【読了】 #103 『ラインマーカーズ』
『ラインマーカーズ』
著:穂村 弘
この人は日常のなんてことないことを、劇的に解釈する天才だと思った。
そして、それを五七五七七の31字に表現しきれるのがこの人の凄さだと思う。
短歌は31音で軽くて読みやすく、ただ作ろうと思えば小説なんかとは比べ物にならないくらい簡単に作れてしまう、とても日常的なものなのだと思う。
だから穂村さんの短歌を読むと、自分にとっての日常から穂村さんの感性で見つけたロマンチックを暴かれるて、まるで日常に劇薬を仕込まれるようなゾワゾワ感を感じる。
「ラムネ工場で子猫を見失ったとき入道雲の拍手を浴びる」
とても爽やかでいて、なのに嫌な夏独特の空気感を捉えたお気に入りの一首。
夏はやっぱり冒険の季節だが、ラムネ工場に入ると急に雨が降り出して、どこからともなくパチパチという音に包まれる。
ふと猫を追いかけながら入ってしまった寂れた工場で、見失ったにも関わらず周りから拍手の音に包まれる。そんな状況を想像するとめちゃくちゃ気が滅入る。
梅雨を過ぎて、それまで嬉しかったはずの晴れの日が、急に鬱陶しくなってくるぐらいの時期の夏の夕方をこの一首で表しきっているようなとてもすごい一首だと感じた。
この本には穂村さん自身が選んだ作品がたくさん入っている。
ぜひあなたにも読んでお気に入りの歌を見つけて欲しいし、僕もこれからも何回も読み直して、次の好きな歌を見つけるんだろうと思う。
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