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待たせない支援へ。届け方を変えた一年と、新たな課題。


制度のはざまで、増え続ける支援の要請

 2025年度、おてらおやつクラブと直接つながり、支援を受けた生活困窮家庭は20,206世帯となりました(前年比121.9%)。連携する支援団体数は1,045団体(前年比111.6%)、賛同寺院数は2,371カ寺(前年比108.4%)。いずれも増加を続けていますが、伸び率は前年をやや下回っています。支援の輪は着実に広がりながらも、拡大のペースは意図的に抑制した一年でもありました。その背景については、次章以降でご説明します。

今年度も、家計負担の大きい夏と年末に大型支援を実施し、「夏のおすそわけ」「歳末たすけあい」それぞれで2,500世帯におすそわけをお届けしました。

 支援につながる家庭の経路として、今年度もしんぐるまざあず・ふぉーらむ、あしなが育英会など、子どもの貧困問題に取り組む団体のメールマガジンを通じた周知が重要な接点となりました。支援を必要としながらも、どこに相談すればよいか分からずに困っている家庭との接点づくりに、地道に工夫を重ねた一年でした。

支援を必要とする子どもたちのいる家庭とつながることは、依然として活動上の大きな課題です。賃上げによって非課税世帯の認定から外れたために他の支援制度の対象外となった家庭、地方部で身近に相談できる団体がない家庭からの声が増えています。収入が増えても、住民税の課税や各種手当の減額が重なれば、子どもたちの暮らしは改善しません。支援にあたって特別な条件を課さないおてらおやつクラブの仕組みは、こうした制度のはざまに置かれた家庭の受け皿となっています。

「認定NPO法人」として、全国の寺院、支援団体、自治体との連携を積み重ねながら、共助の仕組みは草の根で広がっています。

届くまでの時間が、支援の質を左右する

 では、どのような家庭に直接支援は届けられているのでしょうか。私たちがロジックモデルで策定したアウトカムの評価から見ていきます。

私たちは毎年、おすそわけを受け取った生活困窮家庭を対象に生活状況をお聞きする調査を行っています。2025年12月に実施した調査(有効回答数2,732、有効回答率93.9%)の結果から、この一年の活動の傾向を見ていきます。
まず、回答者の構成についてふれておく必要があります。今年度は予算上の制約から、新たな家庭へのアウトリーチを積極的には行いませんでした。その結果、初めておすそわけを受け取る「初回層」は回答者全体の14.1%にとどまり、複数回受け取っている「リピート層」が85.9%を占めました。前年の初回層44.2%と比較すると、構成比は大きく異なります。この点を念頭に置いた上で、結果をご覧ください。

表:おてらおやつクラブから受け取ったおすそわけの回数

前年の調査では、初回層のアウトカム評価が複数の指標で大幅に低下しました。支援を申し込んでから手元に届くまで、場合によっては100日を超える待機が生じていたことが主因と考えています。この反省を踏まえ、2025年度は初回層への配送を「スピード重視」で運用することを優先方針としました。配送システムのエリア制限を緩和し、遠方のお寺からでも迅速に発送できる仕組みを整えた結果、初回層の発送までの所要日数は平均41日(最大101日)から平均12日(最大51日)へ、約30日短縮されました。

表:初回層におすそわけが届くまでの所要日数と配送単価の年比較

アウトカム評価への効果は明確でした。初回層(N=384)の全成果指標でスコアが向上しています。

表:初回層のアウトカム評価の一覧(スコアは5段階評価のTOP1、単位:%)

支援が手元に届くまでの時間は、物資の量や内容と同じくらい、受け手の心理的な状態に影響を与えます。「困ったときにすぐに助けを求められる」という実感は、おすそわけが迅速に届いて初めて生まれるものだということを、この結果は示していると考えます。

一方、リピート層(N=2,348)は全指標で前年並みとなり、継続的な支援の質が安定して維持されていることが確認できました。

表:リピート層のアウトカム評価の一覧(スコアは5段階評価のTOP1、単位:%)

