ヴァシュロン・コンスタンタンのヒストリーク222など
ラグジュアリー・スポーツ・ウォッチというジャンルを開拓したのは、ジェラルド・ジェンタ氏がデザインを手がけたオーデマ・ピゲのロイヤル・オークにはじまることは常識でしょうけど、

フランク・ミュラーが人気を集め、デカ厚ブームの火付け役となったパネライに注目が集まっていた2000年代前半ならば、50万円前後で買えたものです
ラグスポのもう一方の雄であるパテック・フィリップのノーチラスはさすがにもう少し高かったものの、
90万円代のプライスで、1996年に初代モデルが発表されたヴァシュロン・コンスタンタンのオーバーシーズも50万円代で手に入りました
1985年に製造が終了したヴァシュロンの222は2000年代には中古でしか入手できなかったものの、それでもおよそ70万円代から90万円代で取り引きされていた時代です
2005年にウブロがビックバンを発表して以降、ロイヤル・オークのオフショアと共に人気が高まっていくもデカ厚ブームは変わらずで、薄くて小さめなラグスポ時計の存在はずーっと地味なまま…
当時からロレックスはスポーツモデルを中心に、中でも特にデイトナは一段高く人気でしたけど、本来あそこは高級実用時計なので、どれも無骨な雰囲気があり、特にベルトは安っぽい感じが残ってました
そんなロレックスには無い、エレガントで派手なデザインの限定モデルを次々と投入していたフランク・ミュラーやウブロ、ロイヤル・オークのオフショアは、新たなスポーツウォッチ(遊び時計と言ってもいいとも思いますけど)の選択肢として人気だった印象を受けてました
やがてデカ厚ブームが飽きられマーケットの嗜好に変化が見え始めた2020年を境に、ロイヤル・オークやノーチラスの販売実勢価格の高騰が止まらなくなってしまい今に至るも、1970年代の発表当時からのヘリテージを守ってきたピゲやパテックとはそもそも異なる位置にあったオーバーシーズは浮上せず…
現行モデルで変更されますが、それ以前は「ラグスポとはこういうもの」という定義をつくったジェラルド・ジェンタ氏が得意としたオクタゴン(八角形)を明らかに意識していました
「確かにいい時計」だけどあまりクリエイティブじゃないという評価だったんじゃないかと個人的には感じます
世界的な好景気に乗ってラグスポ時計に多くの需要が求められていくものの、実用時計のロレックスじゃないんだから生産数は増やせずで、故に希少性という「役」が付き、人気が人気を呼んで他社も同じテイストのモデルをリリースしていきます
ラグスポといえば青文字盤ということになり、「寄せてきたよなー」と感じたのがジラール・ペルゴのこれや

ピアジェのこれとか、

或いは流れに続けとばかりのショパールのアルパイン・イーグルでした

先に触れた「三大ブランド」には格が及ばないので値段も「比較すれば」安く設定されていて戦略的だなぁと見てましたけど、工芸品クラスのブランドには変わりないので、「流行りには乗るけど、皆が欲しがるアレを今更手に入れましたはちぃとダサいやろ」という価値観の人たちにも人気です
自分ならば、ヴィンテージ・デニムにサラッと合わせたカリフォルニアのお金持ちの人のポートレートがカッコよかったので、アルパイン・イーグルが良さげに感じますけど、どれを選んだとしても好みの問題ですね
三大ブランドと同格と見做されるドイツのランゲ&ゾーネもオデュッセウスを発表して乗ってきましたけど、そもそも実物がほとんど出回ってないようでよいものなのかどうか判断できません

ただ、個人的にはランゲのスポーツ時計ならばこれに尽きると思うので、

別にやらなくてもよかったのにと感じたりします
同様にヒストリックな背景があるが故の存在意義で人気となったパネライがコレをやるのはブランドとして軽過ぎるようにも思えます

