二次元コンテンツにオルタナティブロックがやってきた
4年前、君は覚えているか?
『ぼっち・ざ・ろっく!』
「あー、はいはい。名字を某バンドから引用してるキャラね。令和のけいおん!ですか…」と思っていた筆者だったが、オープニングを見て只者ではないアニメだと予感する。
トドメにはこのエンディングが流れた途端テレキャスターで頭をぶん殴られてしまった。
なんだよこの変拍子・・・教えはどうなってんだ教えは!
令和の萌えアニメのエンディングなんか萌え萌えなガチャポップに決まってるだろうが!!!!なんて、思っていたが謝罪します。大変申し訳ありませんでした。
劇中バンド・結束バンドのアルバム『結束バンド』が配信されたその日から自分は狂ったように聴き続け、2023年のトップソング上位すべてがぼざろになるという始末。

『マイゴ事変』
筆者に絶大なる衝撃を与えた「ぼざろ」から半年経ったころに放送されたアニメ『BanG Dream! It's MyGO!!!!!』。
「バンドリ?あー、はいはい。リアルライブでは声優がバンドをやってるやつね。バンド版のラブライブですか…」
いや今度はエモロックかい笑笑笑笑
令和の萌えアニメのエンディングなんかバズ狙えるダンスチューンに決まってるだろうが!!!!なんて、思っていたが謝罪します。大変申し訳ありませんでした。
劇中バンド・MyGO!!!!!のアルバム『迷跡波(めいせきは)』が配信されたその日から自分は狂ったように聴き続け、2024年のトップソング上位がマイゴになる始末。

『SUN-FADED』
「マイゴ事変」後もガールズバンドアニメが続々と登場し、時代はまさに大ガールズバンド時代になっていた2025年。
そんな中、ついにバンドアニメですらないところから飛んできた。
音がきたねえ!!!

二次元コンテンツ大本山でもあるアイドルマスターから、ボンボン・ドカドカ・ジャキジャキが出てきたときの衝撃。
キラキラ・萌え萌え・キュンキュンの真逆である。
すべて真逆の例
配信された当日にX(旧Twitter)を眺めていたら「ボーカル何言ってるのか聞こえねえよ!」「音割れしてるけどこれ仕様なの?」という怒りのオタクの呟きを目撃して、一人で勝利を確信した。[何に対して?]
別に歪んだギターを鳴らすアニソン・キャラソン自体は昔からいくらでもあった。
だが、これはそういう話ではない。
「楽器同士が潰れ合う音」「ギターやドラムのノイズをあえて消さない」「ボーカルを強調させない」
アニメのロック曲では無い、まさしくオルタナティブロックの作法である。
なにが起きている?令和の二次元コンテンツ…

