会社員でも月額課金の副業は作れるか|3万円×5社に必要な稼働時間
「月3万円の顧問契約を5社。それで月15万円」
副業の設計図として、これはよく見かける形です。単発の仕事を毎月追いかけなくていいし、来月の売上が読める。本業を続けながら持つ副業としては、たしかに理想的に見えます。
ただ、この設計図が成立するかどうかは、金額では決まりません。時間で決まります。
はじめまして、税理士ロキと申します。現役の税理士です。ふだんは中小企業や個人事業主の税務をやりながら、AIを仕事に使い倒しています。副業を始めた会社員の方の帳簿を見る機会が多いのですが、続く人と1年で消える人の差は、営業力でも単価でもありませんでした。1社あたり何時間で回っているかを、数字で把握しているかどうかです。
この記事では、月3万円×5社という設計を、稼働時間の側から検証します。全文無料です。
なお、副業の収入は業種・スキル・営業状況によって大きく変わります。この記事は稼働時間の設計方法であって、月15万円という収入を保証するものではありません。
この記事でわかること
会社員の可処分時間で、月45時間の副業稼働が現実的かどうか
1社あたりの標準稼働を業務別に積み上げる方法(月9時間の内訳)
稼働が破綻する本当の原因と、それを封じる3つの取り決め(文例つき)
社数を増やすより単価を上げるべき分岐点の計算式
月額契約に向く業務・向かない業務を見分ける5つの質問
月15万円は、金額の話ではなく時間の話
最初に、自分が使える時間の上限を出します。ここを出さずに受注すると、あとで必ず帳尻が合わなくなります。
会社員の可処分時間は、ざっくりこう計算できます。平日は帰宅後に2時間、月20営業日で40時間。土日は月8日あるうち半分の4日を使い、1日4時間で16時間。合わせて月56時間。
これは理論値です。実際にはここから削れます。残業した日、体調を崩した日、家族の予定、断れない飲み会。僕が見てきた範囲では、理論値の8割前後に落ち着く人が多い印象です。56時間×0.8で、実働は月45時間前後。
この45時間で15万円を作るなら、時給換算はこうなります。
15万円 ÷ 45時間 = 約3,300円
そして1社あたりに落とすと、3万円 ÷ 9時間 で同じ時給になります。つまり「月3万円×5社」という設計は、1社を月9時間で回せることが前提の数字だということです。
ここで大事なのは、9時間が「頑張れば行ける線」ではなく「これを超えたら時給が下がる線」だということ。感覚で受注していると、この線を静かに越えます。越えたことに気づくのは、たいてい半年後、体力が尽きたときです。
1社あたりの稼働を、業務別に積み上げる
「月9時間」を、実際の仕事の形に分解します。運用支援や代行系の月額契約を想定すると、内訳はだいたいこうなります。
月初のレポート・報告資料の作成 1.5時間
定例確認(オンライン15分×2回+準備) 0.5時間
実作業(契約の本体になる作業) 6時間
連絡・チャットの往復 1時間
合計で月9時間。5社なら45時間です。
平日換算すると、45時間 ÷ 20営業日 = 1日2.25時間。土日を使う前提なら、平日1.5時間+土日4時間×4週で44時間。数字の上ではぎりぎり成立します。
問題は、この積み上げに入っていない時間があることです。
新規の問い合わせ対応・見積・商談
請求書の発行と入金確認
記帳と経費の整理
確定申告期の作業(年間でならすと月1時間前後)
これらは特定の1社に紐づかない「自分の事務」で、月3〜5時間かかります。45時間+4時間で49時間。可処分の56時間に対して、余白は7時間しかありません。
つまり、この条件では5社が上限です。6社目を入れた瞬間、余白がマイナスになります。そこから先に削れるものは、睡眠か本業か家族しか残っていません。
自分の数字で埋める積み上げ表
紙でもメモアプリでもいいので、この5行を自分の数字で埋めてください。
月初レポート( )時間
定例・打ち合わせ( )時間
実作業( )時間
連絡の往復( )時間
合計( )時間 × 契約社数( )= 月間稼働( )時間
大事なのは、3と4を推測ではなく実測で埋めることです。1週間だけスマホのタイマーで測れば十分わかります。ほぼ全員、自分の見積もりより長くかかっています。
削れる余地がいちばん大きいのは、1のレポート作成です。毎月同じ形式で書くものなので、生成AIとの相性がよい作業でした。僕は月次の報告文の下書きに、こういう指示を使っています。
あなたは月額運用支援の担当者です。以下の実績データをもとに、クライアント向けの月次報告を600字で書いてください。構成は「今月やったこと」「数字の変化とその理由」「来月やること」の3段落。専門用語は使わず、相手が社内会議でそのまま読める文体にしてください。データは次のとおりです。(ここに数値を貼る)
これで1.5時間が30〜40分になります。浮いた1時間×5社で、月5時間がそのまま余白になります。
破綻の原因は、作業量ではなく「割り込み」
積み上げ表を作ると、たいてい「意外といけそう」と思います。ところが実際に5社を持つと、多くの人が半年で音を上げます。
原因は作業量ではありません。割り込みです。
平日の昼、本業の会議の合間にチャットが鳴る。「すみません、今日中に見てもらえますか」。作業自体は10分でも、頭を切り替えて、資料を開いて、返して、また本業に戻る。ここで消えるのは10分ではなく、体感で30分近くあります。これが5社から不規則に飛んでくると、積み上げ表は簡単に崩れます。
封じ方は3つです。どれも契約開始時に決めてしまうのがコツで、途中から言い出すのは角が立ちます。
1. 連絡窓口を一本化する
チャット・メール・電話・個人SNSの4経路が開いていると、確認漏れを恐れて常に全部を見張ることになります。1本に絞ってください。契約前のメールにこう書きます。
