読書感想文 ドキュメント
ネタバレ、あらすじありの読書感想文です。
タイトル ドキュメント
作者 湊かなえ
出版社 角川書店
ブロードキャストの続編です。湊かなえさんと思えない、爽やかな青春小説はブロードキャストの登場人物がそのままに生き生きと描かれています。
あらすじ
私立青海学院高校に入学した圭祐は中学時代将来を期待された陸上選手だったが事故で陸上を諦め正也に誘われ放送部に入った。共に競っていた良太は陸上部で頑張っている。放送部ではJコン出場の為テーマを考えている。前回参加した時も様々な経験をした圭祐と正也は、高校生らしいテーマを考えている。部員でアイデアを出し合い、決定したのは「放送部部員としての圭祐の目を通して駅伝大会に臨む陸上部を撮る」というテーマだった。
撮影には、放送部員が参加したマラソン大会の賞品ドローンを使うことになった。ドローンは卒業生用のDVDの為の画像撮影も兼ねていた。
そんな時、良太が手に火のついたタバコを持っている画像がたまたまドローンに撮影されてしまう。
画像を消去するのか?先生に知らせるのか?放送部員達は意見が分かれるが、結局画像は保存だけして誰にも知らせないことが決まる。
しかし、その画像は誰かの手によって先生に送信されていた。
陸上部の取材は禁止された。良太は駅伝大会に出られるのか?良太の陸上にかける思い、圭祐の陸上を諦めた思い、Jコンで認められたい思い、高校生たちの様々な思いが交錯し、時には誤解しぶつかり合う。
そして画像を送信したのは誰か? 良太は久米さんを疑っているが、久米さんは正也、圭祐が信頼する同級生だ。だが、深く知っているわけではない事にも気づく。久米さんに確かめると、久米さんの言葉から真犯人が浮かび上がり放送部員達は愕然とする……
感想
湊かなえさんの青春物語。イヤミスの女王などと言われる湊さんのさくひんとは思えない爽やかさで、作家さんというのは様々な目を持っておられるのだと感じる。でも、色々考えさせられる。
スポーツ選手の頑張りとその生い立ちを感動的な言葉で装飾するマスコミの姿勢。コンテストで優勝する作品を作ろうとするために高校生たちが戦略を練る姿。嘘ではない。だが、感動を生むための演出は本当の姿なのだろうか? コンテストで審査員受けする作品を作ろうと戦略を練ることは間違いではない。だが、「高校生らしさ」と「戦略を練るしたたかさ」にどこか白けてしまう。物事の本当の姿はどこにあるのだろう?そんな風に感じられて本筋とは違った部分で考えさせられた。
私たちは自分が見たいと願う虚像を見ているのかもしれないと思うのだ。
私は、オリンピックやパラリンピックの放送を見ていると、すぐに感動する。すぐに涙する。そこに、嘘はないと思うが演出はあるのだなと思う。
「ドキュメント」という題名からも、実話をどのように伝えるのかというテーマを感じることができる。だが、実話を日記の様に淡々と見せても退屈だろうから、演出があり、見せ方があり、撮り方があるのだろう。
そして視聴者は上手く編集された一つのドキュメントという創作物を目にし、感動する。
私などは、正に制作者の手のひらの上でコロコロと転がっている気がする。
でも、その裏にある本当の努力、地味な日々、涙、綺麗なだけではない心の葛藤、諍い、間違いなく存在しただろう美しくはない部分が確実にあることを意識して見るべきだと、感じさせられた。
