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【読了】 #118 『人生を変えたコント』

『人生を変えたコント』

著:せいや(霜降り明星)


せいやさんが高校時代にいじめを受けていた話は、テレビなどで何度か聞いたことがあった。

だから、なんとなく知っているつもりでいた。でも、全然違った。

本で読むと、思っていたよりずっと壮絶だった。
笑い話として聞くのと、物語としてその時間を追体験するのとでは、重さがまったく違う。

ある日突然、空気が変わる。机がひっくり返される。
周りの目が変わる。昨日まで普通にいた教室が、急に自分の居場所じゃなくなる。

学校という場所の怖さは、閉じていることだと思う。

逃げ場が少ない。
毎日同じ教室に行かなきゃいけない。
同じ人たちに会わなきゃいけない。
そして一度「そういう扱いをしていい人」みたいな空気ができてしまうと、それが教室中に広がっていく。

読んでいて、何度もしんどくなった。
でも同時に、せいやさんが本当にかっこよかった。

ただ耐えていたわけじゃない。ただ我慢していたわけでもない。
自分の中にあるお笑いを信じて、どうにか立ち向かおうとしていた。

特に文化祭の場面がすごい。

文化祭って、本来はクラスが一致団結する舞台だ。
みんなで準備して、ひとつのものを作って、少しだけ青春っぽい顔をする場所。

でも、せいやさんにとっては、その舞台すら簡単には味方にならない。

主犯格の悪意がある。場の空気を壊そうとする動きがある。
自分をまた笑いものにしようとする気配がある。

普通ならそこで折れてもおかしくない。

せいやさんはその意地悪を察知して、臨機応変にプラスへ持っていく。

ここが本当にすごかった。

その場で何が起きているのかを理解する。悪意の角度を読む。
空気がどちらに転ぶかを感じる。そして、自分が傷つけられる側で終わらないように、笑いの方向へ引っ張っていく。

それは、ただ面白い人にできることじゃない。

怖さも、悔しさも、屈辱も全部わかったうえで、それでも舞台を成立させる人にしかできないことだと思う。

笑われることと、笑わせることは全然違う。

せいやさんは、自分を笑われる側に押し込めようとする空気を、自分で笑いを作る側へひっくり返した。

この移動が、めちゃくちゃかっこいい。

文劇祭というクラス全体の舞台で、お笑いの力を最大限に発揮したせいやさんは、本物だと思った。

ただの文化祭の出し物じゃない。
自分の青春を取り返すためのコントだった。

自分を傷つけてきた空気ごと、舞台の上で別のものに変えてしまう。そんなこと、なかなかできない。

この本を読む前は、『人生を変えたコント』というタイトルを少し大げさに感じていた。

でも読み終わると、これ以外ないと思った。

人生を変えたのは、一本のコントだった。
でも同時に、そのコントで人生を変えにいったせいやさん自身がすごい。

テレビで見るせいやさんは、いつも明るくて、声が大きくて、全力で、場を一気に楽しくする人だ。

でもこの本を読んだあと、その明るさの見え方が変わった。
ただ陽気な人の明るさじゃない。

傷つけられた場所から、それでも笑いを持って帰ってきた人の明るさだ。

いじめの話として読むと苦しい。
でも、それだけでは終わらない。

これは、笑いで自分の立ち位置を取り戻した人の話だった。

そして、せいやという人がなぜこんなにも人を笑わせることに本気なのか、少しだけわかった気がした。

自分を笑いものにされた人が、自分の力で人を笑わせる側に立つ。
それはただの反撃じゃない。

せいやさんは、文化祭という舞台で、自分を押し潰そうとしてきた空気ごと笑いに変えた。

あのコントは、ただの出し物ではなかった。

奪われかけた青春を取り返す、逆転満塁ホームランだった。

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