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読書感想文 うつくしが丘の不幸の家

ネタバレ、あらすじ、ありの読書感想文です。

タイトル  うつくしが丘の不幸の家
作者    町田そのこ
出版社   東京創元社

うつくしが丘という新興住宅地に立つ、三階建ての家。
何度も持ち主が変わっているから、「不幸の家」と呼ぶ人もいる。
そんな家の、5組の住人のお話です。

以下あらすじになりますので、知りたくない場合はご注意ください。

話は最後の持ち主、美保理から始まります。
夫と築25年の三階建ての家を改装し、美容室を開く美保理。家の庭には大きなビワの木があります。ビワの木は不吉だとか、「不幸の家」と呼ばれているとか聞かされた美保理は憂鬱です。オープンを間近に控えているのに夫は実家に手伝いに行ってしまいます。義父が夫を便利に使うのが、美保理には不満です。でも、義父も店のことを考えていたことを知り、根っから悪い人ではないことがわかります。美保理は希望を持ってお店を始めることになります。枇杷は素敵な木だと美保理を慰めるお隣の信子さんが、この物語全体にかかわる人物で、なかなか良い事を言います。
「不幸の家」と告げ口した近所の人の事を「舌の教育を受けていない方なのよね」と。手間と良い食材を使った料理を味わって、その料理にどんなドラマがあったかをわからずに、わかりやすくて濃い味のものが良いと思っている可哀そうな人だと切り捨てます。そして、「幸せは人からもらったり、人に汚されたりするものじゃなく、自分で作り上げるもの。壊すのも、汚すのも自分」とも言います。美保理は「人から貰う幸せもある」と信子に伝えたい気持ちになっていましたが、信子は息子幸太郎と同居する為、引っ越した後でした。 ”おわりの家”

美保理の前の住人は、亭主関白な夫に従う多賀子でした。高校生の息子が女性を妊娠させてしまいます。夫は二人を結婚させ、息子は予定通り大学に進学させると言います。同居して嫁と仲良く赤ちゃんを育てろと、多賀子は夫に命じられます。もやもやする多賀子は、家出していた娘小春と一緒に息子の相手に会います。相手の娘は自立心のあるしっかりした子で、親になる覚悟のない息子と別れて一人で育てると言うのです。息子を甘やかして育てた自分を恥じる多賀子。しかし、息子は高校だけは卒業して二人で子育てする決心をします。赤ちゃんも生まれ、若い二人の住む場所も決まりました。多賀子と夫は、子離れする時期に気づき家を手放すことにします。「舌の教育を受けていない方」は、一家離散で家を手放したのだと思っているのですが……
まあ、亭主も息子もダメ男です。周りの女性たちがしっかりしていて、よかったよかった。丸く収まって良かったのだけど、この亭主、浮気もしてたのに、多賀子があっさり許したのがとても意外でした。ふところの大きな、奥さんですよ、まったく。
多賀子夫婦が無理して買った家。娘も息子も自分たちの理想通りに育つわけではなかった。思いのほか早く成長し、離れて行ってしまいます。夫は言います。「本来のありかたを見失う家なんて、自分たちにあわないんだ」子供たちの為を思って買った家が、家族に距離を作ってしまったと。二人の子育てはどこか、ままごとの様だったのかもしれません。 ”ままごとの家”
話の中で、もやもやした多賀子が眠っていたのが、「おんなのおはかじごくいき」という落書きが書かれた三階の収納の中だったのですが……その前の持ち主の話へ。

