見出し画像

読書感想文 ほんものの魔法使

宝塚歌劇バウホール公演 ほんものの魔法使の初日映像が、スカステで放送されましたね。
いやー、歌って踊れる魔法使あーさの美しい事といったら……
原作本にも、あーさの帯が付けられていることこそが、魔法のようです。

あらすじ、ネタバレありの読書感想です。

タイトル ほんものの魔法使
作者   ポール・ギャリコ 矢川澄子訳
出版社  創元推理文庫

この作家さんの名前どっかで聞いたよな~と思っていたら、「ハリスおばさん」シリーズの作家さんだったのね~。
昔、結構好きで読んでいたシリーズです。それなら、期待できる!!

お話は魔術師……(といっても人間ですので、手品師です)ばかりが、住む町マジェイア。そこで行われる魔術師名匠ギルドへの加入試験を受けにきた「ただのアダム」とアダムの犬モプシーは、マジェイアの市長でギルドの統領「偉大なるロベール」の娘ジェインと出会います。
ジェインと共に、魔術師名匠ギルドの試験を受ける二人と一匹ですが……
アダムは、実は本物の魔法使でした。無垢な心で自分の力を、皆の為に使いたいと思って、ギルドの試験を受ける事にしたのです。しかし、この街の手品師にとって本物の魔法使いは敵!自分たちの商売が成り立たなくなる脅威の存在なのです。本物の魔術は重犯罪で、死刑とされています。バレれば大スキャンダル!市長ロベールに敵対する「全能マルヴォリオ」は、このスキャンダルを使って、ロベールの地位を奪おうと考えます。
アダムに助けられた手品師ニニアンは、マルヴォリオの脅しに屈し、我が身を守るためにアダムを窮地に追い込みます。
最終試験の日、マルヴォリオは市民を扇動し、本物の魔法使いであるアダムを捕まえようとしますが、アダムは本物の金貨を降らせます。金貨を拾うのに夢中な市民たちが気づいた時に、アダムとモプシーは姿を消していました。

魔法とは、各自の持つ才能であり、全ての人は自分の頭に「魔法の箱」を持っている。自分で考え、学び、工夫することが魔法なのだと、作者は語っているように思います。
魔術の種あかしをねだるジェインにアダムは言います。この世の生命はすべて魔法だと。どんぐりが樫の木になり、豚が肉や手帳になり、鶏が卵を産み、草を食べた牛からミルクができる。それはすべて魔法だと。
「いたるところ、地の魔法、水の魔法、火の魔法、風の魔法だ」と。
そして、ジェイン自身の魔法を使うように言います。ジェインの頭は、魔法の箱で「できる」「やってみせる」の仕切りがあってその仕切りのカギを開ければ良いのだと言います。アダムの言葉に「あたしはできるし、やってみせる」とジェインは呟き、自信をもてるようになっていきます。
魔術師名匠ギルドは、古い考えを持つ集団を揶揄しているように思います。権威を振りかざす人間や、良識ある長老、権力闘争、変な決まり事の存在、大人の社会を風刺しているようです。各自「偉大なる」「全能」など通り名を持っているのも、肩書を風刺しているのでしょうね。
そして、人間の欲。自分の立場が悪くなりそうなときはアダムを排除しようとし、金貨をくれるならアダムにいて欲しいと願う市民たちのあさましさ。
そんな、人間の醜さをファンタジーの中で、さらりと見せるのが、海外物の児童文学の特徴の様にも感じます。

アダムがいなくなった後、手品師として成功したニニアンは、今の自分の地位も生活も投げ出してアダムを探しに行こうとします。アダムに赦してもらうための旅です。ジェインはそれについて行きたがりますが、ニニアンはアダムが残した杖から生えた白バラをジェインに守るように言って旅立ちます。皆の記憶からアダムがいなくならない様に、白バラを守れと言うのです。涙にくれていたジェインですが、アダムに会ったら「愛している」と伝えてくれるようにニニアンに託します。ジェインは、魔法の箱をすでに開けて使っているのです。目を閉じればいつでもアダムにもモプシーにも会える想像力を持った少女は、少し大人になったのでした。

アダムはニニアンを赦しているし、ジェインのことも愛しているのでしょう。アダムは今もどこかで生きていて、愛する友人たちを見守っていることだと思います。

いやあ、海外の児童文学って、なかなか深いと思うんですよ。
親にダメだと言われ続けたせいで自分のことをダメな女の子だと思っているジェインが、アダムによって徐々に自信を取り戻していく。
悪人ではないけれど、自分を守るための嘘をついたり嫉妬するニニアン。
人間の本質を鋭く嗅ぎ分け、指摘する犬、モプシー。
無垢で善良なアダム。様々な、人間の心を描いています。
50年以上前の作品なのに、ジェインの家には、ロボットをイメージさせる様々な機械があります。お金をかけて新しいものを取り入れている「偉大なるロベール」の家です。でも、夫人はとってもけちんぼ。
一方、モプシーが閉じ込められる倉庫には、過去の手品の道具や怪しげな人形が放置されています。触ってはいけないスイッチを押すと、その過去の手品の道具や人形が動き出して倉庫の番人を驚かせるんですね。
新しいものに飛びつき、簡単に捨て去ってしまう人間を皮肉っているようにも感じます。

魔法こそが、あたりまえの自然であり、人や動物が生きている事こそが魔法なのかもしれません。
魔法が使えたらなあ……を、楽して稼げたらなあ……に置き換えている内は、まだまだ人間力が足りないのだと、自分に戒める一冊となりました。

さて、舞台の方はどんな感じなんでしょうね?
初日映像で見る感じ、お衣装がかわいくて、宝塚らしいカラフルで賑やかな舞台になっているんじゃないかと想像しています。
30日の配信を楽しみに待っております。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集