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恋する女は嫌いだ【アマノ文筆クラブ】✖️【木曜日は3-スデイ】

【アマノ文筆クラブ】さんのお題2回目と【木曜日は3-スデイ】のお題で物語を書いてみようとチャレンジしたら、4,000字越えのお話ができました…。
これでもかなりいろいろ削りました💦
暇つぶしにお読みいただけたら、と思います。
よろしくお願いします🙇

1.ジェネリック
2.令嬢の復讐劇
3.回転寿司

《今週の三題噺》

(恋する女は嫌いだ…。)

とある王国の公爵令嬢・クラリスは、婚約者の王子レオンとその隣に立っている侯爵令嬢・シャルロットを見ながら、そんなことを考えていました。

クラリスは幼いころから、王子レオンの婚約者として育てられていました。

美しい姿勢。
完璧な礼儀作法。
政治。
歴史。
ダンス。
楽器…。

『未来の王妃にふさわしくあれ』

そう言われ続けて、血の滲むような努力を重ねてきたのです。

けれど、ある日、レオン王子から「大切な話がある」と呼び出されて、レオン王子の住むお城に訪問したところ

「クラリス。
 私は他に好きな人ができてしまった。
 君との婚約を破棄させてくれ。」

と言い、控えめでふわふわした雰囲気を全身にまとったシャルロットを隣に立たせたたのです。

「…お言葉ですがレオン王子。
 私には、シャルロット嬢が王妃としてやっていけるとは思えません。
 惚れた腫れたを楽しみたいのであれば、愛人としてお迎えになさったらどうですか?」

クラリスは淡々とレオン王子に伝えるが、レオン王子はシャルロットの肩を抱き寄せてきっぱりと言います。

「…クラリス。
 私は君といると息が詰まるんだ。
 ずっと間違えないように見張られているようで、苦しくなる。
 …でも、シャルロットと話をしていると、とても気持ちが休まるし、公務もはかどるんだ。
 私はシャルロットを王妃に迎えて、この国を作っていこうと思う。
 どうか、理解をして欲しい。」

シャルロットが頬を赤く染めて、レオン王子を熱いまなざしで見つめます。

クラリスは、震える指を握りしめながら、完璧な笑顔を浮かべました。

「レオン王子の思いはひとまず理解できましたわ。
 ただ、婚約破棄については、こちらとしても少々考える時間を頂ければと思います。
 よろしいでしょうか?」

「…ああ、もちろんだ…。
 ただ、私の気持ちは変わることはないけどな…。」

クラリスは丁寧にお辞儀をしてその場を立ち去りました。

けれど心の中では、煮えたぎるような怒りが渦巻いていました。

(シャルロットのあの顔!!
 本当に王妃としてやっていく自覚をもって、レオン王子のそばにいるつもりなのかしら!!
 あんな女、某国の王妃のように国のお金を使い込んで処刑されるのがオチよ!!
 王国を守るために…私が何とかしなければ…!!)

クラリスは復讐を決意し、早速、名門ジェネリック家の調薬師を内密で呼び出しました。

調薬師が渡したのは”相手を遠い世界へ飛ばす薬”でした。

クラリスは、シャルロットに「二人きりで話がしたい」と呼び出します。

(紅茶に薬を混ぜて飲ませてしまえば…シャルロットは目の前から消える…。)

クラリスはこれでいい、と自分に言い聞かせるも、緊張からか頭が痛くなってきました。

調薬師からいつももらっている薬を飲むと、視界がグニャリと歪み、そのまま意識がなくなってしまいました。

クラリスは間違って”遠い世界へ飛ぶ薬”を飲んでしまったのです!

目が覚めると、男女2人がクラリスの顔を覗き込んでいました。

どことなくレオン王子とシャルロットに似た2人が、安堵のため息をついて言います。

「ああ、生きてた!
 ずいぶん着飾った女性が森の中で倒れているから、何事かと思ったよ…。
 コスプレの撮影か何かかい?」

クラリスは状況が呑み込めず、黙り込んでいましたが、ズキズキと頭が痛むので調薬師からもらった薬を探すも見つかりません。

頭を押さえていたら、シャルロット似の女性が

「…頭が痛いんですか?
 私も、頭痛持ちなんで、よかったら飲みますか?
 ジェネリックの頭痛薬ですけど…」

と言って、薬をクラリスに渡しました。

「……あなたもジェネリック家のお薬をお持ちなのね。
 それなら、安心だわ。」

クラリスはためらいなく薬を飲むと、スーッと痛みが引きました。

レオン王子とシャルロットに似た男女は、「たびと」と「こより」と名乗りました。

クラリスはドレスの裾を少しつまんで、丁寧にお辞儀をしてお礼を言うと、2人は「わぁ…本当のお姫様みたいだ!!」と盛り上がります。

クラリスはその無邪気な反応に、フフッと思わず笑うと、張り詰めていた緊張の糸が切れたのか、お腹がグゥ〜と盛大な音を鳴らしたのでした。

たびとは思わず吹き出し、

「ははっ!
 お姫様でもお腹は鳴るんだね。」

と言いました。

クラリスはカァッと顔を赤くして、扇子もないのに口元を隠す仕草をします。

「し、失礼ですわね!
 これは、その…突然倒れた影響で…!」

こよりはクスクス笑いながらリュックをごそごそ漁り、

「あ、そうだ。
 お昼用に買ってた柿の葉寿司あるよ。
 よかったら食べる?」

と言って、木の葉に包まれた食べ物を取り出しました。

「……葉っぱ?」

クラリスは怪訝そうに眉をひそめます。

こよりは慣れた手つきで葉を開きました。

中には、美しく並べられた小ぶりの寿司が入っています。

「これは柿の葉寿司っていうの。
 美味しいよ。」

「……魚を、生で?」

クラリスはぎょっとしました。

「大丈夫、大丈夫!
 お腹壊したことないから!」

たびとは軽い調子でそう言って、自分の分をぱくりと食べました。

クラリスは恐る恐る寿司を見つめました。

艶やかな魚。
整った形。
ふわりと香る葉の匂い。

(まるで宝石箱みたい…。)

