読書感想文 夏の騎士
ネタバレ、あらすじありの読書感想文です。
タイトル 夏の騎士
作者 百田尚樹
出版社 新潮社
あらすじ
勇気 それは人生を切り拓く剣だ。
小六のヒロはケンカは弱くて勉強もできない臆病な少年だ。同じく勉強がダメで家が貧しい陽介と医者の息子で親の期待がプレッシャーとなって吃音症になってしまった健太とは仲が良い。三人は山に秘密基地を持っており、そこでいつも遊んでいる。
ヒロはアーサー王伝説を読んで騎士に憧れ、三人で円卓の騎士になることにした。騎士が忠誠を尽くすレディには、クラス一の美少女有村さんと決めた。クラス一の優等生大橋は有村さんに気があるようで、いつもヒロたちを見下している。ヒロたちが円卓の騎士を名乗り、有村さんをレディとすると宣言すると、大橋はじめクラスの皆は三人を騎士団と呼んでバカにした。
クラスの女子壬生は悪口ばかり言うので、皆から嫌われている。ヒロも苦手な女子だが、万引き犯に殴られそうになっているヒロを助けてくれた。
学校の文化祭の出し物は眠りの森の美女のミュージカル。主役のオーロラ姫は有村さんだと思われていたが、女子が示し合わせて壬生さんに恥をかかせようとして投票し、壬生さんに決まる。相手役のフィリップ王子にヒロは立候補し、壬生さんと踊ることになる。
振り付け通り上手く踊る壬生さんにひっぱられて頑張るヒロは、壬生さんのことが徐々に好きになっていく。本当は成績の良い壬生さんに騎士団の三人は勉強を教わり、模試で良い成績を上げた。
ヒロたちの住む町では、小学生女子の殺人事件が発生し、未解決だった。騎士団結成時は三人で解決して見せると息巻いていた騎士団だが、犯人候補はどれも思い違いだったようだ。
だが、二人目の殺人事件の現場に落ちていた犯人のボタンを拾ってしまった事から、三人と壬生さんは犯人から狙われた……
少年と少女のかかわりと成長をえがいた、爽やかな物語である。
感想
勇気 それは人生を切り拓く剣だ。
宝塚好きのおばちゃんから見れば、アーサー王伝説とか聖剣エクスカリバーなんて言葉が大好きすぎて、最初からにやけている。本編とはさほど関係ないけれど。
臆病で喧嘩が弱くて勉強もできない。でも、お互いを信頼できる友人がいる。ヒロと友人たちのひと夏の爽やかな物語で、一気に読んでしまえる。
テーマとなっているのは、勇気。
臆病なヒロが、友人たちに護られ、友人たちを護ろうとする中で勇気をだして行動することを覚え、それが31年後の今のヒロを支えている。
一つ一つの勇気は小さいものだけれど、小さな勇気を出すことでだんだんと大きな勇気につながっていく。それが、彼らを成長させる。
少年たちが持っている秘密基地は、男の子の憧れの様な場所だ。実際にあれば、危険だと言ってしまいそうだ。でも、女の子でも子供の頃は何かそんな場所が欲しかったなあと遠い記憶を辿ってみる。
普段は男の様でおとこおんななどと言われる壬生さんが、お姫様の衣装を着て突然美しく変貌するのは王道少女漫画のよう。おばちゃん、こうゆうの好きよ。
優等生に馬鹿にされて模試を受けると息巻いても、全く勉強に手をつけられないダメさ加減がかわいい。
いつ勉強を始めるのかなと思っているとクイズ形式で勉強をはじめ、なんだかドラゴン桜のようではないか。
そして、精神を患った母のせいで苦労の多い壬生。恐ろしく頭の良い壬生が突然女ヒーローのように変貌する。本当はレディにすべきだった壬生の存在。壬生の成長と将来の姿も物語のカギだ。
そして卑劣な殺人犯が、日常に紛れ込んでいる恐ろしさ。
少年と少女の成長と、31年後の彼らの平和な大人の生活が読み進めやすい文章で描かれていて、爽やかな読後感を持った。
小さな勇気を持つ大切さを、改めて感じた。
