オペ看が知っておきたい鎮痛薬(オピオイド)完全ガイド
手術中に使用される鎮痛薬にはさまざまな種類があります。
「麻薬の使い分けってどうやってるの?」
「フェンタニルとレミフェンタニルって何が違うの?」
このように感じたことがある方も多いのではないでしょうか。
このnoteでは、オペ室でよく登場する鎮痛薬を中心に、「なぜこの薬を選ぶのか」がわかるように解説していきます。
紹介する薬剤は次の6つです。
フェンタニル
モルヒネ
レミフェンタニル
ペチジン
ナロキソン
フェンタニル
フェンタニルは、手術中に最も使用される代表的なオピオイド鎮痛薬です。
麻酔というと「眠らせる薬」のイメージがありますが、実際には眠っていても痛みの刺激は体に伝わっています。皮膚切開や開腹などの侵害刺激を受けると、交感神経が活性化し、血圧や心拍数が上昇します。
手術中、突発的に血圧と心拍数が同時に上昇した場合、鎮痛不足により患者さんが痛がっていると考えられます。
フェンタニルは、その痛みの情報を脳へ伝わりにくくすることで、患者さんの生体反応を抑える薬です。
そのため、フェンタニルは強力な鎮痛薬であると同時に、麻酔中の循環動態を安定させるためにも欠かせない薬という側面もあります。
作用発現・持続時間
静脈投与後、1〜3分で鎮痛効果が発現します。
効果発現:約1〜3分
持続時間:約30〜60分
単回投与では効果は比較的短時間ですが、繰り返し投与や持続投与では体内に蓄積し、作用時間が延長します。
この「蓄積する」という性質が、レミフェンタニルとの大きな違いです。
後ほど、この蓄積の特徴をどのように活用するか説明します。
作用機序
フェンタニルはμ(ミュー)オピオイド受容体に作用する薬です。
痛みの刺激は末梢から脊髄を経由し、最終的に脳へ伝えられます。
フェンタニルはこの情報伝達を抑えることで、
痛みを感じにくくする
痛みによる交感神経の興奮を抑える
という作用を発揮します。
なお、フェンタニルには強い鎮痛作用がありますが、手術が実施できるほどの眠らせる作用(催眠作用)はほとんどありません。
そのため実際の麻酔では、
プロポフォール
セボフルラン
デスフルラン
などの鎮静薬と組み合わせて使用されます。
しかし、軽度の鎮静作用や、呼吸抑制作用はありますし、高齢患者の場合これらの作用が強く発現してしまうこともあります。
鎮静をかける前に使われる場合、急激な意識低下や呼吸抑制に注意していきましょう💡
特徴
① 術後まで鎮痛効果を残せる
フェンタニル最大の特徴は、
術後にもある程度鎮痛効果が残ることです。
先ほど触れた「蓄積」という特徴が、術後の鎮痛効果を発揮してくれるんです!
適切な投与タイミングで少量ずつフェンタニルと投与すると、鎮静作用や呼吸抑制作用を最小限に、鎮痛作用のみ効かせることができます。
そのため、手術が閉創に向かいそうなタイミングから少量ずつ複数回に分けて投与することで、フェンタニル投与による急激なバイタル変動を抑えつつ、「目が覚めた瞬間から痛みが強い」という状況を防ぐ目的ことができます!
一方で、効果が残るということは、
術後も呼吸抑制が残る可能性がある
ということでもあります。
なので、術後管理を実施する病棟看護師へ、術後鎮痛のためにフェンタニルを使用している旨を申し送ると、病棟で慌てることが少なくなります。
メリットとデメリットが表裏一体の薬です。
② 血圧や心拍数の上昇を抑える
皮膚切開や開腹などでは、
患者さんは眠っていても痛み刺激を受けています。
鎮痛が不足すると、交感神経が刺激されて
血圧上昇
頻脈
などが起こります。
術中、突発的に血圧と心拍数が同時に上昇した場合、鎮痛不足を疑うことができますね。
フェンタニルは、この侵害刺激による生体反応を抑えるため、麻酔中の循環管理に重要な役割を担っています。
③ 胸郭筋硬直に注意
フェンタニルを急速・大量に投与すると、
胸や腹部の筋肉が硬くなり、人工呼吸がしづらくなる胸郭筋硬直(Chest wall rigidity)が起こることがあります。
麻酔導入前に筋硬直が起きた場合、胸腹壁の硬直が強く、換気困難になる場合があります。
解除するためには筋弛緩薬の投与が有効です。
頻度は高くありませんが、麻酔導入時には知っておきたい副作用の一つです。
④ すでに日常的にオピオイド性鎮痛薬を使用している患者には効かない
がん性疼痛などに対し、日常的にオピオイドを使用している患者さんもたまにいますよね。
こうした患者さんには、フェンタニルを含むオピオイド性鎮痛薬は効きません。
日常的に使っているため、体にオピオイドへの耐性ができてしまうからです。
そのため、術後の鎮痛は非常に注意が必要です。
こうした患者さんは、オピオイドはもちろん、アセトアミノフェン、NSAIDsなどあらゆる鎮痛薬はほぼ効かないと思っていいかと思います。
ではどうするか?