数値には表れにくい現実も、自由回答から浮かび上がています。賃上げによって非課税世帯の認定から外れ、他の食糧支援の申込資格を失った家庭。地方部で支援の手が届きにくく、登録しても何も変わらないだろうと半ばあきらめていた家庭。物価高騰で肉・魚や果物が食卓から消え、成長期の子どもたちに申し訳ないと感じながら日々を過ごす家庭。こうした声は、支援条件を課さないおてらおやつクラブのような仕組みへの需要が増していることを示しています。

スピード重視の運用は成果を上げた一方で、配送単価は860円から975円へ上昇しました。コストと支援の即時性はトレードオフの関係にあり、引き続きバランスを模索していきます。また、夏・冬の大型支援施策の期間中は発送が集中するため、初回層への迅速対応が難しくなる傾向も残っています。

地域の中で循環する支援、その理想と現実

おてらおやつクラブの活動の特徴の一つは、全国のお寺さまに支援活動を分散して担っていただく独自の配送管理システムにあります。各地域のお寺から、同じ地域の支援団体や家庭へおすそわけが届く——この「地域内循環」の仕組みが、配送費用の低減と地域内の共助体制の推進を同時に実現します。どの程度、同一エリア内でおすそわけの発送と受取が完結しているかを示す「循環率」は、私たちが活動の健全性を測る重要な指標の一つです。

今年度の循環率は、支援団体向けが全国平均86.9%(前年比▲5.5pt)、直接支援家庭向けが全国平均75.6%(前年比▲18.3pt)となりました。いずれも前年を下回っています。

表:支援団体における循環率(受取ベース)のエリア別一覧(単位:%)
表:直接支援家庭における循環率(受取ベース)のエリア別一覧(単位:%)

このスコア低下のおもな理由は、前章でご説明した通り、2025年度は初回層への配送を「スピード重視」で運用することを優先方針としたことにあります。支援要請から7日以内に発送できない場合、エリアの制限を超えて隣接エリアのお寺から配送する仕組みを新たに導入したことが、大きく影響していると考えます。地域内循環の徹底よりも、支援の即時性を優先した結果として、循環率は低下しました。

エリア別に見ると、九州の家庭向け循環率が44.6%(前年比▲55.4pt)、沖縄が35.2%(前年比▲64.8pt)と大幅に低下しています。これらのエリアでは、自治体や支援団体との連携が進み登録家庭数が増加したものの、地域内のお寺からの供給が追いつかず、隣接エリアのお寺からの配送で対応した結果です。北陸については、前年に令和6年能登半島地震の災害対応が循環率を押し下げていた反動から、支援団体向けで前年比+8.3pt、家庭向けで+8.7ptと改善しました。

今年度の循環率の低下は、前年の調査結果を踏まえた方針転換の影響を大きく受けたものです。ただし、エリアを超えた配送が増えることは、配送費用の上昇につながり、財務への影響も無視できません。循環率の維持と支援の即時性、そして配送コストの抑制——この三者のバランスをどう保つかは、引き続き私たちの活動の中心的な課題です。

支援の担い手であるお寺さまの数は着実に増えており、浄土宗、臨済宗妙心寺派、真宗大谷派、天台宗、本門佛立宗など各宗派が所属寺院向けに広報にご協力くださっています。地域ごとの供給基盤が厚みを増すにつれて、循環率と即時性のトレードオフは小さくなっていくはずです。

活動の広がりと、足元の変化

支援の輪を広げるための取り組み

今年度も、しんぐるまざあず・ふぉーらむ、あしなが育英会など、子どもの貧困問題に取り組む団体のメールマガジンを通じた周知に取り組みました。支援を必要としながらも、どこに相談すればよいか分からずにいる家庭に、こうした団体経由の情報が新たな接点となっています。

また、浄土宗ともいき財団の助成を受け、岩手、神奈川、埼玉、大阪、香川、鹿児島の6県で計7回の説明会も開催しました。「お寺の“ある”を社会の“ない”へ」と題したこの取り組みには、のべ207名が参加。新たに8寺院がおすそわけの発送に、18寺院が啓発活動に協力を表明くださいました。「意識が高い誰かの活動」ではなく「自分にもできること」として受け取られた手応えは、各地の会場で確かに感じることができました。

