中日新聞 2025年3月24日号「MONDAY経済」に“ガーデンツーリズム”の可能性についてコメントを寄せています。
■三重県の日本庭園を繋ぐ「伊勢國お庭街道」が国土交通省「ガーデンツーリズム」に登録。
この話題に関連し、「おにわさん」担当者が中日新聞2025年3月24日号 3面「MONDAY経済」の中で「ガーデンツーリズム」に関するコメントを寄せさせていただきました。(目隠し部分の中でもコメントしてます)

ちなみに三重県の7庭園は以下の通り。
近代建築/モダン建築ファンなら必見のジョサイア・コンドル建築(の日本庭園)『六華苑』から、京都ファンにこそ見て欲しい重森三玲の『横山氏庭園』(菰野横山邸園)、そしてキムタクこと木村拓哉さんがインスタにアップしていた国宝『専修寺』の通常非公開の庭園まで!
①六華苑(桑名市)/②横山氏庭園(菰野横山邸園)(菰野町)/③伊奈冨神社(鈴鹿市)/④高田本山 専修寺「雲幽園」(津市)/⑤北畠氏館跡庭園(津市美杉町)/⑥旧長谷川治郎兵衛家(松阪市)/⑦玄甲舎(玉城町)
通称「ジャパン・ガーデンツーリズム」の昨年の全国会議では「おにわさん」担当者がゲスト講演を担当させていただきました。
■どうやって、京都以外の日本庭園/Japanese Gardenにも興味を持ってもらうか~ガーデンツーリズムの可能性
取材や講義でお話したことと若干かぶる点はあるかもしれないけど、この話題に関連することを書きたいと思います。
▼『芸術としての庭園を鑑賞する』なら、日本全国、そして世界に素晴らしい日本庭園は広がっている
少し主観的なことで言うと。まず、中の人の場合、『京都』よりも先に『庭園』という空間に興味を持った。
そしてやがて《同じものは存在しない素材、「樹木」「石」や水を組み合わせ、人の手で創作された芸術作品》だと感じるようになった。
だから《まだ見ぬ作品》との出会いが面白く、日本全国の庭園を巡ってきました。本当に「これすごいな!」って庭園が日本各地にあるんですよね。
でも現状、『日本庭園鑑賞』として選ばれる地域は、京都に偏っている。
その理由の分析はさておき――あと京都のオーバーツーリズムの話は後述として――『庭園という芸術の鑑賞』という行為を深めるのであれば、やはり「日本、いや世界各地の庭園を見た方が楽しい」と思うんですよね。
本音で言えば、「京都がオーバーツーリズムだから他府県に」とかでは別になくて、「そもそも、他府県にも興味を広げた方が楽しい」という発想。
平成年代に先んじてそれをしたのは、日本人ではなく外国人の方々による『日本庭園ランキング:しおさいプロジェクト』でした。
なぜそれを日本人自身が出来なかったのか?はいつか評論されるべきテーマかもしれません。(その中の一つとして「順位付けをしない美学」も含まれるので一概にネガティブな事とは言えませんが。順位を付けたがるのは無粋だとは私も思うので、「おにわさん」ではそれを避ける形での発信を続けてきています)
※ちなみに海外の日本庭園に関するウェブサイトは東京農大の関係者の方々が運営する下記のサイトがあります。
※日本国外の日本庭園でも『Portland Japanese Gardens』は日本国内の日本庭園以上に日本庭園業界から「評価を得ている」ことは、業界の方以外はあまり知られていないことかもしれません。
▼様々な社会課題:地方から様々なものが維持できなくなっていく、インフラが維持できなければ文化も維持できない
その一方で様々な社会課題は喫緊の問題。過疎、高齢化、跡継ぎ不足…。これまでも「消失した文化財級の庭園」のようなエントリは書いたので改めて詳しくは書きませんが、すでに「歴史的な日本庭園」が維持できないフェーズとなっています。
これは今後も地方からどんどん、どんどん進行していくでしょう。人口が半数に減るのだから、それは逃れられない。その中で――歴史遺産・芸術をどう残すか。
でもその歴史遺産・芸術が意外と「地元では知られていなかった」りする――“地元で知られていないものが果たして「価値ある歴史遺産」と言えるのか――”という風に言えなくもないけれど、
『地元にあるから、価値に気付けない』事って往々にしてある(というかそんなことばかり)と思います。
その価値を伝えたり、気付くきっかけは「外部からの人、観光客」だったりする。
まさに「日本庭園の価値」は、訪日客によって再認識・再評価されている側面は間違いなくある。日本庭園だけじゃなく日本文化全般がそうなんじゃないでしょうか。
例えば、今回の三重の中で言えば、『菰野横山邸園』は京都ファンからすれば「あの重森三玲の!」という庭園で、京都の寺院庭園とはまた異なる作風の素敵な庭園です。
ジョサイア・コンドルが建築を手掛けた『六華苑』もマジで良くて東京の『旧岩崎邸』とは異なる魅力――岩崎邸と違ってこちらはかわいい洋館!