たとえラグスポの定義には当てはまらなくても、こっちの方が潔いんじゃないかなとなるんです…

ちょっと面白く感じるのがブレゲで、スイスの時計メーカーに合併再編成が生じた結果、1999年に生まれた巨大コングロマリットであるスウォッチ・グループの中で三大ブランドに見合う格を持つべきブランドとして育てられ、フランス革命の前後に活躍したアブラハム=ルイ・ブレゲの名前を引き継ぎながらも、決して順調には継続してこなかった歴史を逆手にとって、ようやく最高峰の時計としての完成形に辿り着いたような感のあるモデルが今のカタログには多数ラインナップされており、

ジェンタなんぞいう「馬の骨」など知らぬとばかりの個性を放つこのモデルはとてもユニークです
ヴァシュロンの222がロイヤル・オークやノーチラスほどには評価されてこなかったのは、ジェンタ氏ではなくヨルグ・イセックという天才肌の時計師が手がけたために、ラグスポの定義には合致しない一風変わった雰囲気があったからでは?とも感じてきましたが、ラグスポ人気が継続してこれだけいろいろ出てくるとそれが逆に新鮮に見えるということなのだろうということで、ちょっとした騒ぎになっているのは当然とも感じます
https://www.vacheron-constantin.com/jp/ja/collections/historiques/4200h-222a-b934.html


ヘリテージを感じさせること、言い換えればややレトロ調の雰囲気が大切とされるラグスポ感は、比べてみると明らかに222の方に残っているし、故に単なる「良い時計」に終わらない
いいんじゃないかなとも、そりゃうけるよねとも思います
ミドルクラスからボトムクラスまでラグスポ風の時計が花盛りですけど、王冠ロゴの無いこちらはかつての兄上のヘリテージを継承してもいて、店頭に正規価格で置いてあるならばチューダー一択と感じさせられます

でも、やはりあくまで好みの問題ですが
1970年代にジェラルド・ジェンタ氏がつくった三つの名作スポーツウォッチとして数えられるIWCのインジュニアは、対磁機能を備えた実用時計なのでラグスポではないものの、デザインは残る二つの三大ブランドのラグスポ時計に劣らぬ出来でマニアックな人気はずっとありました
何度かのモデルチェンジを経ての現行モデルは高級感を高めていますが、個人的には1970年代当時のシンプルで素っ気ない雰囲気が欲しかった…
https://www.iwc.com/jp/ja/watch-collections/ingenieur/iw328907-ingenieur-automatic-40.html


ラグスポもいずれは幾つかを残して廃盤になるだろう流行り物なんだからと自分が選んだのは

コレで
所詮は安物ですけど、しっかりつくってあってヘリテージを上手くアップデートしたものだから、十分じゃないかなぁとした次第
(ただティソは甘く見てはいけないブランドですけど)
以前の投稿にも書きましたが、パテック・フィリップのキュビタスはスポーツウォッチの範疇から片足出ているような高貴さが伝わるとともに、今のブームの先を見越した「ならでは」の思想性を感じさせられるものの、

現行モデルにラインナップされているこちらは今の流れにジャストで合っているので、買えるならば(ただ買えるカネがあればいいというブランドではないですけど)入手しておきたい、何方にでもお薦めできる候補の筆頭だろうと自分は考えます

ただし、時代の先を見るならばオーデマ・ピゲの新作が1960年代のヘリテージモデルで、これを選択するのは大いにアリやろとも感じてしまいました

他では絶対に見ないカタチで、ややレトロな雰囲気を感じさせられて、試しにつけてみたいと思わせてくれました
自分の記憶の中では、ピゲはこんな感じの時計屋さんだったということもあります
雑誌やらのランキングを見ていてもなかなか面白いです
例えばリシャール・ミルはおそらくジャンルが違うはずですけど、それでもラグスポに含めるか否かと考えたりするのは楽しい
他人様のコレクションを見ていて、個人的にセンスの良さを感じさせられたのは、この二本を揃えていた方でした


PS
くろのぴーす氏も言われてましたが、何百万円もする時計を自慢気に見せびらかしていたならば、危うい時代と認識しておくべきかとは思われます