そう思いながら、小さく口を開けて一口食べてみます。

その瞬間。

「…………。」

クラリスの口の中に、魚の旨みと酢飯の香りがふわりと広がりました。

「……美味しい。」

こよりは嬉しそうに笑いました。

「でしょー!?」

クラリスは、もう一つ寿司を手に取りながら、ぽつりと言います。

「……この世界の料理人は、かなり優秀なのね。」

たびとは笑いながら、

「そんな大げさな。」

と言いましたが、クラリスは真剣な顔で寿司を見つめていました。

「魚を生で食べるなど、正気の沙汰ではないと思いましたけれど…。
 この香り付け…保存方法…実に合理的だわ…。」

ぶつぶつ分析し始めたクラリスに、こよりが小声で言います。

「……ねぇ、この人、本当に貴族設定が細かいタイプのコスプレイヤーなんじゃない?」

「いや、でも演技にしては自然すぎない?」

そんな話をしているうちに、クラリスはぺろりと柿の葉寿司を平らげてしまいました。

そして少し間を置いてから、気まずそうに視線を逸らし、

「……もう、ありませんの?」

と、小さな声で聞いてきたのです。

たびとが笑いながら言います。

「そんなに気に入ったなら、今度もっと色んな寿司食べてみる?」

クラリスは勢いよく顔を上げました。

「……色んなスシ?」

数時間後。

クラリスは、ネオン輝く回転寿司店の前で固まっていました。

「……なに、ここ。」

店の看板には、大きく『本日まぐろ祭り開催中!!』と書かれています。

店の中からは、人々の楽しそうな笑い声と、皿のぶつかる音が聞こえてきました。

こよりが笑顔でクラリスの背中を押します。

「大丈夫、大丈夫!
 気軽なお店だから!」

「気軽…?
 この光り方のどこが気軽ですの…。」

恐る恐る店の中へ入ると、

「いらっしゃいませー!!」

と元気な声が響き渡りました。

クラリスはビクッと肩を震わせます。

席に案内されたクラリスは、目の前を流れていく皿を見て絶句しました。

「…………。」

赤。
青。
黄色。

色とりどりの皿に乗った寿司が、ずらりと目の前を流れていきます。

クラリスはゆっくりと口を開きました。

「……どうして、料理が流れているの?」

「回転寿司だから。」

「回転寿司……。」

クラリスは真顔で寿司を見つめます。

「つまり、自ら料理を運ぶ必要がない…。
 給仕も最低限で済む…。
 ……なんて合理的なの…。」

たびととこよりは顔を見合わせます。

クラリスはさらに真剣な顔になり、

「この仕組みが王宮に導入されたら、晩餐会の形式そのものが変わるかもしれないわ…。」

と呟きました。

「いや、そこまで壮大な話じゃないと思うけど!?」

こよりが思わずツッコみます。

その時、たびとが一皿取ってクラリスの前に置きました。

「はい。
 まずは定番のサーモン。」

「さーもん…。」

艶やかな橙色の魚を、クラリスはじっと見つめます。

「……本当に食べるの?」

「めちゃくちゃ美味しいよ。」

クラリスは恐る恐る一口食べました。

そして。

「………………。」

長い沈黙が続き、たびととこよりが不安そうに顔を覗き込んだ次の瞬間。

「……もう一皿。」

クラリスは静かに言いました。

「え?」

「もう一皿くださいませ。」

その後。

炙りサーモン。
いくら。
えんがわ。
茶碗蒸し。
デザート。

クラリスの目の前には、次々とお皿が積みあがっていきました。

そして食後。

クラリスは遠い目をしながら呟きます。

「……恋愛などしている場合ではないかもしれないわ。」

「え?」

「スシには、無限の可能性がありますもの。」

たびととこよりは、しばらく何も言えませんでした。

「たびと様、こより様、大変刺激的な体験をさせてくださってありがとうございます。
このお礼は国に帰ったら……」

その瞬間。

クラリスの身体が、ふわりと光に包まれました。

「えっ!?」

「クラリスさん!?」

たびととこよりが驚く中、
クラリスの姿は、まるで最初から存在しなかったかのように消えてしまいました。

ハッと目を覚ますクラリスは、見覚えのある自室のベッドに横たわってました。

「あれは……夢だったのかしら?
 ……いえ、確かに私はどこか遠い国の『スシ』というものを堪能いたしましたわ…。
 この感動を覚えているうちに、再現しなければ!!」

数日後。

クラリスは厨房にこもり続けていました。

「魚を薄く切って…酢につける…。
 いえ、回転機構も捨てがたいわね…。」

山積みになった試作品を前に、使用人たちは困惑しています。

そこへレオン王子が訪ねてきました。

「クラリス…。
 婚約破棄の件なんだが…。」

するとクラリスは顔も上げずに言いました。

「今、忙しいのです。
 婚約破棄…ああ、そういえばそんな話もありましたわね。
 よろしくてよ。
 シャルロット嬢とお幸せに。」

「……え?
 …いいのかい??」

「ええ、今はそれどころではないのです。
 ”スシ”の再現が私にとって重要なのです。
 あ、レオン王子。
 北の方に魚の取り扱いに長けた国があったと思うのですが、そこのシェフと会えるように手配して頂けないかしら。」

レオン王子は、ぽかんと口を開けて「…ああ、わかったよ…。」と戸惑いながら答えたのでした。

おしまい。

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