浮き輪を追うな、40代
夏休みの帰省で、甥っ子たちと海へ。
その日は風が強め。
でもまあ、海ですからね。
多少の風も「夏っぽいわね」で済ませておりました。
甥っ子は浮き輪に乗ってご機嫌。
ところが気づけば、
風に押されて遊泳エリアのラインぎりぎり。
「あら……ちょっと待って」
このまま浮き輪ごと流されたらまずいと思い、
すぐに甥っ子を降ろしました。
その瞬間でした。
浮き輪だけが、
スーーーーーーッ。
速い。
さっきまで「夏の楽しいアイテム」だったものが、
突然、単独で沖を目指し始めた。
お前、そんな機動力あったのね。
あっという間にラインを越えていく浮き輪。
あのまま甥っ子が乗っていたら……
そう考えたら、一気にゾッとしました。
幸い、浮き輪は防波堤のあたりに引っかかり、
浅瀬のほうへ戻ってきたのですが、
ここで私の中に、
「あれ、取りに行けるんじゃない?」
という、いちばん信用してはいけない40代の判断が芽生えます。
気持ちはもう浮き輪へ。
すると遠くのライフセーバーさんが、
こちらに向かって、
🙅♀️
大きなバツ。
「あ、ダメなのね」
分かりやすい。
40年以上生きておりますと、
人からあんなに大きなバツをもらう機会も、なかなかありません。
浮き輪を取りに行きたい私。
全力で止めるライフセーバー。
そして何も知らず、
自由を満喫する浮き輪。
一番浮かれていたのは浮き輪でした。
でも、本当に行かなくてよかった。
目の前の物が流されると、
「ちょっとそこまで」と思ってしまうけれど、
海の“ちょっとそこまで”は信用してはいけない。
そして何より、
ちゃんと見てくれている人がいて本当によかった。
あの日の海で一番ありがたかったもの。
青い空でもなく、
夏の思い出でもなく、
遠くから私に向けられた、
ライフセーバーさんの「🙅♀️」。
40代の夏。
浮き輪は追わない。
バツを出されたら、素直に戻る。
大人になるって、たぶんこういうことですの。
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