【小説】Runners(夫編⑤)
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Runners(夫編⑤)
2024年8月23日9:30
いよいよ草田温泉周遊マラソン大会の本番が明日に迫った。
今日は、少しゆっくり起きて、軽めのジョグで調整し、帰宅。
それにしても暑い。走る前から汗をかいている。このくらいの時間帯でも日が照りつける。
山の中で避暑地とはいえ、熱中症には気をつけねば。ふくらはぎに筋肉痛。少しずつではあるが足が慣れてきた感じがする。
昨日ははじめて約10キロを最後まで走り続けた。やはり7キロ〜8キロあたりで苦しくなる。ペースは落とさざるを得ないが、歩きとさほど変わらないゆっくりなペースで一応10キロを走り切った。
マラソンでも「30kmの壁」というものがあるらしい。42.195kmのなかで、このくらいの距離を超えると辛くなってくるそうだ。まあ、自分は、フルマラソンを走るわけじゃなくて10kmでしかないけど。
マラソン大会に出ようと思ってから、ここまでほぼ毎日、外かジムでの練習を続けることができた。とりあえず、当初懸念していたジムにただ募金をするだけの状態にはならなかったのでまあ上出来だろう。
毎日継続することは、1ヶ月を超えたあたりから慣れてくるようになった。「続ける」と言う意味においては30日も経つと慣れてくる。しかし、慣れた先にも壁があるようだ。「続ける」意味を考えるようになった。今までは、目標の日付に向かって続けることそれ自体を目的にしていた。始めるときは、深く考えずにそれでも全然いいのではないかと思う。ただ繰り返し続けていく中で、何も考えずに毎日続けるべきなのかどうかということを考えるようになった。大会が終わった後、一番ベストな「続け方」はどんな感じだろう、そんなことを考えるようになった。
と、考えるのはいいが、本番は明日である。まずは、明日に集中しなければ。
本番は山の中だけあってアップダウンの激しいコースだ。そもそも、今の状態だとゴールできるのか非常に怪しい。
「あなたには、センスもなにもないんだからがんばるしかないでしょ」
妻は、自分がマラソン大会に出ると知ってから、思ったほど驚いた様子もなかった。素直に励ましてくれた。確かに、自分にはセンスすらない。あとは気合で頑張るしかない。
そろそろ、炭水化物をもりもり食べたい。終わったら何食べようかな。
*
noteには、いろいろな記事がある。noteを書いているクリエイターにはkindle出版をする方も結構いるらしい。
先日、ランニングの続け方についてkindle出版をされているリャウコさんというクリエイターのランニング習慣のつくりかたという本を発見した。正直もっと早く気がつけばよかった(笑)。
また、noteには、本当にいろいろな職業の人がいる。この前は、医師の高草木陽介さんというクリエイターが、「論文書け!って言われても・・・若手医師のための医学英語論文の書き方」をnoteに公開していた。26日にはkindle出版されるとのことだ。noteでは、リアルタイムで出版がされていく。毎日更新していった記事が、まとめられてkindleで書籍化される。すごい時代になったもんだ。
リャウコさんも高草木さんも66日ライランに挑戦しているようだ。
66日ライランといえば、先日、はじめてコメントをした記事のアカウント名はキョロロちゃんという名前だった。私の名前がケンシロウなので、北斗というアカウント名で登録している。先日、自分のはじめてのコメントがキョロロちゃんの記事で紹介されていることがわかった。
旦那さんと仲直りができたようだ。よかった。
自分の書いたコメントがその人の記事で紹介されるというのは、不思議な気分だ。ちょっとうれしいけど恥ずかしい。やっぱり自分は、自分で記事を書くほど器用ではない。かといって、せっかく紹介してもらったのに、無視するのも忍びない。どうしよう。何か気の利いたことが書ければいいのだけれど、自分にはそんなことできない。とりあえず、御礼だけでも言っておかないと。
