見出し画像

読書感想文 神の悪手

まだ読んでない方に書店の推薦コメント風にお勧めするなら
「棋士啓一は崖っぷちにいた。天才宮内と対局する啓一に、先輩村尾は考え抜いた棋譜を見せる。だが、村尾が自分に勝てると考えていることにイラついた啓一は、村尾の手を振り払う。村尾は転倒して動かなくなった。啓一は村尾が考えた棋譜どおりの将棋をさしてアリバイを作ろうとするが……」

ネタバレ、あらすじありの読書感想文です。

タイトル 神の悪手
作者   芦沢 央
出版社  新潮社

将棋に関わりのある、5編の短編集。

あらすじ

弱いもの
かつて被災した経験のある北上八段は、避難所で将棋の指導対局を企画した。優勝者として北上と対局した少年は強かった。だが、明らかに少年が勝利するはずなのに、少年はミスを犯して対局を続けた。少年は北上の予想を覆すような手で対局時間を稼いでいく。少年はなぜそんなことをしているのか……?
神の悪手
啓一は平凡な棋士で昇段の見込みもない。明日、天才宮内冬馬と対戦する。とても下せるなどと思わない。そんな時、先輩棋士村尾に呼び出される。明日、啓一が宮内に勝って、村尾が啓一に勝たなければ村尾の未来はない。村尾は啓一が宮内に勝てるようにと考え抜いた棋譜を啓一に見せる。だが、啓一は村尾が自分に勝てると思い込んでいることに怒りを持って、村尾の手をはらいのけた。村尾はバランスを崩して倒れ、動かなくなった。
翌日の対戦に村尾は現れない。啓一はアリバイを作るために棋譜どおりに宮内を攻略していくが……
ミイラ
雑誌の詰将棋の検討を任されている常坂は、ある少年の投稿作に疑問を持つ。稚拙で無防備な投稿作が一般的なルールではないルールに乗っ取って作られていることに気づいた常坂。それは少年の特殊な生い立ちに理由があった。
盤上の糸
事故で視覚の失認になった亀海は棋士の祖父と石の宝石作家の祖母に育てられ、プロ棋士になった。今、向島は亀海と対戦中だ。
盤上には二人しかいない。深く深く考えた上で指すのに駒を置いた瞬間に気配が違うと感じる。恐怖と幻影に飲み込まれそうになる盤上。相手の玉が逃げていく。盤上に生き物がいる。
亀海には糸が見えた……懸命に糸を手繰る……
恩返し
駒師の兼春は、対局前検分で、師匠の駒と競った。国芳棋将が選んだのは兼春の駒で、師匠は「恩返しだな」と声をかけてくれた。だが、国芳棋将は急に師匠の駒に選び変えてしまった。ショックを受ける兼春。その原因を一人考えるが……「新しいうちから長く使い込んだ振りをする必要はない」という師匠の言葉と、ベテランであっても前に進もうとする国芳棋将の姿勢に共通する精神があった。使い込まれていない駒でまだまだ成長しようとするそんな精神を……

感想

NHKの将棋の番組を見ていた夫が、作家の芦沢さんが棋士に熱心に取材し、勉強して書いた本が「神の悪手」という本だと教えてくれた。
へえー、っと思って読んでみました。

やっぱりね、すごく勉強されているのでしょう。将棋の定石とか、定石からはずれるとか、そういう知識がある人にはすごく面白いのじゃないかと思いました。半面、私のように将棋に詳しくないと、この面白みは理解できません。まあ、そういうことなんだろうと、手が説明されている部分はほとんどスルーして読みました。

それでも、対局が一種の芸術を作り上げていくかのような印象は、職人とか、天才とか、そういった人間の芸術を作り上げる苦しみに似ていて、美しいお話を読んだ気にもなります。

表題作、「神の悪手」はミステリー要素があったので、もっと長編のミステリーで読みたかったなあと感じます。

将棋好きの方には結構おすすめなんじゃないかな?

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集