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掌編小説 「ギターを弾く女」

「いつものを」
行きつけのバーでそう呟くと、カウンターにゆっくりと腰をおろした。
とっぷりと日が陰り、少し冷え込んできたようだった。

 角ばった重みのあるグラスに琥珀色がよく似合う。私はおちゃらけた気分に蓋をしてダンディさを前面にだしてみる。

 ふと、視線をボックス席に移すと髪の長い女がギターを抱えてうつろな瞳でテーブルを見つめている。
 この世の終わりかと思うようなそんな雰囲気を纏い、考え込んでいるようだった。

・・・何か弾くのだろうか・・・

 すると、郷愁を帯びたメロディーがその女の指先から奏でられてきた。心のひだにしみいるような、音色。

 ・・・ええっと・・・

 バーテンが私の記憶を呼び覚ますように、低い声でつぶやいた。
 「彼女の、禁じられた遊び、いいんですよね・・・」

 そうか、禁じられた遊び。
 はるか昔、ギターを習い始めた時に、まだ生まれてもいない頃の曲を覚えさせられた。きっと、ギターを弾くのには必要なものが詰まっていたのだろう。
 女のうつむき加減の顔と弦を抑える指がやけに目に染みる。

・・・彼女だって、知るはずのない曲だろうに・・・

 世界の不幸をすべて背負っているような、そんな女の弾く「禁じられた遊び」は今宵の私のつまみには最高だった。

 ギターを弾く女、そのミステリアスでメランコリーな雰囲気はどこからくるのだろうか?
グラスを傾けカランと動いた氷に、ふと、問いかけてみたりした。

 昔の郷愁と共に、女の儚げな面影が胸の底に冷えたお酒と共に沈んで行く、静かな夜だった。

 


AIイラスト カウンターの位置が違う・・・


今回のアマノ文筆クラブのお題は
「ギターを弾く女」でした。
少し大人びて書いてみました・・・
いかがでしょうか?(猫は出てきません・・・)


#アマノ文筆クラブ
#ギターを弾く女


~お読みいただきありがとうございました~

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