栄養療法への挑戦とミスマッチ【食べられなくなっていく日々④】
前回の記事で書いた通り
我が家の食卓はいつの間にか
私にとっては
無力感を突きつけられる場所に
息子にとっては
無理を強いられる場所へと変わっていた。
「何か栄養を入れなければ」
そんな焦りに突き動かされ
必死に調べ始めた。
その過程で出会ったのが
精神科医・藤川徳美先生の著書たちだ。
はじめに手にしたのが
『食事でよくなる! 子供の発達障害 (たんぱく質と鉄分の不足が子供を蝕む)』
ASDの診断が出たばかりで
投薬もなく、支援にもつながらず、
診断がついただけで
何も変わらなかった現実に
焦っていた私には
このタイトルが救いのように思えた。
食事でよくなるのなら
私にもできる!!
やるしかない!!
そんな使命感のようなものに駆られていた。
その後も
『誰でもわかる図解版すべての不調は自分で治せる』
『うつ消しごはんタンパク質と鉄をたっぷり摂れば心と体はみるみる軽くなる!』
と立て続けに読み込み
付箋をつけまくった。
当時、診断こそついていなかったけれど
息子の様子は「うつ」のように見えた。
朝も夜も塞ぎ込み、
気力が削がれていく彼を見て
何か手立てはないのかと必死だった。
脳の栄養不足(特にタンパク質と鉄)が
不調の原因かもしれないという可能性は
迷える私にとって希望そのものだった。
本を読み進めるたび
これを変えれば
息子は変われるかもしれない
とのめり込んでいった。
けれど、現実は甘くなかった。
本に書かれている「推奨量」が
あまりに大量で
朝から夕方まで
何も口にしない息子にとっては
遠い数字だった。
推奨量の半分も摂れていない。
こんな量で
本当に効果なんてあるんだろうか…
そんな焦りと絶望感が
常に頭から離れなかった。
それでも
「何もしないよりはマシかもしれない」
と、すがるような思いで
サプリやプロテインを勧め続けた。
いつの間にか私は
栄養管理に固執する
口うるさくて面倒くさいおばはん
になり果てていた。
崩壊の夜
そんなある日
育ち盛りなのに食事ができず、
サプリやプロテインを出せば
怪訝な顔をして逃れようとする彼を見て
焦りと悲しみが爆発してしまった。
「サプリだけでも飲んで!!!!」
私が声を荒らげた時
彼は涙目で
ただうなだれて言った。
「飲めない。無理だよ…」
その言葉と疲れきった顔を見て
ハッとした。
彼が一番欲しているのは
「栄養」という物質ではなく
自分の感覚を脅かされない
「安心」なのかもしれない。
私が良かれと思って注ぎ込んだ
知識と執念は
皮肉にも彼を追い詰めてしまっていた。
私は、ようやく
自分のやり方が息子に
フィットしていないことに気づき始めた。
迷路の出口を探して
藤川先生の栄養療法を
否定するつもりはない。
口にするものを変えていくことで
メンタルを含めた
いろんな不調を改善することは
あると思う。
けれど、我が家の問題は
「栄養を整えれば、すべてが好転する」
という単純な方程式では解けなかった。
というより
すがる思いで始めたものの
方程式通りに整えられるほど
栄養を摂取することすらできなかったのだ。
彼は単なる「偏食」ではない。
「気持ち悪くなる」
という身体感覚への恐怖。
食べている最中に襲ってくる
窒息感や吐き気。
そうした感覚過敏が
彼の食生活を
ここまで制限していたのだとしたら……
そうして私は
栄養学の本から少しずつ目を離し
息子本人を
真っ直ぐに見つめ直すことになった。
ただ、学んだ栄養学は
決して無駄にはならなかった。
一日にとれる食事はわずか1.5食。
その中にできるだけ
タンパク質と鉄分を盛り込む。
夕方のおやつタイムの最初に
プロテインを出す。
おやつに
チーズや焼きかまぼこを選ぶなど
息子に合わせた形で
その工夫は今も続いている。
そして栄養という方向からは
解決できなかった
「食べられない」という迷路を
私はメンタルクリニックへ
持ち込むことにした。
⑤:専門医による診断と
私が選んだ「具体的な対応策」へ続く
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