9 🔥管理職を解き放つ『たたずまい思考』第8回講習:松本卓也『斜め論』と組織の剪定術 〜盆栽化を防ぐリーダーの視座〜
【導入】あなたは、「正しい管理」で組織を殺していないか
皆さん、こんにちは。第8回を始めます。
前回、私たちは「数字」を「物語」へと書き換えることで、現場に誇りを取り戻す方法を学びました。
しかし、ここで皆さんは一つの強烈なジレンマに直面しているはずです。
「物語や野生を大事にしたい。でも、現実には本社からの厳しいルールや、一分の隙も許されないコンプライアンスを守らせなければならない。この矛盾をどうすればいいのか?」
・・・・・
管理を強めれば、営業職員は「盆栽」のように萎縮し、自発性を失う。
逆に、自由を許せば組織は規律を失い、事故が起きる。
今日は、精神医学の知見である「斜め」という概念を使い、この二項対立を突破します。
「厳格であること」と「野生を活かすこと」を同時に成し遂げる、高度な剪定術を身につけてもらいます。
★(ここから先は今後、有料コーナーになる予定です。今は全文公開中です)
■解説動画
■スライド(全14ページ)
■音声ガイド【必聴】
【理論】垂直の規律、水平の対話、そして「斜め」の視座
精神科医の松本卓也氏が提唱する『斜め論』を、生保の組織に応用してみましょう。組織には二つの重力が働いています。
1. 垂直の規律:
本社の規程、法律、監査の目。これは「正しさ」ですが、これが強すぎると現場は窒息し、隠蔽が始まります。
2. 水平の対話:
拠点の仲の良さ、情緒的な繋がり。これは「居心地」ですが、これだけでは組織は「なあなあ」になり、甘えに流れます。
多くの管理職はこの「垂直」と「水平」の二択で迷っています。しかし、目指すべきはどちらでもない「斜めの視座」です。
斜めとは、垂直の厳しさを持ちながら、水平の優しさで相手に触れること。
「このコンプライアンスのルールは絶対に譲れない。しかし、それを守るために君が今どれほど苦労しているか、その葛藤は100%理解している」
この「斜めのたたずまい」こそが、相手のプライド(野生)を殺さずに、美しい形に整える唯一の方法です。
【核心】組織の根詰まりを解消する「剪定の技術」
庭師が盆栽を整えるとき、ただ枝を切るわけではありません。
全体の流れを読み、未来を阻む「死んだ枝」だけを引き算します。
リーダーが行うべき「組織の剪定」も同じです。
* 剪定すべきもの:
責任回避のための過剰な報告、形骸化したチェック、不安から生まれる余計な指示。
* 残すべきもの:
顧客への誠実な想い、失敗から得た教訓、メンバー独自の創意工夫。
あなたが斜めの視座に立ち、現場を窒息させている「余計な管理のノイズ」を剪定するとき、拠点という庭には再び光が差し込みます。
正直に言います。
私も以前、この「斜め」を意識しすぎて、どっちつかずの指示になり、現場を混乱させたことがあります。
「厳しすぎて垂直に刺さる自分」や「甘すぎて水平に流される自分」に気づき、その都度、角度を微調整し続ける。
その「揺らぎ」を隠さないことこそが、リーダーの誠実さです。
【ワーク】「斜めの言葉」を紡ぐ
ワークの時間です。今、拠点で起きている「ルールが守られず、停滞している問題」を一つ思い出してください。
1. 垂直の言葉:
「規程ですから守ってください」と、突き刺す言葉。
2. 水平の言葉:
「大変だよね、わかるよ」と、流される言葉。
3. 斜めの言葉:
規律の厳格さを保ちつつ、相手の苦悩を承認し、共に壁を越えようとする言葉。
* (例:「この手続きの不備は、会社として絶対に見逃せない。でも、君がお客様のために急いでいた背景もわかっている。次はどうすれば、その想いを殺さずにルールを守れるか、一緒に考えよう」)
(個別ワーク 10分)
いいですか。
今は、歪な「斜め」でいい。
完璧を求めず、まずは一つの対話で「角度」を意識してみてください。その1ミリの変化が、相手の心を動かします。
【結び】リーダーは「名園の守り手」である

最後に、一つ覚えておいてください。
あなたが「斜め」で関わり始めると、最初は周りから「最近、丸くなった(甘くなった)んじゃないか?」という違和感を持たれるかもしれません。
それは、失敗ではありません。
組織の重力が、あなたを起点に変容し始めたサインです。
外野のノイズに負けて、また安易な「垂直(厳罰)」や「水平(放置)」に逃げないでください。
あなたが「斜めのたたずまい」を持ち続けることで、拠点は初めて「規律」と「野生」が同居する名園になります。
明日、誰かを指導するとき、自分に問いかけてください。
「私は今、上から突き刺しているか? 横に流されているか? それとも斜めに架橋しているか?」
その問いが、あなたの管理を「義務」から「芸術」へと高めます。
本日の講習は以上です。ありがとうございました。
