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【読了】 #121 『私たちの読書生活』

『私たちの読書生活』

著:大島 梢絵


人の本棚をじっくり見ることって、こんなに面白いのかと思った。

身近な友だちに読書好きが多いわけではない。
もちろん本を読む人はいるけれど、「どんな本を読んできたのか」「どんな本を手元に残しているのか」「どんな本を自分にとって大事な一冊だと思っているのか」まで、ちゃんと聞く機会はあまりなかった。

だからこの本は、かなり新鮮だった。

人の本棚を覗くことは、その人の部屋を覗くことに少し似ている。
でも、もっと静かで、もっと内側に近い気もする。

好きな本。
何度も読み返していそうな本。
積まれたままの本。
タイトルに惹かれて買ったのかもしれない本。
もう読まないけれど、なぜか手放せずにいる本。

そういう本が並んでいるだけで、その人が何に惹かれて、何に救われて、どんな言葉をそばに置いてきたのかが少し見えてくる。

この本は、単なる読書案内ではないと思った。

もちろん、紹介されている本はどれも気になる。
「これ読みたいな」と思う本もたくさんあった。

でも、それ以上に面白かったのは、本そのものではなく、その本を選んだ人の人生が見えてくるところだった。

同じ「読書好き」でも、読み方は全然違う。
本棚の作り方も違う。
本との距離感も違う。

じっくり味わう人もいれば、生活の中に自然に本がある人もいる。
読書から何かを得ようとする人もいれば、無理に意味を求めず、ただ本と一緒にいる人もいる。

その違いが面白かった。

特に、「自分を形成した特別な3冊」という考え方が好きだった。

自分を形成した本って、なんだろう。

面白かった本とは少し違う。
おすすめしたい本とも少し違う。
その本を読んだことで、考え方が変わったり、救われたり、言葉にならなかった自分の一部に気づいたりした本。

そう考えると、自分の本棚も少し違って見えてくる。

ただ本が並んでいるだけではなく、過去の自分があちこちに置かれているような気がした。

あの時期に読んでいた本。
なんとなく買ったけれど、妙に残っている本。
今の自分なら選ばないかもしれないけれど、当時の自分には必要だった本。

本棚って、その人の「分霊箱」みたいなものなのかもしれない。

全部を説明できるわけではない。
でも、その人の一部が確かにそこに入っている。

読書は基本的にひとりでするものだと思っていた。
読んで、感じて、自分の中で消化する。

でもこの本を読んで、読書は誰かと話した瞬間にもう一度始まるのだと思った。

なぜその本を選んだのか。
どこで読んだのか。
どの一文が残ったのか。
なぜ今も手元に置いているのか。

本の話をしているはずなのに、気づけばその人の話になっている。

それがすごく良かった。

身近に読書好きが少なかったからこそ、人の本棚や読書生活を覗けるこの本は、少し特別だった。

本好きの人たちは、こんなふうに本と暮らしているのか。
こんなふうに本を選び、並べ、残しているのか。

そう思いながら読む時間が、とても楽しかった。

読み終わったあと、自分の本棚も少し整えたくなった。
というより、眺め直したくなった。

そこに並んでいる本たちは、ただの読了済みリストではない。
今までの自分が出会ってきた言葉の跡なのだと思う。

『私たちの読書生活』は、人の本棚を通して、人の人生を少しだけ覗かせてもらう本だった。

そして同時に、自分の読書生活も、まだまだ途中でいいのだと思わせてくれる本だった。

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