読書感想文 蒼穹の昴1~4
ネタバレ、あらすじありの読書感想文です。
タイトル 蒼穹の昴1,2,3,4
作者 浅田次郎
出版社 講談社文庫
あらすじ
清王朝の最盛期を創出した偉大なる皇帝、乾隆帝は、宣教師であり画家であるジョゼッペ・カスチリョーネに龍玉という巨大なダイヤを見せた。
天下を治める者が持つ手にするという龍玉は将来誰の手に渡るのか……
乾隆帝の後の皇帝は、凡庸、あるいは愚かであった。
先々代が西太后にすべてを任せてから、政治は荒れていた。
幼くして即位した、光緒帝は西太后に言われるままだ。
賢い帝だが、西太后を母として敬い、反抗しない。
西太后は、光緒帝が心配なあまり垂簾聴政をやめることができない。
奸臣の側近栄禄と宦官李蓮英は、西太后の権力を利用していた。
貧しい糞拾いの少年春児と梁家の息子文秀は身分が違うが、義兄弟の契りを交わしていた。占い師の白太太は春児は将来天下の財宝を手にし、文秀は帝の傍にあがると予言する。
文秀と春児は別々の道を歩むことになる。
文秀は進士に合格し、順桂、王逸と共に、光緒帝の親政を支える存在になっていた。
一方、春児は自らの手で去勢し、宦官となって西太后のお気に入りとなっていた。
光緒帝の変法維新の政治が始まるが、順桂が西太后を暗殺しようとしたことからひずみが生じる。
公羊学者の康有為に傾倒する光緒帝は改革を急ぎ、周りはそれについていけない。
そして、西太后から出される命令と光緒帝から出される命令の矛盾に政治は混迷し、双頭の龍が違う方向を向いて断末魔を上げていると記者に揶揄される状態だ。
春児の妹玲玲を保護して文秀は手元で働かせていた。そこで出会った譚嗣同は玲玲にプロポーズし、時が来れば結婚するというが、政治情勢がそれを許さない。譚嗣同は袁世凱にクーデターへの参加を求め、袁世凱が栄禄へ密告したことから、クーデターは失敗し、光緒帝は囚われ、譚嗣同は処刑され、文秀は追われる。
だが、文秀を助けたのは、日本人記者、岡とアメリカ人ジャーナリストトム、そして謎の美女ミセスチャンだった。
文秀は無事日本へ亡命できるのか? そして玲玲は? 春児は?
清王朝はどうなってしまうのか?
感想
昔読んだ覚えはあるのですが、内容がまるで思い出せない。
でも、宝塚歌劇 雪組公演の原作ということで再読しました。
いやはや、壮大な物語です。
浅田次郎さんは、清朝の歴史小説をシリーズで書かれていまして、蒼穹の昴は、壮大な物語の第一部なんですよね。
第二部珍妃の井戸 第三部中原の虹 第四部マチュリアン・リポート
第五部天子蒙塵 第六部兵諌
と続いていまして、この時代をかなり調べておられるようです。
NHKの「中国王朝 英雄たちの伝説」に出演されて話しておられるのを見ましたが、新たな資料を調べながら、ラストエンペラー溥儀の妻、婉容と文綉のことも話しておられました。浅田さんのライフワークかもしれません。
物語はすごく面白いのですが、読みにくい。
まず、漢字が難しい。
そして、漢字についているふり仮名が難しい。
文秀がウェンシウ 春児がチュンルなど日本人が漢字を見て想像する読みとは違うわけです。
おまけに、同じ人の呼び名が色々変わる。
李将軍が少筌だったり、西太后が老仏爺だったり、えっとこの人誰だっけ?って思いながらページを戻ったりするので、疲れる。
でも、読む価値ありの作品です。
国とは、民族とは、宗教とは、争いとは、戦争とは、支配とは。
色々考えさせられます。
西太后は単なる悪女として描かれてはいません。むしろ、女として、母として、愛情深い女性であるように描かれています。
乾隆帝の幻を見る西太后は、政治家として真剣に政治に関わっていたように思えます。本当なら清朝はもっと早く滅んでいたかもしれないのを、西太后がいたから保たれたという感じでしょうか。
でも、光緒帝も利口で母親思いの人物に描かれていて、決して親不孝なクーデターを起こそうとしていたわけではない感じです。
ただ、周りの奸臣や、強い思想を持つ人間たちに翻弄されて、西太后も光緒帝も自らの意思とは違った方向へと流されてしまったのかもしれません。
そして、イエホナラの女であるということも西太后の宿命。イエホナラでなければ、順桂に狙われることもなかった。
人が自分と同じ民族に執着するという精神は、会津人である岡の想いなどにも共通点があります。同郷や同じ民族を愛する思いは、美しく思えます。
でも、転じれば違う民族、違う地域を疎外しようとすることにつながるのでは。そういう人間の意識が争いを生むのでは。
清国にむらがる、英国、フランス、ロシア、日本。清国を守るためには、なにが正しい政治でなにが間違った政治なのか。
それぞれに、欲望と思いがある。
民に尽くすという考えを持った人間が政治をしていれば、世は乱れないように思うけれど、なぜか良心や覚悟を持つ者の方が命を落とす世の不条理。
歴史上の人物と、架空の人物が入り混じった歴史小説は、ついつい架空の人物が存在するように思えてしまって、勘違いしそうになります。
皇帝が君臨するこの清国が共産主義の国になるなんてこの物語を読んでいると思いもできませんが、なんとか生き延びた王逸(架空の人物ね)が、毛沢東という名の子供の家庭教師になるなんて面白いエピソードにはクスっとしてしまいました。
さて、この壮大な物語を2時間半にまとめるなんて、一体どのようにするのか????
原田先生のお手並み拝見というところです。
キャストを見ていると恐らく触れられることはないでしょうが、乾隆帝の時代、ジョゼッペ・カスチョリーネやヴィヴァルディのお話が途中挟まれるのですが、これはこれでなかなか興味深いお話で面白かったですね。
本日無事、初日の幕が上がりました。
マイ初日まであとわずか。
観劇を楽しみにしています。
一度目の舞台感想はこちら
舞台感想 宝塚歌劇 雪組公演 蒼穹の昴|おとぼけ男爵|note

