【読了】 #106 『無職日誌』
『無職日誌』
著:暇真
#文学フリマ東京 で出会った『無職日誌』。
まず、表紙がめちゃくちゃ良かった。
黄緑の背景。
スーパー帰りみたいな網バッグ。
少し大股で歩く女性。
“人生の途中感”がすごい。
「無職」と聞くと、どうしても“止まっている時間”を想像してしまう。
でもこのエッセイにあったのは、停止ではなく漂流だった。
仕事を辞めた5ヶ月間。
周囲は結婚したり、出産したり、キャリアアップしたりしていく中で、自分だけ社会のレールから少し外れてしまった感覚。
でも、その時間の中で描かれるのは、絶望だけじゃない。
ウクレレを買ったり、刺繍を始めたり、ベストを編んだり。
一見なんでもない日々なのに、“働いていない時間”だからこそ見える感情がちゃんとある。
読んでいて何度も、「わかるなあ」というより、
「人って、急に空白を与えられるとこうなるよな」と思った。
暇だから病む、とか。
時間があるから前向きになれる、とか。
そんな単純な話じゃなくて、もっと不安定で、もっと生活的。
昨日まで“会社員”だった人間が、肩書きを失った瞬間に、世界との距離感が少し変わる。
その微妙な揺れ方がすごくリアルだった。
あと、この本の好きなところは、“無職”を必要以上にドラマチックにしないところ。
人生終了です、みたいな悲壮感ではなく、
「今日どうしようかな〜」くらいの温度で進んでいく。
でも、その軽さの奥にちゃんと孤独がある。
だから沁みる。
読んでいて何度か、「あ、自分も日記書きたいな」と思った。
ちゃんとした感想とか、意味のある出来事じゃなくて、
今日ちょっと傷ついたこと
スーパーで変なパンを買ったこと
なんか急に昔を思い出したこと
そういう“まだ言葉になりきってない感情”を残したくなった。
『無職日誌』ってタイトルだけ聞くと、自虐っぽい。
でも実際に読んでみると、この本は“無職の記録”というより、
「肩書きがなくなったあと、自分をどうやって好きでいられるか」の話だった気がする。
文学フリマって、こういう本に突然出会えるからやめられないな。
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