読書感想文 うらんぼんの夜
まだ読んでない方に書店の推薦コメント風にお勧めするなら
「地蔵信仰の残る閉鎖的な村の女子高生奈緒は空き家事業で引っ越してきた都会の女子高生亜矢子と仲良くなる。亜矢子は禁じられていた地蔵参りをする。その結果村の老人達がとった異常な行動の意味は? 地蔵参りの結果村では何が起こったのか? 背筋がヒヤリとするゆるめのホラー」
完全ネタバレ、あらすじありの読書感想文です。
タイトル うらんぼんの夜
作者 川瀬七緒
出版社 朝日新聞出版
あらすじ
戦争がはじまったころ閉鎖的な村の十六歳の娘キミ子は地蔵に願掛けをする。願いと災いは背中合わせと言われる地蔵参り、キミ子は決行するが、その結果村では……
地蔵信仰の残る閉鎖的な村の農家の娘奈緒は、学校に通う意外は農家の手伝いをする女子高生だ。成績はトップクラスで優秀だが、今だ男尊女卑の考えのはびこる村では、女に学問は不要と考える人も多い。曾祖母、祖母、両親と兄で暮らす奈緒は、嫌々ながら曾祖母の介護もする良い子で、家族からは愛されている。
村の空き家事業で、東京から近くの家に4人家族が越してきた。奈緒と同い年の亜矢子と知り合いになった奈緒は、村のことを知りたいと言う亜矢子に色々と教え、二人は仲良くなる。だが、よそ者を嫌う村人は、何かと亜矢子の一家を疎外しようとする。そんな、村人から亜矢子を庇う奈緒。だが、村の老婆達は、よそ者を見張るようなそぶりを見せ、老婆たちのボスは寝たきりの奈緒の曾祖母だった。
「よそ者は地蔵参りをしてはいけない」ことを知らずに亜矢子は地蔵にお供えをしてお参りをする。それを聞いた老婆達は顔色を変える。
亜矢子の家の周りに猪用の電気柵がとりつけられたり、奈緒と亜矢子が認知症の老人に襲われたり、亜矢子の家のガラスを認知症の老人が割ったり、どこか普通でない出来事が次々起こる。
奈緒は亜矢子の家の中に、逆さづりの女の姿を見た気がした。
そして、村の駐在さんが水死体で見つかった。
駐在さんは事故で亡くなったと思っていた奈緒だが、老婆達の会話を密かに聞いて真相を知った奈緒は、亜矢子に家へと向かう。
亜矢子の敷地に入ろうとする村の老人たちの手には鍬やスコップが握られていた。
村の老人たちがした事とは? 亜矢子が地蔵に願った事とは?
逆さ吊の女とは?
奈緒と亜矢子はどうなるのか? キミ子の正体とは?
感想
とにかく奈緒がいい子で、こんな娘が欲しい。
そりゃ、家族から愛されるわ。
過去のキミ子の話と、現代の奈緒の話が、交互に語られて終盤へと収束していく手法の作品。
ゆるめのホラーなので、閉鎖的なムラ社会のいやらしさとか、老婆たちの偏った考え方とか、虫、蛇など気持ちの悪い生き物とか、横溝正史的気味悪さが、良い子の奈緒の周りに蠢いている。それでいて奈緒がそれを生活の一部として受け入れているのがどこか爽やかなのだ。
何が起こるのか? 何が起こるのか? と怖い事が起こりそうな予感をさせながら進んで行く。が、終盤まで意外と本当に怖い事件は起こらない。
終盤、畳みかけるように地蔵参りの本当の意味や、過去の人キミ子と現代の繋がりとか、亜矢子の正体とかが暴かれていく。逆さ吊の女の正体だけはやはり……
だが、あまりスッキリしないのですよ。
閉鎖的なムラ社会が嫌い出て行こうと考えていたはずの奈緒が、むしろもっと閉鎖的なムラにしようと考えていたり、なぜか亜矢子と心のつながりを強く持っていたり、結局駐在さんのことも、亜矢子の母親のこともムラの中で、奈緒の心のなかでずっと隠されていくことを容認していたりする終わり方は、まあ、そうだと言われればそうなのだけど、なんだかなあって感じもするのです。
ただ、この作品でも「最低な親」が出てきます。
最近読む本、読む本、「ダメな親」がでてくるのには、些か食傷気味ですなあ。