ご連絡は◯◯(チャットツール名)に一本化させてください。他の経路だと確認が遅れてしまうため、恐れ入りますがこちらでお願いできますと助かります。
2. 返信時間をこちらから宣言する
「いつでも返します」は最悪の設計です。相手も遠慮する基準がなくなります。先に上限を示すほうが、双方が楽になります。
平日日中は別の業務があるため、ご連絡への返信は24時間以内(土日祝を除く)を目安にしております。緊急のご相談は、あらかじめご一報いただければ調整いたします。
3. 急ぎには追加料金を設定する
無料で急いでくれる人には、急ぎの依頼が集まります。値段をつけた瞬間、本当に急ぎの案件だけが残ります。
24時間以内のご対応が必要な場合は、特急対応として1件あたり◯,◯◯◯円を別途申し受けます。通常のスケジュール内であれば追加費用はかかりません。
この3つを入れるだけで、僕の周りでは「月9時間」の見積もりがだいたい守れるようになっています。逆にこれを決めずに5社を持った人は、ほぼ例外なく1年以内に社数を減らしています。
社数を増やすより単価を上げる分岐点
受注していい社数は、感覚ではなく式で決められます。
受注上限(社)=(月の可処分時間 − 自分の事務時間)÷ 1社あたりの実測稼働時間
さきほどの数字を入れると、(56時間 − 5時間)÷ 9時間 = 5.6。小数は切り捨てて5社です。
この式が効くのは、右下の「実測稼働時間」が動いたときです。契約は同じでも、依頼の内容は少しずつ膨らみます。半年後に測り直したら1社12時間になっていた、というのはよくあります。すると上限は(56 − 5)÷ 12 = 4.25で、4社に減ります。
このとき取る手は2つしかありません。値上げか、卒業(契約終了)です。
値上げの目安は、自分の時給の下限から逆算します。仮に「副業の時給は3,000円を下回らない」と決めるなら、必要な単価はこうです。
実測稼働12時間 × 3,000円 = 36,000円
3万円のままなら時給は2,500円。下限割れです。ここで我慢すると、時間だけ増えて手取りが増えない状態が固定します。目安として、1社あたりの実測稼働が10時間を超えたら見直しのサインと考えてください。
伝え方は、値上げの理由を作業量の変化に置くのが素直です。
契約開始時と比べて、ご依頼の範囲が◯◯まで広がっており、現在の月額では対応時間を確保しきれない状況です。つきましては、来月分より月額を◯◯,◯◯◯円に改定させていただくか、作業範囲を当初の◯◯までに戻すかの、どちらかをご相談させてください。
範囲を戻す選択肢を並べて出すのがポイントです。値上げだけを提示すると交渉になりますが、2択にすると相手が選ぶ話になります。それでも折り合わないなら、その1社は卒業でかまいません。空いた9時間は、次の1社に回せます。
なお、月15万円は年間180万円です。これは当然、確定申告が必要な水準になります(2026年時点で、給与所得者の副業所得が20万円以下なら所得税の確定申告は不要ですが、住民税の申告は必要とされています)。経費と税金を引いた手取りは額面どおりではないので、時給を考えるときは頭の隅に置いておいてください。個別の判断は税務署や専門家に確認を。
月額契約に向く業務・向かない業務
最後に、そもそも月額にできる仕事かどうかの見分け方です。判定は、この5つの質問で足ります。
毎月やることが、事前に決まっているか
作業量が、月によって3倍以上ぶれないか
成果が、相手の都合(採用の応募数、季節、他社の動き)で決まらないか
相手の返事を待たずに、自分だけで進められる部分が半分以上あるか
1年後も同じ作業が必要だと、相手が納得できるか
Yesが4つ以上なら月額向きです。3つ以下なら、月額にすると自分が苦しくなります。
向いているのは、月次の数値まとめや報告、定型の更新作業、データ整理、記録の保守、チェックと監視のような業務です。「やることが決まっていて、終わりの定義が自分側にある」のが共通点です。
向かないのは、成果報酬に近い性質のもの、相手の意思決定待ちが多いもの、繁閑差が極端なものです。イベント運営やキャンペーン依存の制作は、月額にすると忙しい月に大赤字、暇な月に相手が不満、という両方負けになりがちです。
グレーなのが制作系です。これは上限を数字で書けば月額にできます。「月4本まで」「修正は1本につき2回まで」と契約に書く。この一文があるかないかで、同じ仕事が安定契約にも消耗戦にもなります。
まとめ
月3万円×5社は、1社を月9時間で回せるなら数字上は成立する
会社員の可処分時間は理論値で月56時間、実働は45時間前後
積み上げ表に入らない自分の事務が月3〜5時間ある。余白は7時間しかない
破綻の原因は作業量ではなく割り込み。窓口一本化・返信24時間・急ぎは有料で封じる
受注上限=(可処分時間 − 事務時間)÷ 実測稼働。1社10時間超えは値上げか卒業のサイン
月額に向くのは「やることが決まっていて、終わりの定義が自分側にある」仕事
明日やる最小の一歩は、ひとつだけです。今週1週間、副業の作業をタイマーで測ってください。15分単位で十分です。自分の1社が本当は何時間かかっているのか、その数字が出た瞬間に、受けるべき社数も、上げるべき単価も自動的に決まります。
見積もりで動いている限り、副業はいつまでも「なんとなく忙しい」ままです。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
税理士ロキ|現役税理士。ふだんは中小企業や個人事業主の税務をやりながら、AIを仕事に使い倒しています。会社員が損しないお金の話と、明日から使えるAI仕事術を発信中。フォローしてもらえると更新の励みになります。
