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感動の構造

皆さん、こんにちは。いかがお過ごしですか。
今週は、自身が卒業したコロンビア大学大学院の日本における卒業生年次総会なる集いにお邪魔してきました。かれこれ15年以上その存在を認識していたのですが、興味が湧かず一度もお邪魔することはなかったのですが、今回は知人に声がけいただいたことがきっかけで重い腰を上げたわけです。今日は、その会について触れたいわけではないのですが(笑)、そんな会だからこそ、そこに向かう移動中、ふと、スタンフォード大学の卒業式でスティーブ・ジョブズが送った言葉をひさかたぶりに聞いてみようと思い立ち、YouTubeで再生してみました。そして、あいも変わらず素晴らしい構成と内容で、改めて感動したわけです。

ただ、一方で、なぜ、感動してしまうのか?とも思ったのです。なぜかと言うと、その感動の根幹には、彼がビジネス史に名を刻むほどのイノベーションを起こした事実があるからなのですが、たとえ憧れて志したとしても、多くのひとはこんなシリアル・アントレプレナー(連続起業家)になれる可能性は非常に低いだけでなく、そこには、本人に与えられた能力(ここには、能力を磨くことができることも能力だという意味で含まれています)や彼自身がコントロールすることはできない「時流」があって、結果として彼がそうであった、という見方もできるからです。そして、本人がコントロールできない要素が大きいとも見れる結果を、ひとは素直に感動の源泉にできるのだろうかと、少なくともぼくのような負けず嫌いというか、ひねくれた人間は斜めに見てしまうところがあるのです。ただ断っておきたいのは、今日の投稿では、「感動の源泉」について考えて、本当に感動に値するものはなにかを考えることであって、このスピーチを貶めたいわけではなく、結局、ぼくはこのスピーチが好きなのは変わらないのです。

改めて、上で書いたことを整理すると、感動の根底には、彼が成功したという事実があり、その成功の根底に、「与えられた能力」や「時流」という本人の努力とは関係のないものがある、という構図で見ると、そこに感動が生まれる余地は減じられるのではないかということです。なぜならば、ただ「できる」ひとが「できた」、という自慢話とも取れるからです。では、なぜ感動してしまうのかを、結論から書いてしまうと、

苦しみ、悲しみ、弱さ、迷い

といった不幸系・人間味系要素が、物語に凹凸を作り出し、「できるひとができた」という無味乾燥な話の幹に、花や葉を添えて、感動すら引き起こすのだと思います。具体的には:

・幼少の頃、養子に出された
・大学を中退した
・創業した会社を追い出された
・すい臓がんの診断を受けた

です。ぼくがこの投稿で強調したいのは、感動には影が必須である、という単純な構造でできている、ということです。影の要素がなかったと想像すると、これ以降で書くようなスピーチに深みを出すような要素すらも、実は大きく薄れてしまうのだろうと思うのです。成功という「光」と悲しみ・苦しみといった「影」、この2つがあって初めて感動する「絵」に昇華されるのだと思います。

さて、この光と影、どういった光や影なのか?という情報の粒度 (絵でいえばその構成要素)と、スピーチの深みや厚みへと繋げる言葉、ここでは人生の教訓(絵でいえばコンセプトやテーマ)、そしてJobs自身の表情、声、言葉の伝え方 (絵でいえば支持体や額縁)が有機的にまとまり知性が伺えることが、このスピーチが名スピーチと評される由縁だと思います。具体的には、このスピーチは、人生の3つのステージで個別の物語として構成されていることや、無駄がなくわかりやすい必要最低限の言葉で表現されていること、ウィットを交えながらも毅然とした表情で言葉を紡ぐ本人の視覚・聴覚効果、そして、なによりも、人生の教訓としての名言が秀逸で、その感動を大いに引き立たせています。非常にありふれた締め方ですが、ぼく自身も実感している、ぼくがとても好きな本人の原文を引用して今日の投稿を終えたいと思います。本日もありがとうございました。

you can't connect the dots looking foward, you can only connect them looking backwards, so you have to trust that the dots will somehow connect in your future. You have to trust in something, your gut, Destiny, Life, karma, whatever. Because believing that the dots will connect down the road will give you the confidence to follow your heart even when it leads you off the well-worn path and that will make all the difference.
将来を見据えて点と点をつなぐことはできないのです。人生を振り返ってでしか、それらをつなぐことができないのです。ですから、点がなんらかの形でつながることを信じなければならないのです。自分の直感、運命、人生、カルマなど何であれ何かを信じなければなりません。なぜならば、点が道の途中でつながることを信じていれば、たとえよく踏まれる道から外れたとしても、自分の心に従う自信が生まれ、それがすべてを左右するからです。

Your time is limited, so don't waste it living someone else's life.
あなたに与えられた時間には限りがあります。ですから、他の誰かの人生にそれを消費しないことをススメます。

スピーチの最後にJobsが引用した言葉を記した「WHOLE EARTH CATALOG」最終号の背表紙


Stay hungry. Stay foolish.

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