soilはなぜ“選ばれる”のか─高価格帯を切り開いたブランドの秘密
冬になり、脱衣所の寒さが気になる季節です。お風呂上がりの足元が湿っているだけで、せっかく温まったのに寒さを感じることも。
そんな日常の小さな不快さを和らげてくれるのが、珪藻土のバスマットです。この分野を代表するsoilは、左官の技術を生かした自然素材のブランドとして知られていますが、なぜここまで広く受け入れられたのでしょうか。
この記事では、soilの儲かる仕組みと個人でも取り入れられる点、私の考えについてまとめました。
自然素材 × 伝統技術 × 手仕事 × 安心

soil は石川県金沢市に拠点を置く生活雑貨ブランドで、大正6年創業の左官会社イスルギから生まれました。珪藻土の吸水・調湿性を生かしたバスマットやコースターを展開し、どんな家にも馴染む控えめなデザインと地元の手仕事が特徴です。
高価格帯の珪藻土バスマットで思い浮かぶ存在へ
珪藻土バスマットは 1,000〜1万円超まで幅広い価格帯があります。市場規模は約300〜500億円、年間100〜150万枚が販売されていると推定されます。そのうち soil の年商は約2.5億円(2019年)数量換算では約2万枚、シェアは1%前後と大きくはありません。
それでもsoilの名前が挙がりやすいのは、数量ではなく「どの価格帯に立ったか」に理由があります。もともと低価格品が中心だったバスマット市場で、soil は早い段階から 1万円前後のプレミアム帯に入り、高品質を求める人が最初に候補とする位置を確保しました。
その後、2020年前後に珪藻土商品の安全性が話題になった際には、国内生産や検査証明を丁寧に示しており、この姿勢が「安心して選べる」という印象を支えたと推測されます。
こうした価格帯の選択と、安全性を示す姿勢が重なり、soilは現在の象徴的な立ち位置を形づくっていったと考えられます。
soilの儲かる仕組みは?

ここからは soil の商品構成をもとにした推測を含む分析です。
①高単価のバスマットが利益の柱
珪藻土の原料費は販売価格の 10〜15%、製造込みの原価率は 30〜40%程度と推測されます。たとえば販売価格 1万円・原価 3,500円 とすると、粗利は 65%。卸を通しても全体で 40〜50%に収まります。ここが soil の大きな収益源です。
②中価格帯と小物が月次の安定をつくる
バスマットの外側には、洗面所グッズやコースターなど 2,000〜5,000円帯の商品が並びます。構造がシンプルな分、原価を抑えやすく粗利も取りやすい層です。
さらに、アロマストーンや消臭ブロックなど 1,500〜3,000円帯の小物は、原価300〜800円(推測)で粗利 60〜70%を確保しやすく、ECとの相性も良いカテゴリーです。ギフトやお試し購入として動きやすいため、毎月の売上を支えています。
soil の安定性は、この 高単価(利益)× 中価格帯(回転)× 小物(入口) の三層構造にあります。
③ 価格が崩れにくい販売チャネル
soil が主に扱うのは、以下の3つです。
自社EC
セレクトショップ
海外EC
いずれも値崩れが起きにくいチャネルで、価格帯とブランドイメージが守られやすい設計です。
1つの素材を複数の用途へ丁寧に翻訳し、価格の階層構造をつくったことが、事業の安定につながっています。
個人が取り入れられる部分とは?
soil のような規模には届かなくても、個人でも応用できる要素がひとつあります。それは
扱うテーマ(素材)をひとつ決め、その価値を一貫して翻訳し続けること。
soil が珪藻土を軸に世界観を築いたように、個人も「自分が扱う専門性・視点」を素材として扱うことができます。
整理する技術
小さなブランドの観察
事例のパターン化
など、自分だけが扱える素材を決める。そして、その素材から生まれる代表作となる形式を持つことで「あの人といえばこの切り口」というイメージが積み上がり、活動がぶれにくくなります。
私はこう思う
最近、窓の結露が気になるので、珪藻土で対策グッズを作れば需要があるのではと思いました。ところが、調べてみると「なのらぼ」など既に商品化されているものがあり、同じ機能だけだと後発は不利になるとわかりました。
そこで、結露を受け止めるだけでなく「見せる楽しさ」を加えてはどうかと考えました。連結すると雪の模様が浮かんだり、小さな家が並んで見えるなど、実用性に遊び心が加わると、既存品に満足していた人でも「外から見える窓に置いてみたい」と感じる可能性があります。さらに、オーダーメイド方式にすれば、特別感が生まれ、適正な価格もつけやすくなります。
もともと左官の世界には、こて絵のように技術を芸術に生かす文化があります。soilのものづくりもその延長にあり、意匠性のある結露対策グッズにはまだ開発の余地があるように思います。
まとめ
soil は素材の良さだけで成長したブランドではありません。どの市場に入り、どの価格帯で価値を伝えるかを決め、その文脈を維持したことが今の位置をつくりました。
私たちが何かをつくるときも、まず素材をひとつ決め、その価値をどう翻訳するかを考えるだけで、進む方向は見えやすくなるのかもしれません。
