枝ひっぱって」
『栗あつめ隊』は夜空に散りばめられた星を数えるように、口々にそんなことを言い始めます。
僕が連れてこられた理由がわかった気がしました。
***
やがて近所の栗の木を巡り終え、目につくイガの中身はあらかた取り出したかなという頃。
祖母が携えたトートバッグの中は、たくさんの栗の実で溢れていました。
当然、僕はそのような大量の栗を見たことがありません。
『栗あつめ隊』は、自分たちが採った栗をすべて祖母にくれたのでした。どうやら本当に『栗、あつめたい』だけだった様子。
持って帰るのも、ちょっと一苦労な量の栗。
我が家の冷蔵庫の、野菜室を占拠してしまった栗たち。
このとき、僕はまだ知りませんでした。
ほんとうに大変なのは、あつめてからなのだということを。
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