*
LOUIS VUITTONの緑色のノートを開き、今日の走行距離とタイムを書き込む。
ファッションブランドであるLOUIS VUITTONのノートがあるなんて始めて知った。そもそも、自分にはブランド品を買ったり身につける嗜好すらない。
先週の誕生日に妻からプレゼントされたノートだ—
8月17日の誕生日の夜、妻は「絶対自分じゃ買わないでしょ」と言った。
確かに普通ノートは数百円で購入するものだと思う。そんな自分がLOUIS VUITTONのノートを自分で買うことは絶対にない。
「あなたがマラソンシューズにしたから、私はノートにしたの」そう言って妻は微笑んでいた。
「なんか書いてみてよ」
試し履きならぬ試し書き。私は、ちょっと考えて、ノートの扉1頁目に私が私なりに大切している言葉を書いてみた。
それを横からのぞき込んだ妻は爆笑した。そんなに笑わなくてもいいのに。
「あーよかったぁ」
「そういえばさあ、noteってSNS知ってる?」
私は最近知ったばかりの情報と結びつけて話題にしてみる。
「note?知ってるよ。長めの文章が多いSNSでしょ。この前、noteがきっかけでデビューした人の小説読んだよ。」
妻は、いまさら聞くの?といった顔をする。そっか、知ってたんだ。やっぱりだいぶ広まってるのかな。妻はもともと本を読むのが好きだし、嗜好と合っているのかも知れない。
それにしても、このノートは書き心地がよい。
この日以来、2頁目以降にランニングの走行距離とタイムを記録することにした。もう、6日分くらいの記録になる。大事に使おうと思う。
2024年8月24日8:30
温泉郷に到着。
スタート地点の周りは、芝生のなだらかな丘陵地になっている。
大会会場周辺では、キッチンカーや屋台が並び、もう提供の準備を始めている。帰ってきたときにちょうど食べられるように準備をしているのかもしれない。
ちょっとしたお祭りのような雰囲気。しかし、やはり緊張感はある。
お祭りと違うのは、スポーツウェアの様相で各々ストレッチや自主トレをする人々がたくさんいること。みなそれぞれのルーティーンを持っているのだろう。まるで某少年マンガの試験前のハンターたちの集まりのようだ。
地元のゆるキャラが芝生の丘陵地の上のほうに見える。
「あ!なんかいる!」
ゆるキャラを見つけた長女と長男がテンションを上げている。子どもはこういうのが好きだ。今いけとばかりに、子どもたちはすぐさまそっちの方へ向かっていく。
長女と長男が走り出す。
そして、マラソンシューズを履いた妻がそれを追いかける。
さて、私もそろそろスタートの準備をしよう。
*
スタート地点へ。ハンターたち、いや、ランナーたちがおもむろに各々の立ち位置を決めていく。
果たしてゴールまで無事にたどり着けるのだろうか。
しかし、もう後は、自分を信じて進むしかない。
走るのは一人だが、本当に一人で走っているわけではない。丘陵地の真ん中あたりで妻と長女と長男がワクワクしたような目でこちらを望んでいるのが見える。きっと、今周りにいる猛者にしか見えないランナーたちも、周りで支えてくれる人々がいるはずだ。
今行くしかない。
今いけ。
きっと大丈夫。
ふと一瞬、ざわざわした様相が消え、時が止まったような感覚になる。
その瞬間。
スターターピストルがこだまする。
そして、私は走り出す。
(つづく)
※登場人物のスタート時刻に合わせ、8:30からの投稿にしました。
次回は、いよいよ最終回、8月31日(土)6:30(妻編⑤)の予定です。
キョロロちゃんは最後にどんなnoteを書くのか??
ラストに衝撃の事実が・・・!?(ちょっとあおりぎみ)
SPECIAL THANKS
リャウコさん(今回のテーマにぴったりのkindle本でした!)
高草木陽介さん(kindle出版楽しみです!)
イトーダーキさん(ステキな記事でした!)
(参考)
https://jp.louisvuitton.com/jpn-jp/art-of-living/library/office-and-writing/_/N-tmmwrir
