乃木坂46『My Respect』――受け継がれる「乃木坂プライド」と結成15年の現在地
今年、乃木坂46は結成から15年を迎える。
結成当時0歳だったメンバー(先日15才になった川端晃菜)が在籍していることからも、グループの活動が長きに渡っていることが分かる。
そして、今月。7年振りのオリジナルアルバム『My Respect』が発売された。
2022年以降のシングル曲と、3~5期生の期別曲、そしてリードトラックとして『My Respect』が収録されている。
今作に収録されている2022年以降のシングル曲は、1,2期生の卒業を経て、3期生を中心にした新たな体制に受け継がれた期間にリリースされたもの。
グループの新たな軌跡を記録した作品になったと言えるだろう。
そんな乃木坂の近年と現在地。そして、未来についてをいちファンの目線で書いていこうと思う。
幅広い世代のメンバー
乃木坂46は3期生4名、4期生10名、5期生11名、6期生11名の総勢36名で活動している。
3期生は今年の9月でグループ加入10周年を迎える大ベテラン。
最も後輩にあたる6期生は昨年加入したばかりだが、最新シングル『ビリヤニ』では矢田萌華と瀬戸口心月がWセンターに抜擢され、今後の活躍が期待される。
10代から30代までと幅広い世代が在籍し、個性豊かなメンバーが活動しているのも、乃木坂の伝統であり、らしさと言えるだろう。
2022年~2025年の乃木坂
今作に収録されるシングル曲は2022年~2025年にリリースされたもの。
初期からグループを支えた1,2期生全員が卒業し、3期生を中心とする新体制になった期間だ。
2022年、声出し制限がある中で開催された「真夏の全国ツアー」。3年振りに乃木坂の聖地ともいえる「明治神宮野球場」でも公演が行われた。
その3年前、2019年には21名もいた1,2期生も5名(秋元真夏、齋藤飛鳥、樋口日奈、和田まあや、鈴木絢音)にまで減っており、結果として、彼女たちにとっても最後の神宮公演になった。
1,2期生は演出面にも関与し、後輩メンバーをフィーチャーするパートを設けるなど、バトンを渡すようなツアーでもあった。
2023年には5期生がグループ活動に本格的に合流。
その一方で2代目キャプテンを務めた秋元真夏が卒業し、梅澤美波へと引き継がれた。
同年、長年エースとしてグループを支えた1期生の齋藤飛鳥、最後の2期生・鈴木絢音も卒業。完全に3期生以降のメンバーで活動する新体制となった。
新体制1曲目のシングル『人は夢を二度見る』では、3期生の山下美月、久保史緒里がWセンターを務めたが、この二人も2024年、2025年に相次いで卒業。
乃木坂の顔として活動しながらも、女優として数多くの作品に出演した山下美月。歌唱力の高さからグループを引っ張り、オールナイトニッポンのパーソナリティを担当。女優としても活躍している久保史緒里。
1,2期生からからバトンを受け継ぎ、グループの活動を支えた二人の卒業は、新たな世代交代を象徴する出来事と言えるだろう。
2025年には6期生も加入し、最新シングル『ビリヤニ』では矢田萌華と瀬戸口心月がWセンターを務めた。
グループは新たなフェーズに突入している。
受け継がれる乃木坂プライド
この数年でガールズグループの勢力図は大きく変わった。
圧倒的な歌唱力とパフォーマンスで魅せるK-POPグループの活躍はもちろん、カラフルな衣装を身にまとった新時代のグループが
新たに人気を獲得している。
乃木坂46に目を向けると、2022年には3期生が11名おり、グループの中核を担っていたが、相次いで卒業。現在は4名になった。
今年は昨年加入した6期生が、本格的にグループ活動に合流することが予想される。
乃木坂は、これまでも非常にスムーズに世代交代が進んできた。
いまでもライブのチケットは取りにくく、2014年以降、昨年まで神宮公演を続けている。
なぜ、メンバーが変わっても、グループの人気を継続できるのか。
それはメンバー、運営、ファンが乃木坂を愛し、目には見えない「空気感」にも似たような精神性、「乃木坂プライド」が引き継がれているからではないか。
清楚なイメージはもちろん、他者を思いやる精神性、パフォーマンスで魅せる一体感…これらすべてがグループに受け継がれる「乃木坂プライド」なのだろう。
ライブ会場に行くと、乃木坂ファンの方々は暖かく、穏やかな雰囲気の方が多い。
自分自身も含め、ライブやイベントを楽しみに、毎日学校や仕事に行くような、良い意味で”普通”の雰囲気だ。
各々に推しはいても、他のメンバーにもコールを送り、新たに加入したメンバーも暖かく迎える。
それは乃木坂の雰囲気と似たものであり、グループとファンの間にも良い循環構造ができているようにも見える。
ライブ会場に溢れる、暖かく穏やかな空気感は、乃木坂46というグループが持つ雰囲気そのものだ。
メンバー、スタッフ、そしてファン。その三者が同じ価値観を共有することで、非常に幸福な循環構造ができているように感じる。
これこそが、目には見えない「空気感」にも似たような精神性、――『乃木坂プライド』の正体ではないだろうか。
もちろん、他のアイドルグループを推す方々も優しく、推し方はそれぞれだ。
自身も坂道グループ以外のライブに足を運ぶことが少なく、一概に断定することはできないが、乃木坂には特有の穏やかさがあると感じている。
乃木坂46の現在地とMy Respect
秋元康プロデュースの楽曲はどこかメンバーに充てた「手紙」のようにも受け取れる楽曲も多い。
今作のリードトラック『My Respect』もそんな1曲だ。
