【読了】 #100 『あの子のかわり』
『あの子のかわり』
著:紗倉 まな
この本、読み終わったあとにまず思ったのは、
「ちゃんと怖いのに、ちゃんと現実っぽい」という感覚だった。
ドラマみたいな大きな出来事が起きるわけじゃない。
でも、確実に関係がズレていく。
それがすごくリアルで、逃げ場がない。
親友の妊娠。
本来なら祝福されるはずの出来事が、
この物語では少しずつ関係を歪ませていく。
祝いたい気持ちはある。
でも、心のどこかで引っかかる。
置いていかれる感覚。比較してしまう自分。言葉にできない違和感。
この作品は、そういう“言えない感情”をそのまま掬い上げてくる。
ここでタイトルの「あの子のかわり」が効いてくる。
誰かの代わり。
つまり、自分じゃなくてもいい存在。
でも読み進めていくと気づく。
この感覚って、特別な誰かの話じゃなくて、
誰の中にもある感覚なんじゃないかって。
恋愛でも、友情でも、社会の中でも、
自分が“唯一”でいられる瞬間なんて、実はそんなに多くない。
だからこそ人は、
「選ばれた側」でいたいと思ってしまう。
そしてこの物語がすごいのは、
誰も完全に悪くしないところだと思う。
人は無意識に誰かを傷つける。
悪気はない。
でも、その言葉や選択が、
相手にとっては確実に何かを削っている。
しかもそれが、いちばん近い存在との間で起きる。
だから余計に、苦しい。
ここで改めて表紙を見ると、ゾッとする。
赤い背景。
向かい合う二人。
でも顔は隠れていて、完全には向き合えていない。
そして、その身体に巻きつくリボンと鎖。
これが本当に象徴的で、
一見「繋がり」に見えるものが、
実は“拘束”にもなっている。
友情も、共感も、優しさも、
全部が時に足枷になる。
「わかってあげたい」という気持ちが、
逆に相手を縛ることがある。
さらに印象的なのが、下にいる3匹の犬。
同じ“犬”だけど、全部違う。
これ、多分この物語の核心で、
どれだけ近くても、人は同じにはなれないということ。
同じタイミングで人生が進むわけでもないし、
同じ選択をするわけでもない。
それでも関係は続いていく。
だからズレる。
この物語は、関係が壊れる話じゃない。
むしろ、
壊れないまま歪んでいく関係の話だと思った。
だからこそ怖い。
終わらない。
でも、元には戻らない。
読み終わったあと、スッキリはしない。
むしろちょっとざらつく。
結局、人は誰かの代わりになってしまう瞬間がある。
でもその中で、
それでもここにいるのか、
それとも離れるのか。
その選択を迫られる。
この本は答えをくれない。
ただ静かに、
関係の中にある“ズレ”を見せてくる。
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