【読了】 #128 『流星の絆』
『流星の絆』
著:東野 圭吾
東野圭吾さんの作品は、やっぱり導入の引力が強い。
流星群を見るために、夜中にこっそり家を抜け出した3兄妹。
その間に、家では両親が殺されていた。
もしあの夜、家を抜け出していなかったら。
もし流星群を見に行かなかったら。
もし帰る時間が少し違っていたら。
そんな「もし」が、ずっと3人の人生にまとわりついている。
この作品は、かなりいろんな要素が入っている。
両親を殺された犯罪被害者家族の話。
犯人を追い詰める復讐劇。
3兄妹が大人になってから手を染めるコンゲーム。
静奈をめぐる恋愛。
兄妹の絆。
そして事件の真相。
正直、全部が全部、深く掘り切られているかというと、少し物足りなさもある。
もっと復讐劇に振り切ってもよかった気がするし、コンゲームとしてもっと緻密に読ませることもできたかもしれない。
兄妹の関係も、もっと苦しく描こうと思えばいくらでも苦しくできたと思う。
でも、それでも読めてしまう。
ここが東野圭吾さんのすごさなのだと思う。
要素は多い。少し散らかっている。
でも、物語としてはちゃんと前に進む。
ページをめくる手は止まらない。
『流星の絆』は、完璧に研ぎ澄まされたミステリーというより、いろんな感情が同時に走っている作品だった。
3兄妹は、被害者でありながら、清く正しく生きているわけではない。
大人になった彼らは、人を騙す側にも回っている。
普通なら距離を置きたくなるはずなのに、不思議と嫌いになれない。
たぶん、3人がずっと「あの夜」に人生を縛られているからだと思う。
時間は流れている。
大人にもなっている。
でも、心のどこかは流星群を見に行った夜から動けていない。
笑っていても、作戦を立てていても、誰かを騙していても、根っこには両親を殺された子どもたちがいる。
その危うさが切なかった。
タイトルの『流星の絆』も良い。
流星は一瞬で消える。
でも、その夜に見た光は、3人の人生から消えない。
本来なら綺麗な思い出になるはずだった流星群が、最悪の記憶と結びついてしまう。
美しいものと残酷なものが、同じ夜にある。
そして「絆」という言葉も、ただあたたかいだけではない。
3人の絆は、確かに彼らを支えている。
でも同時に、過去から離れられなくしているものでもある。
一緒にいるから耐えられる。
一緒にいるから前に進めない。
家族の絆って、こんなにも優しくて、こんなにも重たいものなのかと思った。
正直、細かいところで「もう少し見たかった」と思う部分はある。
でも、それでも最後まで読ませる力がある。
復讐も、嘘も、恋も、兄妹の絆も、事件の真相も、全部が少しずつ絡まりながら進んでいく。
綺麗にまとまりすぎていないからこそ、3人の人生の散らかり方にも合っていたのかもしれない。
『流星の絆』は、ミステリーとして面白いだけではなく、家族を失った人たちが、その喪失を抱えたままどう生きるのかを描いた作品だった。
流星は一瞬で消える。
でも、あの日の光と闇は、3人の中にずっと残り続ける。
美しいタイトルなのに、ちゃんと痛い。
その痛さと、少し散らかった面白さごと、印象に残る作品だった。
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