オルタナティブロックバンド
NUMBER GIRLがメジャーデビューする際、東京のスタジオで録音した「透明少女」のクリアな音に違和感を覚え、そのテイクをボツにして、インディーズ時代に使っていたスタジオでアナログ8トラックを使ってレコーディングをしたという逸話がある。
メジャーレーベルから出た作品で、あそこまで生々しく汚い音を鳴らしていたバンドを、自分はNUMBER GIRL以前にはほとんど知らない。
NUMBER GIRLと、その周辺や後続に影響を受けた人たちが少しずつ土壌を作り上げていった結果、ついには二次元コンテンツでオルタナティブロックの花が咲いたのである。
イエーイ!!!(HIKAKINさんの動画で使われるSE)
どうしてこうなったのか?
90年代末以降、日本のオルタナが枝分かれしながら蓄積していった結果、その要素が2020年代には「アニメの劇中バンドが普通に使える音」になったのではないだろうか。
「日本のオルタナティブ・ロック」自体かなり広義なジャンルであり、ゼロから紹介していくと横のスクロールバーがどんどん小さくなってしまうと危惧したため、独断と偏見で現在に至るまでの8バンド紹介していきたいと思う。
envy「Worn Heels and the Hands We Hold」(2006年)
1992年に結成された『envy』はナンバガとは別軸で日本のオルタナティブロックを築き上げてきたバンド。細かく言うと、ジャンルはエモロックとかスクリーモとか言われているけど気にしないでいいです。
「轟音」で「静と動」。ハードコアなボーカルは好みが分かれそうだが、この2つのポイントは現在のオルタナティブロックバンドにも影響を与えていると思う。
「MyGO!!!!!」は彼らに影響を受けたと言っても過言ではない!!!!
ASIAN KUNG-FU GENERATION「或る街の群青」(2006年)
みんな大好きアジカン。実は結成年はナンバガとほぼ同時期である。
代表曲は「リライト」だけど自分はこれを推したいと思う。あとYoutubeのサムネが未だに「M-1グランプリ2024 テーマソング」なのが嫌なので。
余談はともかく、オルタナ的ギターでアニメソングを獲得していったのはアジカンからではないだろうか。
ちなみに「ぼざろ」の登場人物は彼らの名字から取られており、最終話ではアジカンの楽曲「転がる岩、君に朝が降る」もカバーしている。
筆者は長らくこの楽曲が好きだったが、
「ア!!!!!!!!!!!!!!!ぼざろの曲だ!!!!!!!!」
と言われるようになり、言われる度にしっかりブチギレている。
the cabs「キェルツェの螺旋」(2011年)
爆撃機とも称されるドラムの手数、変拍子、スクリーモ。
こちらも現在のバンドへ多大なる影響を与えていると思う。
筆者がぼざろで「へ、変拍子!?」とたまげた理由でもある。
本当は公式MVを紹介したかったが、つい最近アップロードされていた残響レコード公式アカウントが乗っ取られてしまい、MVが全部消えてしまった。ふざけんな。
凛として時雨 「abnormalize」(2012年)
初めて聞いたときは「なんだこの声は」と思ったのは内緒だ。
やっぱりボンボンドカドカジャキジャキ。でもアニメタイアップ曲。
筆者はアニメの曲でもこの「やりすぎ」感に衝撃を受けた。この辺りからアニメだからと言って、普通のアニメソングにしなくて良いんだという境界線が崩れていったと思う。
tricot「POOL」(2013年)
the cabsや凛として時雨のような複雑さを持ち合わせながら、キャッチーさも持ち合わせているバンド。
ぼざろの「カラカラ」を作った中嶋イッキュウ氏が所属している。
ちなみに筆者はカラカラが初めて流れた回でイントロが流れた時点で「これtricotだろ!!!!!!!!!」とイントロドンを正解した。

the bercedes menz「開口部」(2022年)
すいません、一気に令和に飛びます。
「ハードコアJ-POP」を掲げている彼らは轟音でノイジーなのにポップな曲を発表し続けている。オルタナ・ハードコアの要素がもはや難解としてではなく、ポップスとして出てくる要素だと思う。
このMVが公開されたのはぼざろ放送開始のわずか5か月前。
まさに現代邦楽オルタナ前夜である!!!!!!!!!!!!!
ひとひら「円」(2025年)
最後はサンフェーデッドと同じ年に発表された楽曲を二曲紹介したいと思う。
筆者はこれを聞いたとき、蓄積していったエモロック・スクリーモと現代の日本語ロックがここで繋がったと感動した。
『円』というタイトルには、途切れることなく繋がりを描き続ける時間の流れや、何度も訪れる始まりと終わりの連鎖が込められている。
kurayamisaka「sunday driver」(2025年)
最後は大躍進をしつづけているkurayamisaka。
轟音・オルタナの語彙を持ち合わせて今までの文脈をオマージュしつつ、歌はすごくポップで開かれている。
これが今後の邦楽ロックの定番になっていくのだろうか?
これは若かりし頃のギタボがなぜかマンキンでHIKAKINさんの真似をしている動画。これだけはなにがあっても絶対に消さないでほしい。
大オルタナティブロック時代
そして同時期に、アニメの中でもこの音が鳴り始めるようになる。
純粋なギターロックで衝撃を受けた『ぼっち・ざ・ろっく!』。
エモロックにも驚いた『BanG Dream! It's MyGO!!!!!』。
そして、音が汚い!!!と喜んだ「サンフェーデッド」。
ここまで振り返ってみれば、これらは突然変異で現れた音ではなかったことがわかる。
20年以上かけてバンドたちが少しずつ耕してきた土壌の上に、ようやく二次元コンテンツまでオルタナティブロックがやってきたのである。
かつてなら「こんなのアニメの曲じゃないだろ」と言われていたような音が、今ではキャラクターが歌い、500万回も再生されている。そして、その曲を聴いたオタクが「音割れしてるけどこれ仕様なの?」と困惑している。
かなり最高だと思う。
オルタナティブロックは、もはや地下のライブハウスだけにあるものではない。
時はまさに大ガールズバンド時代であり、大オルタナティブロック時代なのである!!!!!!!!!
イエーイ!!!(HIKAKINさんの動画で使われるSE)