この場合、有効な手段は神経ブロックとなります。
神経に直接局所麻酔薬を浸潤させることで、鎮痛を図ることが可能です。
しかし、こちらも普段より効きが悪くなるため、局所麻酔薬の極量ギリギリまで使用することもあります。
極量まで使用した場合、局麻中毒のリスクが跳ね上がるため注意しましょう。
もし局麻中毒について勉強しておきたい方は、ぜひ下記のnoteもご確認ください!
観察ポイント
① 呼吸状態
フェンタニルは用量依存性に呼吸を抑制します。
オペ看に最も見てほしいのは、
呼吸数減少、または停止はしていないかです。
フェンタニルは挿管前・術後に一番使用されます。
術中はどうするんだ!という疑問は後ほど解説します。
挿管前にはなぜフェンタニルが投与されるのでしょうか?
答えは、『挿管による痛み刺激を抑えるため』です。
あまり知られていませんが、挿管刺激による痛みのレベルは手術全体の中でもトップクラスです!
お腹を切るより挿管の方が痛みが強いと言われています。
そのため、挿管時に強烈な痛み刺激が加わり
バイタルが急激に変動する可能性があります。
この痛み刺激を抑えるために、術前にフェンタニルを投与します。
術後の投与は、先ほど説明した「蓄積」を利用した術後の痛み止めです。
たまに鎮静作用や呼吸抑制作用が残ったままになります。
術後、筋弛緩薬を拮抗しても起きてこない or 起きても自発呼吸が戻らなく意識がドロドロなんてことはありませんか?
これは大抵、フェンタニルを盛りすぎてガンギマリしている状態です。
この場合、盛りすぎたフェンタニルが抜けるまで時間がかかるため、拮抗薬を使用することになります。
拮抗薬についても、後ほど説明します。
② 投与タイミング
フェンタニルは効き始めるまで数分かかるため、多くの場合刺激が始まる少し前に投与されます。
例えば、
気管挿管前
骨切り前
など痛み刺激が強いタイミングです
特に心疾患をもつ患者さんでは、
急激な循環動体の変動を避けたくなります。
「なぜ今投与したのか」
を考えながら手術を見ると、
麻酔科医の意図が理解できるようになります
オペ看ポイント💡
フェンタニルは蓄積する薬であるというのを絶対に覚えてください。
麻酔終了が近づくと、麻酔科医は
「術後の痛みをフェンタニルでカバーするにはどの程度の量・タイミングが良いか」
を考えながら投与しています。
術後鎮痛を重視すれば投与量は増えますが、
一方で呼吸抑制のリスクも高くなります。
フェンタニルは、
「鎮痛」と「安全性」のバランスが重要な薬です。
経験豊富な麻酔科医は、
術後の鎮痛をフェンタニルのみで済ませます。
これができれば、病棟で痛みが出現した際、
アセリオの投与が選択できます。
しかし、もし手術室でアセリオを使っていると、
病棟ではアセリオ以外の選択肢しかなくなります。
この選択肢を残すことが、麻酔科医の腕が光るポイントです。
しかし、呼吸抑制は常に念頭におくべきなので、
合わせて病棟看護師に申し送りをすることで、
継続した看護の実践ができますね!
レミフェンタニル
現在の全身麻酔では最も使用頻度の高いオピオイドの一つであり、術中鎮痛の主役ともいえる薬剤です。
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