【読了】 #126 『すべては果てしない賭け』
『すべては果てしない賭け』
著:山崎 怜奈
ラジオで話している言葉も、テレビでの立ち振る舞いも、ただ知識があるだけではなく、自分の言葉で考え、自分の場所をちゃんと作っている人という印象があった。
前作の『まっすぐ生きてきましたが』もそうだったけれど、山崎怜奈さんの文章には、まっすぐ生きてきた人の強さと、そのまっすぐさだけではどうにもならなかった時間の両方がある。
ただ順調だった人のエッセイではない。
迷って、悩んで、うまくいかない時間もあって、それでも自分の持っているものをどうにか活かそうとしてきた人の記録だった。
特に印象に残ったのは、山崎さんが「二足のわらじ」を大変ながらに楽しんでいるところだった。
学業と芸能活動。
アイドルと大学生。
ラジオパーソナリティとタレント。
歴史や言葉を扱う仕事と、エンタメの現場。
普通なら、どれか一つだけでも十分に大変だと思う。
でもその大変さをただ苦労話として語らない。
もちろん綺麗ごとだけではない。しんどさもあるし、迷いもあるし、自分の居場所を探し続けてきた時間もある。
それでも、どこかでちゃんと楽しんでいる。その姿が本当にかっこいい。
僕自身も、会社を経営しながら塾で算数を教えたりしている。
「結局、何をしている人なの?」と聞かれることもあるし、自分でもたまにわからなくなる。
でも、ひとつの肩書きに綺麗に収まらなくてもいいのかもしれないと思えた。
むしろ、複数の場所にいるからこそ見える景色がある。
片方の経験が、もう片方で活きる。
今は関係なさそうなことが、あとからどこかで繋がる。
その場では遠回りに見えたことが、気づけば自分の武器になっている。
山崎さんは、それをちゃんと自分の人生で証明している人だと思った。
中学受験をしたもの同士、共感するところも多かった。
中学受験って、やっぱり少し特殊な経験だと思う。
小学生のうちから、偏差値を見て、志望校を考えて、合格と不合格を突きつけられる。
ずいぶん早い段階で、「選ぶこと」と「選ばれること」を経験する。
僕も中学受験をした側の人間なので、勉強への向き合い方や、環境を変えることで自分の居場所を見つけていく感覚には、かなり頷きながら読んだ。
受験は、ただ学力を伸ばすだけの時間ではなかった気がする。
自分はどんな場所なら息がしやすいのか。
何を頑張ると、自分に少し自信が持てるのか。
どんな武器があれば、知らない場所でも立っていられるのか。
山崎さんは、その経験をちゃんと自分の土台にしている感じがする。
そして何より、自分の強みを活かす術を持っているのがすごい。
知識があること。
言葉で考えられること。
歴史が好きなこと。
ラジオで話せること。
物事を少し引いて見られること。
そういう性質は、場所によってはコンプレックスにもなり得ると思う。
理屈っぽいと思われるかもしれない。
かわいげがないと受け取られるかもしれない。
でもそれを消すのではなく、活かせる場所を探してきた。
自分の性質を無理に丸めず、武器に変えていく。
そこに一番憧れる。
装丁に自分の顔を大きく使っていないところも、なんだかすごく山崎怜奈さんらしいと思った。
もちろん、本人の顔を出せば売り場で目立つかもしれない。
芸能人のエッセイなら、そういう作り方も自然だと思う。
山崎怜奈という人の知名度に頼りきるのではなく、考えてきたこと、迷ってきたこと、選んできたことを読んでほしいという意思を感じた。
そして、ダレハナの存在もやっぱり大きい。
平日の昼に、ほぼ毎日のようにラジオで話し続ける。
しかも、ただ話すだけではない。
ゲストの話を聞き、ニュースを受け取り、リスナーの声に向き合い、自分の言葉で場を作る。
継続は力なり、という言葉は使い古されているけれど、山崎さんを見ていると、その言葉を素直に信じたくなる。
毎日少しずつ積み重ねたものが、いつの間にかその人の信頼になる。
言葉を扱い続け、考え続け、自分の場所に立ち続けること。
その全部が、今の山崎怜奈さんを作っているのだと思う。
タイトルも、読み終わるとすごくしっくりくる。
人生の選択って、結局どれも賭けなのだと思う。
受験、オーディション、卒業、執筆。
その時点で正解かどうかはわからない。
でも、選んだあとに、自分で正解にしていくことはできる。
大変そうなのに、ちゃんと楽しそう。
迷っているのに、ちゃんと前に進んでいる。
自分の強みを見つけ、それを磨き、自分の居場所に変えていく。
そして自分も、自分の二足のわらじをもう少し面白がってみたくなった。
綺麗に一本の道にならなくてもいい。
いろんな場所に足を置きながら、自分なりの賭けを続けていけばいいのかもしれない。
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