君を尊敬しているよ
そうさ ここまで頑張って来たことを…
一番 そばにいたから 全部知ってる
いつも 微笑んでいたけれど
きっと 辛いことだってあっただろう
悲しみは胸にしまって
まわりの人に気づかれないように
君は君でいた
https://www.uta-net.com/song/386413/
全体を通して聞くとラブソングとも聴こえるが、乃木坂46そのものへのリスペクトを歌っているとも受け取れる。
ファンの気持ちを代弁してくれているようで、現役メンバーのみならず、これまで在籍したメンバー、スタッフも含む、乃木坂46に関わる人々へのリスペクト。
「一番そばにいた」のはメンバー同士であり、スタッフであり、ファンにも当てはまるだろう。
「一番そば」は物理的な近さとは限らない。
リスペクトのベクトルも、秋元さんから、ファンから、メンバーから、スタッフからと多角的にイメージが出来る。
乃木坂に限らず、聴き手それぞれが思う”何か”へのリスペクトにも当てはめられる。
乃木坂を深く知らない人が偶然ラジオで耳にしたり、何年か先にこの曲に出会った人にも響くような、普遍的な楽曲とも言えるだろう。
人はそれぞれ違う価値観
秋元さんの紡ぐ歌詞は、テレビやライブでも披露されることが少ない2番にこそ、メッセージを感じることが多い。
『My Respect』では以下の2番の歌詞が印象に残った。
人はそれぞれ 違う価値観
自分は自分なんだって
何も染まらない 色でいたい
そういう生き方 憧れはしても
なかなかできないよ
https://www.uta-net.com/song/386413/
アイドルグループで活動する限り、様々な指標で比べてしまうのは避けられない。
グループ内で、他のグループと。比べようとしたらきりがない。
グループ全体を推すファンが多いのは、乃木坂の強み。
だからこそ、特に6期生は15年の歴史と伝統にプレッシャーを感じることも多いだろう。
だからこそ、「人はそれぞれ違う価値観」「自分は自分」という歌詞は現役メンバーにとって何より励みになるのではないだろうか。
グループとしての変わらないカラーはあるが、それは、その時代、時代に在籍した個性豊かなメンバーの融合で出来たもの。
2023年、3期生以降の体制になって初めての真夏の全国ツアー最終日。
キャプテン梅澤美波の「私たちが乃木坂46です」「過去も未来もそして今も、全部愛してみんなで前に進みます」という涙混じりの宣言は、まさにそれを表している。
キャプテンの涙ながらの力強い宣言は、メンバーはもちろん、ファンにとっても何より心強く、感動的な場面であった。
宣言通り、その時々の今のメンバーが、過去も未来も今を愛しながら進んでいくのが乃木坂46そのもの。
その宣言の意味を再確認し、「人はそれぞれ違う」「自分は自分」とメンバーへエールを送るような歌詞だと感じた。
”君”という誰かへのリスペクト
「人はそれぞれ違う価値観」というストレートな歌詞は、乃木坂メンバーに限らず、聴き手の僕たちにも響くものがある。
人と違うことに悩んだり、意見が食い違ってしまったり。
人はそれぞれ価値観が違う――分かり切ったことと言えばそれまでだが、分かっているからこそ悩まされる。
時に孤独を感じたり、他者と比べては落ち込むこともあるだろう。
学校で、会社で。もっと小さなコミュニティなら、家族、夫婦、友人関係にもあてはまる。
君は嫌われることなど
きっと何にも怖れてないんだ
そういう勇気がなければ強くなれない
ホントはみんな認めてるのさ
意思のある背中 見送りながら
どこへ行っても絶対変わらない
君は君でいい
https://www.uta-net.com/song/386413/
人それぞれ違うからこそグループが輝くように、本来は現実世界でも同じはずだ。
だからこそ、それぞれが思い浮かべる”君”に惹かれるのだろう。
そんな”君”も誰かのことをリスペクトし、憧れているのかもしれない。
明確な答えが出るわけではないが、その事実こそが美しく、自分も背中を押されているような気がした。
これからの乃木坂46
新進気鋭の多くのアイドルグループが、メンバーそれぞれカラーの違う衣装を着用し、キャッチーな振付で踊る。
乃木坂はその対極にある。時代の流れとは反しているかもしれないが、それが乃木坂の伝統であり、個性だ。
カラーの違うグループが活躍するからこそ、それぞれがより輝く。
”深読み”しすぎかもしれないが、2024年リリースの「歩道橋」や、年末の音楽番組で黒い衣装でパフォーマンスする姿は、時代に染まらず、乃木坂プライドを継承していく決意表明のようにも見えた。
誰かのこと 好きになるのは
外見より もっと
その内面 惹かれるもの
尊敬は I love you!
https://www.uta-net.com/song/386413/
そんな「外見」のことを話すのも野暮だろう。
外見も個性であるし、入口は外見の美しさかもしれない。
それでも、内面を知ることで、強く惹かれるもの。
乃木坂でも、他のアイドルでも、現実で出会った人にも同じはずだ。
2026年は6期生がグループ全体の活動に本格的に合流し、新たな乃木坂として活動する姿が見れるだろう。
2月にはアルバムのリリースライブが決定しており、例年通りのBIRTHEDAY LIVE、真夏の全国ツアーも実施されるはずだ。
ファンとしても、「乃木坂プライド」を胸に応援していきたい。
2026年の新たな乃木坂の輝きを見届け、メンバーが笑顔で元気に活動できることを願っている。
