読書感想文 声の在りか
ネタバレ、あらすじありの読書感想文です。
タイトル 声の在りか
作者 寺地はるな
出版社 角川書店
あらすじ
仕事をしながら小学生の一人息子を育てる希和は、田舎町で夫と三人暮らしだ。おしゃれで快適な生活をしているがごとく、お菓子やシロップなどを手作りしてSNSにアップし、いいねがつくのをささやかな楽しみにしている。
言うことをきかない息子、家事を手伝わない夫、保護者会に集まる父兄との確執、日々の生活には様々なストレスにさらされている。
近くの開業医は希和の息子もずっとお世話になっている。大先生が引退して長男が営む医院の二階に次男要が民間の学童を始めた。希和は職場の首切りにあったことで、そこで働き始める。
おおらかで子供第一の要と共に働く内、自分の生き方に違和感を持つ希和。周りの空気をよみながら、波風立てず、自分の意見を口にせず生きてきた。だが、自分の思い込みだったり、言葉にしなくては伝わらないことがあるのだと気付く。
ため込まずに言葉にして相手に伝える。そうすることで、希和は夫との関係も改善でき、息子の成長を感じることもできた。
感想
希和の生活する街での、子供たちとの様々な出来事が、「いちご」「メロンソーダ」「マーブルチョコレート」「ウエハース」「トマトとりんご」「薄荷」という食べ物由来のタイトルの6編の短編で構成されている。
ああ、あるある。こんな、気持ちわかるわかる。と共感せずにはいられない人の心が巧みに描かれていて、なんだかエッセイのようだ。
私は子育てをしていないので、子供を育てるということがどれほどエネルギーを必要とするものかは、想像でしか語れない。リアルに描かれていて、お母さんたちは大変だなあ。そして、お母さん同士の関係も大変だなあ。と感じた。
小さくて弱くて知識も少ない子供という存在をどうやって、守り導くのか?守りたいがゆえの束縛で怯えさせてしまったり、守りたいがゆえに異質なものを阻害しようとしたりしてしまう大人たち。
悪意を自覚しない大人の差別感情や、一人一人なら友好的に対応できても、集団になると何かを基準にあちら側とこちら側に分かれてしまう父兄たちの理不尽さ。
いやはや、人間関係っていうのは難しいものだわ。
幸いというか、若干淋しいというか、リタイアして全く人と接する機会をなくしてしまった私は、対人でストレスにさらされることが無くなった。
昔は、お客さんのひどいクレームに下痢していたものだが、今は平和だなあと痛感する。
でも、夫がいなければ孤独死していても誰も見つけてくれないわ。と我に返ると、人と関わらない生活も少々不安になってくる。
あちら立てば、こちら立たず。
人間って本当に我儘なものだわ。
