読書感想文 高瀬庄左衛門御留書
まだ読んでない方に書店の推薦コメント風にお勧めするなら
「群方を務める初老の高瀬庄左衛門は、襲われた若い侍立花弦之介を助ける。弦之介と知り合う内に親子の様な情を感じる高瀬。高瀬と弦之介は藩の強訴騒ぎの首謀者に疑われ危機に陥るが……詩的な文章で綴られる静けさと武士の潔さを味わえる秀作」
完全ネタバレ、あらすじありの読書感想文です。
タイトル 高瀬庄左衛門御留書
作者 砂原浩太朗
出版社 講談社
あらすじ
神山藩の群方を務める初老の高瀬庄左衛門は、役目を息子啓一郎にまかせ趣味の絵を描く日々を送っていた。が、啓一郎は事故で他界する。嫁の志穂を実家に帰すが、志穂は庄左衛門に絵を習いたいと通ってくる。
志穂の弟宗太郎に襲われた若侍立花弦之介を助けた庄左衛門は、弦之介と親しくなっていく。弦之介は目付立花監物の弟で上士、下士の庄左衛門とは身分が違うが、二人の間には親子のような情がわいていた。
庄左衛門と弦之介は、藩の強訴騒ぎの首謀者だと疑われる。事件に関わりのあった浪人は庄左衛門の若き日の道場仲間であったが、庄左衛門は友を裏切れない。お咎めを受けることになりそうな庄左衛門を救ったのは、立花監物であった。強訴騒ぎは、家老を陥れようとする側用人の陰謀だった。そして啓一郎の死は事故ではなくその陰謀が原因であった。その陰謀をあばくきっかけになったのは、志穂の書いた似顔絵であった。
志穂は舅の庄左衛門を慕っていたが、江戸で奥勤めをする身分の高い女性の側仕えとして江戸へと旅立った。
弦之介は庄左衛門の養子として高瀬家に入る事となった。
道場主の残した高価な絵の具「べろ藍」を贈られた庄左衛門は腕の怪我でもう絵は描けない。「べろ藍」の入った壺を志穂に残したいと考える庄左衛門であった。
感想
清々しい読後感の時代小説です。
詩的で美しい文章が読んでいて心地良いです。
優しく穏やかな庄左衛門の姿は、初老のご隠居といった風情ですが、若き日は道場で一、二を争う剣豪であったことがわかると、ぐっとイケオジ感が増して魅力的に見えます。
また立花弦之介は美貌で頭の切れる若侍で、剣はからきしで飄々としているところが中々面白いキャラです。
この二人の周りにいる、小物の余吾平や半次、志穂の弟たちなどは家族の様な温かさに包まれていますし、職場では現在のサラリーマンのような同僚や上司に囲まれているのも面白いです。
弦之介をふって、舅の庄左衛門に想いを残す志穂と庄左衛門の関係は、一瞬「両想いになったのか!」と思わされたのですが、違ったみたい。残念!
だって、だってですよ。「このままおそばにいたいのです」っていう嫁が庄左衛門の手に触れて、その手を庄左衛門が優しく包み込んで……立ち上がった庄左衛門がおだやかに嫁にうなづきかけると「窓へ手をかけ、ひといきに閉じた」ってねえ、窓を閉めた後に二人はどうしたの? 寄り添い、抱き合い、そのまま……って思いません? そういう解釈する私が変なの? でも、二人の間には何もなかったような感じなんですよね。
でも、とても清らかで、映像になりそうなお話ですね。NHKあたりの時代劇ドラマになるんじゃないかとふと思いました。
