【読了】 #107 『ファミレス行こ。』
『ファミレス行こ。』
著:和山 やま
『カラオケ行こ!』が好きだった人ほど、この続編の“温度差”にびっくりすると思う。
もっとわちゃわちゃして、もっと青春の延長線みたいなものを想像していた。でも実際に描かれていたのは、青春が終わったあとに残る、妙な居心地の悪さだった。
深夜のファミレス。ドリンクバー。
少し冷めたポテト。どうでもいい会話。
この作品、ずっと“本題じゃない時間”が流れている。
でも、人間ってそういう時間にいちばん本音が出る気がする。
『カラオケ行こ!』の頃の狂児は、「変なヤクザ」だった。
怖いのに愛嬌があって、どこかコメディの住人みたいだった。
でも『ファミレス行こ。』の狂児は、少し疲れている。
ちゃんと歳を取っている。
大人になったというより、“人生に少し遅刻してる人”みたいな空気がある。
別に名言を言うわけじゃない。
むしろ、ちょっとズレてる。
なのに、そのズレ方がリアルすぎる。
ちゃんと会話してるのに、みんなどこか少し孤独。
でも完全にはひとりになれない。
その距離感が、深夜のファミレスという場所と完璧に噛み合ってる。
あと、この作品の好きなところは、人間関係に名前をつけないところ。
友情、絆などのそういう便利な言葉でまとめない。
だから逆に、本物っぽいななんて思う。
人生って、「親友」って呼ぶほどでもないけど、なぜかずっと忘れられない人がいたりする。『ファミレス行こ。』には、その感じがある。
『カラオケ行こ!』が“変声期”の物語だったとするなら、
『ファミレス行こ。』はもっと大きな意味での“声変わり”の話なんだと思う。
若さが少しずつ終わっていくこと。
好きだったものとの距離が変わること。
前と同じテンションでは生きられなくなること。
みんな少しずつ、“昔の声”では喋れなくなっている。
深夜2時、ファミレスでドリンクバー飲みながら、「人生ってなんなんだろうな」と少しだけ考えてしまう感じ。
読後感まで含めて、めちゃくちゃファミレスだった。
読み終わったあと、少しだけ誰かに会いたくなった。
でも同時に、ひとりで深夜のファミレスにも行きたくなった。
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