人生ゆるく右肩上がり
正直に言うとわたしはずっと、なんとなく過ごしてきた。
考えるより先に動くタイプなのだが、ここまで勢いや気合で来た感じがする。気づいたら、定年とか年金という言葉がやけにリアルに聞こえる年齢になっていた。
ファイナンシャルプランナーの資格を持っている。なんでそんな資格を、と思うかもしれないけど、自分でも「なんでだろう」と思うことがある。ただ、その知識があるからといって老後の不安がゼロになるかというと、全然そんなことはない。むしろ「知れば知るほど、考えなきゃな、と思うことが増える」というのが正直なところだ。お金のことを人に伝える立場にいながら、自分自身がまだ当事者として迷っている。そのへんの矛盾も含めて、ここに書いていこうと思っている。
いまこの年齢になって、ふと「林住期」という言葉を知った。
インドの古い考え方らしい。人生を四つの時期に分けて、子育てや仕事でバタバタしてた時期が終わったあとに来る季節のことをそう呼ぶんだそうだ。年齢にすると50歳から75歳くらいまでで森に入って、静かに自分と向き合う時間ということだそうだ。現代に置き換えるとやらなきゃいけないこと、やるべきことが終わって、初めて「自分はどうしたいか」だけを考えていい時期、ということらしい。
「白秋」という言い方もあって、人生を春夏秋冬にたとえると秋にあたるらしい。年齢にすると60歳からで実りの秋、勢いじゃなくて、積み重ねてきたものが色づいていく時間。
なんだ、悪くないじゃないか、と思った。
また、こんな考え方に出会った。
「80歳が人生のピークだ」というものだ。
最初は「はあ?」と思った。80歳といえば身体はガタガタ、頭も怪しくなってるのに、ピークって何だよ、って。
でも読んでみたら、体力とか収入とかそういう話じゃなかった。
そこにはこんな言葉があった。「60歳までが修行で、それからが本当の人生」。名誉とか肩書きとか、勝ち組・負け組とか、そういうものに振り回されながら60歳を迎えると「終わった」という感覚が出てしまう。でも本当はそこからが本番で、それまで積み上げてきたものを使っていく時が来た、ということだ。
そして年を重ねるほど、余分なものが削ぎ落とされて、見栄とか、焦りとか、他人の目とか。そういうのが少しずつどうでもよくなって、本当に大事なものだけが手元に残っていく。その「自分らしく生きることの完成度」みたいなものを、80歳あたりでピークに持っていくように生きるのが良いんではないか、という話だった。
修行ということなら本番はこれからだ。
なるほどな、と思った。そういうピークなら、目指せるかもしれない。なんせひょっとしたら100歳まで生きちゃうかもしれない時代なんだから。それだったら80歳でピークを迎えてもそれからまだ20年もある。たいへんだ!
でもじゃあ、80歳をいい感じのピークにするには何が要るんだろう、とぼんやり考えてみた。
お金のこと。いくら持っているかだけじゃなくて、どう使うか、どんな制度が使えるかを知っているかどうかで、だいぶ違ってくるらしい。
人とのつながり。家族、友人、それから困ったときに頼れる人。正直、ここが一番難しいし、一番大事な気もしている。
健康。体だけじゃなくて、好奇心とか、笑える気持ちとか、そういうのも込みで。
制度とか法律とか。難しそうで後回しにしてきたやつ。でも知っているだけで選択肢が増えることが結構あるらしい。
これまで生きてきた中で身についた、うまく言葉にできないけれどたしかにある力。それを「なんとか力」と呼ぶとすれば、60歳からはその「なんとか力」を使っていく番だと思っている。
この場所に書いていくのは、そういう話だ。
FPとして「正しいことを教えてあげる」つもりは全然ない。自分自身がまだ迷いながら考えている当事者として、「これ知っといてよかった」と思ったこと、「もっと早く知りたかったな」と感じたこと、そしてまだ答えが出ていないことを、ぼちぼち書いていこうと思っている。
難しい言葉は使わない。答えが出ないことも、正直に書く。
準備が整っている人も、全然整っていない人も、どっちも歓迎だ。
どこかで「あ、自分もそれ」と思ってもらえたら、それで十分だ。
