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読書感想文 スモールワールズ

まだ読んでない方に書店の推薦コメント風にお勧めするなら
「一見どこにでもありそうな日常。でも、それぞれのドラマは深い。六篇の短編集には、ままならない人生が描かれている。書き方も、さまざまで変化に富んだ短編集。個人的には”魔王の帰還”と”愛を適量”が好きでした」

ネタバレ、あらすじありの読書感想文です。

タイトル スモールワールズ
作者   一穂ミチ
出版社  講談社

あらすじ

ネオンテトラ
モデルの美和は、子供が出来ない。夫の貴史は良い夫を演じているが浮気をしている。子供部屋にする予定の部屋にはネオンテトラの水槽を置いている。ある日中学生の笙に出会う。姪の有紗と同級生だと言う笙と時々コンビニで会うのが楽しくなる美和。
だが、笙と有紗は交際しており、時々内緒で美和の家を使っていた。
美和の考えた企みとは……

魔王の帰還
名門校の野球部所属だった鉄二は、ボコられている同級生を助けて野球部を追われた。菜々子は母の再婚相手のいたずらから祖母の家に逃げてきた。転校生の二人はクラスから浮いていたが、実家に出戻ってきた鉄二の姉真央と三人で金魚すくい大会に出ることになる。
真央は体が大きく力が強い女性で魔王と呼ばれていた。物事の道理と筋を通す真央。出戻った本当の理由は……

ピクニック
瑛里子は娘の未希を産み、母の希和子に手伝ってもらいながら育てた。単身赴任の夫裕之の所に瑛里子が行った留守の間に未希は亡くなった。
虐待を疑われ希和子は警察に事情を聞かれ、不起訴となった。瑛里子には赤ちゃんの頃亡くなった真希という妹がおり、希和子はそれを隠していた。そして瑛里子は未希の妹真実を産んだ。皆は大喜びでピクニックに行くが。
真希はあの世から希和子と真実の様子を、じっと見ている……

花うた
殺人の加害者秋生、被害者の妹深雪は文通した。最初は秋生を憎んでいる深雪が徐々に秋生によりそっていった。刑務所内の事件で秋生は記憶に障害をもってしまう。出所後二人は結婚し、病に臥せっていた深雪は秋生の書く物語を読むのだった。その内容とは……

愛を適量
妻と離婚し今は五十代となった慎悟はただ給料の為に教師を続けていた。そんな慎悟の元に、十五年会わなかった娘が転がり込んでくる。トランスジェンダーの娘は男性になる手術をすると言うのだが。娘との関りで生活態度のかわる慎悟は、娘の手術代をだしてやろうと考えるが、娘は勝手に慎悟のお金を持ち逃げしていた。

式日
後輩の父親のお葬式には誰も出席する人がいない。「先輩、来てくんない?」という言葉で出席した。
後輩と父親は良い関係ではなかった。父親は自殺していた。それでも、ちゃんとお葬式をあげてあげた後輩。
火葬の間に街をぶらつく二人はペットショップでネオンテトラを見つける。
変えられたかもしれない過去、変えられなかったかもしれない未来を思い、後輩は飽きもせず胸を痛めるだろう。

感想 

日常に生きる平凡な人たちの中に、ドラマがある。
そんな印象の短編集。
「魔王の帰還」と「愛を適量」の読後感が良くて私はこの二編が好みでした。

ネオンテトラは美和の心の寒々しさに震える。法にふれる犯罪をしているわけではないのに、近づきたくない恐ろしさだ。

ピクニックはある意味ホラー。悪意なき犯罪は事故なのだ。だが、その事故を引き起こしているのはいったい……

花うたは、どこかアルジャーノンに花束を思い出してしまった。話は全然違いますが……

式日、どこか浮遊感のある書き方で、内容より表現の仕方に感心してしまった。

作家の感性というのはすごいものだなとひしひし感じます。
普通の日常も作家の目を通してみると、どすんとくる表現になる。
ああ、まだまだだなあ……

それぞれ違うお話だけど、全体を通して人生ままならないなあと思う。
罪を犯しても、誰かを傷つけても、誰かを救おうとしても、とにかく生きなきゃならないんだなあって、切ない気持ちになるのですよ。

でも、世の中色んな人が、色んな悩みを抱えて、色々怒りながら、色々許して、色々愛して生きているんだと思えば、自分の抱える悩みも別に特別な物じゃないって安心できるかもしれない。
って、何書いてるんだ? ま、そんな感じの読後感です。


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