ちなみにジョサイア・コンドルは日本庭園に関する書籍『Landscape Gardening in Japan』を残しています。「日本庭園を評価した外国人」の元祖はジョサイア・コンドルだったりする。(※戦国時代に来日した宣教師とかもそうだったのかもしれないけど)
でも、別に重森三玲の名もジョサイア・コンドルの名もテレビで頻繁に出るわけではない。地元に居るから気づける、というものではない。し、きっとその魅力を伝えるのは旅行等で訪れる方なんだろうな――
▼京都のオーバーツーリズム→その分散は日本文化にとってもきっと望ましいこと
京都における社会課題として、オーバーツーリズムが声高に叫ばれています。おそらくそれによる満足度低下が起こり始め。京都から他観光地の分散化も目の前にある課題でもある。
(在住しているいち当事者としては、「いや別に住みやすい閑静な場所も穴場もあるよ」と思ったりはするけど、それはマクロの話)
でも個人的な実感として、
「京都や東京が居心地悪いからもう日本に来ない」という人…も中には一定数いらっしゃるだろうけれど、それよりも「日本が好きだから、もっと別の街に行ってみる」という方もかなり多い、という風に感じる。
北陸(主に金沢)、中部地方(主に飛騨高山や南木曽)へ回遊している訪日客が多いのはここで書かないでも感じている人は多いだろうけど――
個人的に最近驚いたのが富山・井波。井波の宮大工/職人は日本文化・建築が好きな人なら割かし有名/見聞きしたことがあると思うけれど、決して「日本人にとってもメジャーな土地ではない」と思う。
3月に『井波別院 瑞泉寺』を訪れたら、数組欧米系の人が居て驚いた。日本人観光客はほぼ居ないのに…!



「訪日客の方が、日本文化全般に対して貪欲的。」
とはこれまでも度々感じてきたことがあるけれど、改めてそう感じた。
だからこそ
「日本人自身が、もっと日本各地のことを知るべき」
だと思う、庭園という分野でもそう思うし、日本人は「いやそんなことないよ」と思っていても、きっと海外の方々はもっと興味を広げていく(すでにそうなっている)。
■「ガーデンツーリズム」への期待
一方で、『庭園』というテーマの書籍やツアーが京都に偏ってしまうのは、やっぱり『ビジネスとしてはある程度読める』から。ニーズはある――と推測される――けど、それを裏付ける数値やアクションに欠けているのが現状なんだろうなあ。
個人、個々がリスクを取っていくのは難しい。
だからこそ、「ガーデンツーリズム」のような「仕組み」によって、PR活動や鑑賞企画をチーム/グループで出来れば、リスク・負担を軽減しつつニーズに対してチャレンジできる。と期待しています。
現状は「日本遺産」と比べてジャパン・ガーデンツーリズム自体の知名度がまだ全く無いのが現状だと思うので、、、そこは頑張りましょう…というお話を一年前はさせていただきました。
厳しい言葉も言ったかもしれないけれど、でもそれは「この仕組みには可能性がめちゃくちゃある」からです。
■「京都はすごいけどうちなんか大したことない――」の言葉の呪縛から逃れた先の未来へ。
「京都はすごいけどうちなんか大したことない――」
これまで50回も100回も言われたこの言葉。
もしかしたら最初は謙遜だったのかもしれない。
けど、それがいつの間にか「本当にそう思い込んでいる」になってしまったように感じます。
そして「このお庭は大したことない」となり、歴史的な価値のあった多くの庭園がいま失われているのではないでしょうか。
京都の庭園の維持管理への美意識の高さは日本一なのは間違いないけれど―「京都と比べて――」という呪縛から逃れる未来へ。「京都との比較」ではなく、その地域の歴史だったり、いち芸術としての評価がより得られるように。
「まだ知られていない」というのは、「伸びしろしかない」ということでもある。今回を機に「ガーデンツーリズム」を知った中部/東海地方の方が、三重県のみならず、各地の庭園を調べてみるきっかけになればよいなぁ、と思います!
■追記:中日新聞の日本庭園特集「庭〜THE GARDEN」
追記。今回取材いただいた中日新聞さんが、中部地方の日本庭園を特集するコーナー「庭〜THE GARDEN」の特集サイトを公開されていました(紙面でも展開されています)。さすが新聞社、、、写真やテキストのクオリティが「おにわさん」とは全然違う!(笑)
この様な大手メディアが『われわれの地元の日本庭園も美しく、誇れる』と発信してくださるのはとても嬉しい。色んな方の力を借りながら「日本庭園」の魅力が、日本人自身に再認識してもらえたらいいなぁと思う(※これは海外の人から見たら既に魅力的に映っているから、という)
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