高校時代の同級生紫と叶枝。夫に追い出された紫、男に騙された叶枝は行くところがありません。面倒見の良い二人の先輩、蝶子が、一年間だけ家を貸してくれることになりました。紫と叶枝、紫の娘響子は三人で住むことになります。紫の元夫も義父も横暴で、嫁ぎ先では義母だけが紫の理解者だったのです。義母が亡くなった時義父があの世でも自分の世話をできるように棺に割烹着を入れろと言ったことから、「女はお墓に入っても地獄に行くしかない」と紫が言ったことを響子は覚えていたのです。叶枝と遊んでいた響子は、三階の収納スペースに「おんなのおはかじごくいき」と落書きしたのでした。元夫は身勝手な理由で、紫と響子をつれに来ますが、紫は義母のアドバイスで元夫の暴力の証拠を残していて関係を断ち切ることができました。紫親子は、新たな生活をすることがきまり、叶枝には響子の先生と新たな恋の気配が。二人は、蝶子先輩の家から旅立ちました。
またしてもダメ男が女の人生をひっかきまわす。女の友情の暖かさ、子供の健気さ、それに比べて横暴な元夫と義父。立場の弱い人たちの逆襲が爽快です。でも、女を作っておきながら嫁を追い出す元夫って、もっと痛い目にあえばよかったのに……幸せの蝶へと皆が成長しますように。”さなぎの家”

蝶子が後輩に貸す前の家。そこは蝶子と夫忠清の住む家だった。
友人たちが羨ましがる妻蝶子と結婚した忠清は幸せだったのです。自分が、男性不妊であることを知るまでは。不妊治療による蝶子の肉体的苦痛と金銭的な苦労。治療に根を上げた忠清は蝶子に離婚届を渡します。
隣の家の信子は、人とのつながりは一本の糸ではなく、色んな縁が交差して絡み合って色んな模様になるといって、蝶子と離れた忠清に組みひもを見せます。忠清はもう一度蝶子と話し合い、もう一年だけ実家で不妊治療をすることにして、家を空け、蝶子はその空いた家に、紫と叶枝を住まわせたのでした。子供が欲しいと言う忠清の夢に対して信子は言います。
「夢ってとても乱暴な言葉だと思うの」
一種の暴力、言い換えれば我儘。夢なんて、振りかざしてはいけないと言います。それは、子供が生めない信子が、夫に他の女性と関係強いてその女性に子供を産んでもらい、引き取ったという過去があったからでした。自分の取った行動が異常だったと、信子は自分自身を赦せないままでいました。そのせいで、息子幸太郎とは、どこかぎくしゃくした関係が続いていました。だが、忠清に見せた組紐を手に、信子ももう一度息子と新しい模様の糸を紡ぐと言います。
私は、子供に執着する人の気持ちには寄り添えませんが、夢に縛られることは本末転倒なのだと感じました。”夢喰いの家”

最初の家の持ち主は、嘘つきで働くことが嫌いで金使いの荒いトラック運転手の建斗でした。離婚した健斗と付き合うようになった真尋はこの家に来て健斗の息子の惣一と三人で暮らすようになります。ある日、真尋に父が死んだとの知らせが入いります。真尋を捨てて新しい家庭を持った父。会いたい訳でも、謝って欲しいわけでもないが、なぜか、真尋は惣一を連れて父のお参りに行き、父の妻と腹違いの妹に会います。
真尋は綺麗な家に住めば幸せが来ると思い込んでいたのです。しかし、真尋を捨てて新しい家庭を持った父の家は、汚い家でした。それでも、幸せな生活を営んでいたのです。真尋に惣一は言います。家なんて入れ物だよと。
父に捨てられたと思っていた真尋は、最後に父の愛を知ることができます。
結局、無責任な健斗は借金を残して姿を消しました。惣一は実母の元に引き取られることになり、惣一の親友がお別れにくれた枇杷の苗木を、惣一と真尋は一緒に庭に植えたのでした。

最後は、大人になった惣一が、美保理の美容室に立ち寄り、自分が枇杷の木を植えたと言い、美保理の夫と笑いあって終わります。

すべての物語が一つの家を舞台に、繋がりました。

家が人を幸せにしてくれるわけではない。
「家」という、人生での一番大きな買い物を皮肉ったような作品でした。
幸せは、自分自身で作り出し、味わうもの。
綺麗な家に住む。夢を叶える。自分のために、子供のために。
一見、良い事、素晴らしい事のように思えるけれど、「家を持つことや理想の家族を持つこと」という形に囚われたり、縛られたりすれば、それは幸せとはいえないんじゃないかな……
そう感じた作品でした。


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