短編小説 それは浮気じゃない?
ちょっと散歩に出かけようとした時だった。
「あら、お出かけ?」
三軒どなりのネネさんが声をかけてきた。
「ちょっと、散歩でもと思って・・・」
のどかな日差しがふたりを包む。
なんとなく、立ち話のような雰囲気になってしまった。
「聞いてよ。うちの人。なんだか私のこと
ほったらかしてテレビばかりみてるのよ。
それじゃなきゃ、スマホでゲーム。
わたしのことなんて、どうでもいいみたい。
もうイヤになっちゃう」
「うちだって、似たようなものよ。みんなそんなもんでしょ?」
すこしぬるめの声で投げやりに答えてみた。
「だって~。昔はもっとちゃんと向き合ってくれていたのに。
これって、好きなコが出来たとか?」
「まさか?だってネネさんはいいとこの出だし。身だしなみにも
気を使っていて。なんといっても美人さんでしょ?」
本当はもう散歩に出かけたいので、思い切りネネさんのことを
持ち上げてみた。
この手の話は苦手なので、解放されたくて仕方がない。
でも、ご近所づきあいは
大事なのでジレンマであごの下がかゆい。
「なんでそう思うの?」
「だって、かわいい子が出てくる動画をずっと見ていて
目がハートになってるし。まったく、腹立たしいったらないじゃない。
私というものがありながら」
(あ~、意外とねっとりタイプか?
そんなのほっておけばいいのに)
「気持ちはわかるけど、ここは楽観視でいいんじゃない?」
「らっかんし?なにそれ?」
「まあ、なるようになるってことかな。そろそろ、いかなくちゃ!」
「あっ!ごめんなさい。引き止めちゃって」
ネネさんからうまく逃れられ、太陽に守られながら歩みを進めた。
進めながら、考えた。
わたしたちはネコなのだ。うちの人と結婚しているわけでも
契約をかわしているわけでもない。
永遠の愛なんて誓った覚えはない。
うちの人が別のネコの画像を愛でても気にならない、
いや、仕方がない。
それは浮気ではないと思う。いや、浮気か?よくわからない。
でも現に、うちの人はネコものをイヤとほど買ってくる。
例えば、こっちをバーンとみつめて挑発しているような
リアル猫のバッグとか、Tシャツとか。
正直に言えば、心中穏やかではないことは確かだ。
安全地帯であるこの家が自分以外のネコで
あふれているのだから、おちおち昼寝もできない。
でも、ネネさんのようにいちいち、うちの人の
やることに腹を立てていては身がもたないこともわかっている。
だって、うちの人は勝手気ままなな「人」なんだから。
わたしのことを勝手気ままっていつも言うけど、
そのままその言葉をお返ししたい。
だから、わたしは勝手気ままに自分を守る、プライドを守る。
こうして、自由にお散歩もできるし、雨風しのげる家もある。
美味しいご飯もある。清潔なトイレだってある。
浮気上等。でも、私のざぷとんの座は渡さない・・・。
そう考えてみたものの・・・。
ネネさんの気持ちもやっぱり少しはわかる気がした。
ネコにだって、性格みたいなものがある。
さっぱりタイプとねっとりタイプ。
わたしはさっぱり、ネネさんはねっとり。
うちの人はさっぱりタイプを選んだから平和なのかもしれない。
そのうち、ネネさんはひっかき攻撃にでるかもしれない。
その前にネネさんに「人」とやらの性格も
伝えておいたほうがいいかもしれない。
わかってくれないかもしれないが、みんなの平和のために。
完
~お読みいただきありがとうございました~
気まぐれ短編小説です。
今月はネコの日もある月なので、ネコ。
(と言っても、いつもネコの私なんですが)
街の中にネコものが溢れかえっている気がします。
ネコって今の状況をどう思っているのでしょう?
聞いてみたい気がします。
犬はいろいろな犬種がいるので飼い主さんは
自分の犬以外の犬種には
あまり興味がないと雑誌に書いてありました。
ネコはそんなに種の違いがはっきりしていないで
みんなネコものに惹かれるのでしょうか。
バレンタインのチョコにもネコデザインが多いですね。
ともあれ、猫も犬も他の動物も幸せな世であって
欲しいと思います。もちろん、人にも。
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