【読了】 #99 『5A73』
『5A73』
著:詠坂 雄二
この本はミステリーだが、読んでみて漢字という文化の豊かさを強く感じる小説だった。
根幹となる事件は、「暃」という文字が体に書かれた5人の自殺者が見つかるというものである。
ただし、書かれている場所も自殺の方法も全員バラバラ。
そもそもこの漢字は幽霊文字と呼ばれるものの一つで、音も意味もないが文字として登録されているという摩訶不思議な文字。
この文字のJISコードである「5A73」がこの小説のタイトルである。
この不思議な事件を調査するように命じられた刑事2人が調査を進めていくのだが、その思索の過程が非常に面白い。
優秀な刑事だからこそ、色々な角度からこの文字の役割を検討するが、なかなか納得して解決に至るほどの仮説を立てられない。
なにせ、この文字を使った人たちはみんな死んでしまっていてこの世にいないのである。
「日に非」なので「よる」と読んだり、形を人が苦しむ様に見立てて「苦しむ人」と読んだり、時には「アシュラマン」といった解釈まで出るが、結局どの説も水泡に帰してしまう。
物語の結末はインターネットでも賛否両論あって、個人的にもスッキリ感のないものに思えた。
それでも「暃」というこれだけ不思議と魅力に溢れた題材を、余すところなく味わい尽くすエンタメとしてはとてもクオリティの高いものだったと思う。
この本を読んでみて1番感じたのは漢字というものの奥深さである。
形と音と意味があって、それを組み合わせてさまざまな言葉が作られる。
人の名前の由来とか、意外と聞いてみると楽しいですよね。
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