『星つなぎのエリオ』――闇の中で輝く光
ディズニー&ピクサー最新作の『星つなぎのエリオ』を見てきた。今夏の映画は『鬼滅の刃』の記録的ヒットが話題になっているが、こちらも平日の昼ながら、子供連れの家族を中心に席の大半は埋まっていた。
映画は予告編込みで2時間弱、本編は97分。劇場内には小さなお子さんも大勢いたが、おおむね静かに楽しんでいるようだった。
カラフルな映像が多い反面、「宇宙」が舞台ということもあり、スクリーンが暗いシーンも多く感じたが、それが大丈夫なら年齢問わず家族で楽しめるだろう。
以下、ネタバレありで感じたことを記載していく。
ディズニー&ピクサー最新作
ひとりぼっちの少年・エリオは、ずっと夢見ていた―この広い世界のどこかにある、“本当の居場所”を…。
彼の運命を変えたのは、何光年も離れた世界で出会ったエイリアンの少年。
孤独なふたりから生まれた“やさしい奇跡”とは?
あの頃、ラジオを聞いていた
エリオは地球に自分の居場所はないと思い、宇宙人にさらわれたいと願っている。
そんなエリオの姿をみて、若き日の自分に思いを馳せた。
自分が思春期の頃、ラジオを聞いていた。
友達はいるが、自分は人とは違い「普通」ではないように感じており、どこか孤独を感じていた。
ラジオは自分に語り掛けてくれる。同じように聞いてる見知らぬ人が世界にいると思うと、寂しくなかった。
自分は一人じゃないと知らないうちに感じていたのだと思う。
宇宙に行けば孤独はなくなるか
エリオは地球に居場所はなく宇宙に行きたいと願うが、宇宙は彼にとっての居場所なのだろうか。
念願かなって銀河組織「コミュニバース」に連れて行かれるが、すぐに受け入れられるわけではない。エリオはそこで居場所を見つける為、試行錯誤する。
その過程は現実世界と変わらず、理想の環境に行ったとしても、全てが解決するわけではない。
寂しさもなくなるわけではなく、孤独は孤独のまま存在すると感じた。
居場所を求めて
「自分に求められるものに応え、環境に順応できれば、自分の居場所は見つかるのだろうか?」
宇宙に居場所があると信じるエリオを見てそんなことを思った。
グロードンはエリオが出会う、”気弱さ”に悩む、エイリアンの少年。エリオが星空の下、グロードンに「僕って、誰も愛したくないような子なのかも」と打ち明けるシーンが印象的だった。
それは、彼が初めて“自分に正直になれた”瞬間だったように感じた。
自分らしさとは何か
自分の弱さや不安を隠さず、そのままの気持ちを言葉にしたエリオに、グロードンは「僕はエリオのこと好きだよ」とまっすぐ返す。
ただ正直になった結果を、「好きだよ」と受け入れてもらえたこと。それは、きっとエリオにとってかけがえのない救いになったはずだ。
「ありのまま」「自分らしく」とはよく言うが、それは何か。
「こうあるべき」や「男らしく」という既存の価値観にとらわれず(それが自身の望む姿でないなら)、自分の内なる声に正直でいること。
それが「自分らしさ」なのかと思った。
無理に環境に合わせようとしたり、居場所を外に探す必要もない。
自分に正直でいられれば、自分のいる場所が、そのまま”居場所”になるのだと思った。
一人だけど孤独じゃない
自分の同世代の友人の多くは結婚し、家庭を持っている。
ふとした時に「一人」を感じることはあっても、孤独を強く感じる事はあまりない。
たとえ一人でいても、孤独という感覚は必ずしもイコールではないと感じている。
エリオはグロードンと物理的に離れることになり、両親も亡くなっている。
たとえ遠くにいても、たとえもうこの世にいなくても、つながっていると感じられることが、孤独の中での大きな支えになっているのだと感じた。
BUMP OF CHICKEN 『リボン』
日本版エンドソングはBUMP OF CHICKENの『リボン』が起用されている。
2017年に結成20年イヤーのラストを飾る曲として発表され、山﨑賢人が出演する「Galaxy S8」のCMソングとしても起用されており、ファン以外の方にも耳馴染みのある曲かと思う。
代表曲『天体観測』にあるように、BUMPにとって宇宙は重要なモチーフであり、『リボン』もこの作品にぴったりであった。特に印象に残ったのは以下の部分。
君の勇気を 僕が見れば星だ 並べても同じでありたい
あぁ ここはどこなんだろうね どこへいくんだろうね 迷子じゃないんだ
「誰も愛したくないような子なのかも」と悩むエリオに、グロードンが「好きだよ」「友達になれそう」と声をかけたように、他者から見た自分はすでに”星”なのかもしれない。
「どこへいくんだろうね」「迷子じゃないんだ」と歌うこのフレーズも、道に迷いながらも未来へ進む今作のテーマにやさしく寄り添っていた。
『マイ・エレメント』ではSuperflyの『やさしい気持ちで』が、『インサイド・ヘッド2』ではSEKAI NO OWARIの『プレゼント』が起用されていたが、どれも作品のために書き下ろされたわけではないが、映画の世界観にぴったりであった。今後も日本版エンドソングにどんな楽曲が選ばれるかも楽しみだ。
闇でこそ光り輝く
この作品は、どこか人と違うと感じている人のみならず、何かに夢中になったことのある人に、ぜひ見て欲しいと思った。
夜空の星を見て何か想いを馳せるように、夜のマンションに灯る明かりを見ていると、ひとつひとつに誰かの生活があるんだと感じる。
たとえ話したことがない見知らぬ誰かでも、そこに暮らしがあると思うだけで、あたたかな気持ちにもなる。
星の光も、窓の光も、闇があるからこそ輝く。
孤独は消えない。それでも、光の先には何かがあるかもしれない。
この映画は、そんな風に思わせてくれる作品だった。

