【読了】 #110 『再生ピエロ』
『再生ピエロ』
著:福本 カズヤ
文学フリマで『再生ピエロ』を見つけた時、今でも覚えている。
タイトルに惹かれ、福本さんに惹かれ、通り過ぎようとした時に二度見して戻ってきた。
僕が持っていた本を見て、「ほとんど僕も買いました!」と声をかけてくれた。
文学フリマって、こういう瞬間があるから好きだ。
本を買うというより、人の温度を持ち帰る感じ。
タイトルもめちゃくちゃ好きだった。
“再生”と“ピエロ”。
壊れているのか、笑っているのか、立ち直ろうとしているのか。
全部混ざっている感じがする。
「漢字」と「カタカナ」を混ぜてタイトルをつけているらしいが、自分も真似したくなった。
しかも読んでみると、この本、本当にそのままの温度で進んでいく。
もちろん離婚の話も出てくる。
でも、この本の魅力ってそこだけじゃない。
むしろ、
芽キャベツ。コンビニスイーツ。
洗っていない食器。欲しくなったマルジェラのリング。
なんか急に出てくるシャレ。
そういう、“人生の本筋じゃない部分”がめちゃくちゃ良い。
いや、本質なのかもしれない。
好きだったのは、この人の“ズラし方”。
「いっつもこうだ。倖田來未。」
とか、
「もういいや。forever。」
とか。
意味わからないのに、めちゃくちゃわかる。
好きなシャレすぎる。
この本、ずっとこんな感じで、急に韻を踏んだり、変な角度から言葉が飛んでくる。でも、それがただのおしゃれじゃない。
ちゃんと生活の中から出てきた言葉だから、妙に沁みる。
あと、この本を読んでいて思った。
日記って、“特別なことを書くもの”じゃないんだなって。
むしろ逆で、
コンビニでちょっとテンションが上がったこととか、
なんとなく寂しかった夜とか、
意味もなく欲しくなったリングとか。
そういう、小さい感情を取りこぼさないためにあるのかもしれない。
個人的にいちばん好きだったのは、この一文。
「どうぞ主旋律をお喋りください。相槌とリアクションで気持ちよくハモりますから」
めちゃくちゃ良い。
会話って、“同じ歌を歌うこと”じゃないんだよなと思った。
相手の主旋律をちゃんと聴いて、隣で気持ちよくハモれる人。
それってかなり優しさだ。
しかも、“自分が前に出たい”ではなく、“隣で鳴っていたい”という距離感なのが好きだった。
『再生ピエロ』って、人生を劇的に立て直す話ではない。
むしろ、ちょっと転びながら、それでも普通に生活を続けていく日記だ。だから良かった。
ちゃんと落ち込むし、ちゃんと笑う。
どうでもいいことに悩むし、急に変な言葉遊びをする。
その全部が、すごく人間っぽい。
読んでいて何度も、「こういう日記を書ける人、いいな」と思った。ちゃんと悲しいこともあるのに、文章はどこかポップで、軽やかで、少しふざけている。
でもその軽さの奥に、ちゃんと生活がある。たぶん自分は、そういう日記がかなり好きなんだと思う。
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