怒りとの戦い
恥ずかしい思い出
最近、「アンガーマネジメント」という言葉があるように、「怒り」との付き合い方に関心を持つ方が増えていました。わたしは高校まで野球部に所属していましたが、恥ずかしい思い出があります。
中学3年春、各務原市大会1回戦。前年秋の大会では準優勝。負けるわけにはいきませんし、負けるわけがありません。雨の中で投げ続ける背番号「1」のわたし。0-0で試合は進みましたが、味方の失策で先制点を許しました。わたしのスクイズ・スリーバント失敗もあり、0-1でまさかの1回戦敗退となってしまいました。その試合、相手のヤジがとにかくひどかった。相手チームの監督(教員)がコントロールできないのかわかりませんが、もうわたしは怒りとも戦わなければいけなかった、長い長い7イニングでした。味方の失策で負けた、しかもひどいヤジに負けた、試合後のわたしは頭にきて、大きな声とともにグラブをベンチに投げつけました。
わたしの両親は小学校~高校まで、ほとんど試合を見にきていません。しかし、その日に限って応援に来ていました。帰宅後「グラブを投げつけるのは止めなさい」と言われたことを、今でもはっきりと覚えています。怒りに負けた、恥ずかしい行動でした。
その悔しさを、最後の夏は岐阜県大会3位という形で晴らすというあたり、さすがわたしです(笑い)。
プロ野球選手と「怒り」
職業として野球をしている「プロ」。プロ野球選手、特に投手が「味方が失策したときこそ抑えないと」という話はよく聞きますが、本音ではどう思っているのでしょう。言えないだけで、めちゃくちゃ腹が立っているんじゃないですか!?
大野雄大選手は「子どもの頃から、味方のエラーや審判の判定で、そんなに苛立ったことはなかったです。僕が入団したころの先輩は厳しかったですよ。エラーした選手に対してブチ切れている場面、何回か見ました(笑い)。怒ることより、ここからどうしようかを考えることの方が大事なんで」。普段、お子さんが人に迷惑をかける行動をした際にはかなり厳しく叱るという大野選手。一度だけ、試合中に怒りの感情が抑えられなくなったことがありました。登板日に、ある野手が不慣れなポジションを守り、何度も大野選手の足を引っ張りました。ふざけんな!という気持ちになったそうですが、なんと試合中、その選手がベンチ裏で涙を流していたそうです。その姿を見て改めて「そうだ、みんな一生懸命やっているんだから怒ってはいけない」と冷静さを取り戻しました。「投手なら無駄な四球。これはエラーと同じで、僕も出してしまうんです。だから怒らない。それに尽きます」と、さすが大野選手でした。

大野選手とわたしの会話に加わってくれたのが、新人・吉田聖弥選手。日常生活でもほとんど怒ったり苛立つことがないという吉田選手ですが、野球に関しては高校時代に反省することがありました。「高校3年の春、一度背番号1を取りあげられて10になったんです。あの頃、何エラーしてるんだよという態度が出てしまっていたんです。で、当時の監督から『練習見ておけ!』と言われました。みんな、一生懸命練習やっているんですよ。僕だけじゃないんです。これだけみんな練習をやっている、エラーしたくてしているわけじゃない。エースナンバーを取りあげられ、仲間の練習している姿を見て、これではいけないと態度を改めました」。監督の親心が、吉田選手を成長させました。
みんな、怒りと戦い、怒りをコントロールしているんです。
お父さんが審判員
「僕も子どもの頃は、態度に出していましたよ。味方がエラーしたときとか、審判の判定に対してとか」と話すのはこちらも新人・金丸夢斗選手です。その金丸選手の立ち居振る舞いを指摘したのは、アマ野球の審判員であるお父さまでした。
「損するよ。あの態度でいいの?」
金丸選手の父・雄一さんは甲子園で高校野球をジャッジするレベルの、アマチュア球界の有名審判員です。審判も人間です。不服そうな態度を見せる選手は損をすることを、誰よりも知っている人でしょう。子どもの頃からお互いに、別の球場で試合をしてきたわけですから、直接見る機会は少なかったかもしれません。でも、子どもの頃に授かった父からの「金言」を、金丸選手は大切に守っています。
ちなみに家族が出る公式戦を、審判員は裁くことができません。でも、高校時代、大学時代には練習試合などでお父さん「相手」に投げたこともあるそうです。
3人に共通すること
大野雄大、吉田聖弥、金丸夢斗。3人とも「怒り」「苛立ち」を感じないわけではありません。でも口をそろえて言っていたのが「怒っていても仕方ない。次の打者をどう抑えるかに集中する」ということ。ビジネス書にもよく出てくる「目の前の事象に集中する」ことがいかに大切か、わたしよりも彼らは痛切に感じているでしょう。プロ野球選手でも、ビジネスマンでも同じです。過去は変えられない、他責より自責、目の前のことに集中。わたしも改めて心に刻んでおきたいです。
でも、子どもには怒っちゃうんだよなあ…。
そういえば、大野選手が言っていました。「涌井さん、すごいですよね。カウント3-2からきわどい球をボール判定されても、顔色ひとつ変わらないですもんね。あの振る舞いはすごいですよ」と。今度、涌井選手にメンタルコントロールの秘訣を聞いてみましょう。