加えて、支援団体が登録家庭に向けて地域の活動情報を発信できる「団体告知システム」を8月に全国実装しました。年度内に166団体が利用し、登録家庭の72.2%にあたる14,644世帯がページを閲覧しました。おすそわけを届けるだけでなく、地域の支援者と家庭をつなぐ回路として、このシステムは少しずつ機能し始めています。

おてらおやつクラブの最新情報をお届けする「おてらおやつクラブ通信」の登録者数は8,147名(前年比106.3%)となりました。講演件数は20件(前年19件)と前年並みを維持しています。なかでも、国際交流基金主催「ASEAN宗教間対話」に出席し、ASEANの宗教リーダーの方々と“宗教者による社会活動”について議論する機会を得たことは、活動の視座を高めるためにも有意義でした。

再生可能エネルギーと「おすそわけ」が交わる、新たな連携

2025年7月、地域の再生可能エネルギーを地域に還元する仕組みづくりに取り組む株式会社まち未来製作所と活動連携を開始しました。電力取引で得た収益の一部を地域活性化の原資とし、おてらおやつクラブの活動に組み合わせることで、子どもの貧困問題への取り組みをよりサステナブルなものにしていきます。第一弾として福島県郡山市から活動を開始しました。再生可能エネルギーの地産地消と、おすそわけの地産地消。二つの循環が重なる試みです。

子どもたちへ届く一冊

食品ロス問題ジャーナリストの井出留美さんによる新著『おやつのおぼうさん おすそわけで子どもたちを笑顔に!』が、2025年12月9日にくもん出版から刊行されました。おてらおやつクラブの誕生の背景や、日本の貧困・食品ロス問題の現状を、小中学生にも届く言葉でまとめた一冊です。書籍の印税の一部は活動への寄付となっており、読者が問題を知ることが、支援へとつながる仕組みになっています。

認定NPO法人としての認定を更新

2025年11月、おてらおやつクラブは認定NPO法人としての認定を更新しました。活動の透明性と公益性が一定の基準を満たしていることの証左であり、寄付者のみなさまにとっては寄付金の税額控除が適用される根拠でもあります。引き続き、この資格にふさわしい活動を続けてまいります。

財務状況と、みなさまへのお願い

この一年の財務状況

2025年度の寄付収入は52,404,677円となり、前年(49,878,702円)を上回りました。前年に大幅な赤字へと転落した反省を踏まえ、今年度は財務の立て直しを事務局全体の課題として取り組んだ一年でもありました。

収入回復の大きな力となったのは、奈良県天理市との連携によるふるさと納税型クラウドファンディングです。175名の方から1,349万円のご寄付をお寄せいただき、目標を達成しました。あわせて、12月には「歳末たすけあいイベント2025」として、認定NPO法人チャリティーサンタ代表理事・清輔夏輝さんとの対談や、アイスタイル共同創業者・山田メユミさんを迎えた「利他」をテーマにしたトークイベントなど、計4つの企画を実施しました。支援への共感を広げながら寄付につなぐこうした取り組みが、収入の下支えとなっています。

一方で、支出面では課題が残りました。初回層への迅速配送を優先したことにより配送単価が上昇し、発送コストは増加しました。支援の質を上げれば費用も上がる——この課題は来年度以降も続く見通しです。南都銀行からの運転資金の借り入れも活用しながら、年度末に黒字転換を果たしました。

認定NPO法人への寄付は、税額控除の対象となります。個人の方は寄付金額から2,000円を差し引いた金額の40%相当が所得税から控除され、法人の方も損金算入が可能です。みなさまのご支援が、より大きな力となって届きます。

みなさまへのお願い

支援を必要とする家庭からの要請は引き続き増えています。制度のはざまで孤立する家庭、地方部で支援の手が届かない家庭、長期化する物価高に疲弊する家庭。そうした家庭の子どもたちに、おすそわけを届け続けることが私たちの役割です。
届け方を問い直し、仕組みを改善し、それでもなお財務は綱渡りの状況が続きます。おてらおやつクラブの活動は、みなさまのご支援によって成り立っています。

「たよってうれしい、たよられてうれしい。」そんな社会の実現に向けて、引き続きおてらおやつクラブにお力添えください。


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