7月29日 アマチュア無線の日 【SS】繋がった通信
日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。
【今日は何の日】- アマチュア無線の日
1973年(昭和48年)に日本アマチュア無線連盟が制定。
アマチュア無線は1941年(昭和16年)12月8日の太平洋戦争勃発と共に禁止されたが、1952年(昭和27年)のこの日、アマチュア無線が解禁され、全国の30局(人)にアマチュア無線局予備免許が交付された。アマチュア無線の普及とPRが目的。
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【SS】繋がった通信
地球を出発して既に十年余りの月日が流れた。人類はなんとか火星までは進出しているが、その先まではなかなか有人での宇宙船を飛ばせずにいた。そんな困難に挑戦したのが、ケーリーという三十歳の若い宇宙飛行士だった。火星の基地を飛び立ち冥王星を目指した旅に挑戦していたのである。
ケーリーが乗った宇宙船には野菜を育てるプラントルームがあり、野菜を育てると共に酸素を作り出すことにも利用されていた。もちろん、一番の目的は長期間の宇宙飛行のための食糧でもある。
操縦はAIによる自動操縦に頼った宇宙旅行である。地球から飛び立つのであれば、大気圏を抜けるのにかなりのエネルギーを必要とするが、火星ではそれほど必要がない。スムーズに火星の軌道から外れることが容易だった。
異変は土星の近くを通過するときに起こった。突然、推進装置が故障してしまったのだ。AIが故障を検知し、修復を試みたが直らない。船外活動用ロボットでも再三修理を試みてみるが、全く直せる気配がない。推進装置は二酸化炭素の気体を噴射させるものだ。船内で排出された二酸化炭素の有効活用にもなる推進装置だったが、残念ながら全ての推進装置が機能しなくなってしまった。ケーリーが乗った宇宙船は宇宙のゴミと化してしまったのだ。ケーリーは焦った。
「こんなところで死んでしまうわけにはいかない。なんとか火星基地に連絡しなくては」
ケーリーは無線でのSOSを発信し始めた。だが、土星に遮られて火星への電波が遮られてしまった。惑星は太陽を中心に公転しているため、時間が経てば火星が見えるようになるはずである。ケーリーは焦っても仕方ないと腹を括り、無線は受信のみを常にオンの状態で待つことにした。
船体が微かに動いている感じがする。ケーリーはレーダーを確認した。どうやら土星に引き寄せられているようだ。もう直ぐ土星を取り巻いている「環」の中に入り込みそうになっている。土星の環はほとんどが氷でできているので、水として利用できるかもしれないとケーリーは考えていた。通りすがりに水の補給ができれば野菜の育成にも自分の飲料水としても使えそうである。船内のタンクを満たすための準備を始めた。
土星の環の中に入った途端に、ケーリーが乗っている宇宙船は動きを停止した。完全に環の一部になってしまったようだ。これは予想外の出来事だった。推進装置が壊れてしまったままでは、土星の環から抜け出すことはできない。一生を土星の環の中でたった一人で過ごさなければならない。考えただけでゾッとした。ケーリーは、半ば諦め半分で無線に期待した。船内プラントの野菜で栄養を補給しながら、手がすけば常に無線の前に座った。
「無線を受信している船はいませんか。こちらは火星発メビウス二世号のケーリーです。推進装置が故障して土星の環の中で身動きが取れなくなっています。無線を受信された方の救援を望みます」
何度も何度も無線で呼び出しを試みたが反応はない。無情にも半年程度の時間が流れた。毎日同じことを繰り返して過ごしていたのだが、あるとき、無線機が何かの音を拾った。
「ビビビ、こちら、ピー、ピー、ガー、です」
「もう一度応答をお願いします。こちらは火星発メビウス二世号のケーリーです。助けを必要としています」
「ガガガ、キコエテ イマス。ナニ ヲ シテ ホシイ デスカ。ワレワレ ハ ドセイ ニ イマス」
「火星まで戻りたいので、推進装置の修理をしたいのです。技術者の方はそちらの船に乗っていませんか」
「ワカリマシタ。マズ ドセイ マデ ユウドウ シマス」
しばらくするとケーリーの宇宙船がガタッと軽い音を立てたかと思うとゆっくりと土星の方に引き寄せられている。どうやら磁力線を利用して引き寄せているようだ。ケーリーの脳裏に不安がよぎった。応答したのは、宇宙人だったのかもしれないと思ってしまった。そしてその不安は的中した。土星に引き寄せられたメビウス二世は土星の表面に空いた入口のようなクレーターの中に吸い込まれていった。
土星の地表の下に基地は作られていのだ。ケーリーを出迎えてくれたのは見たこともないようなロボットだった。ケーリーはロボットに促されてメビウス二世を降り、基地の中の一室に案内された。どうやらロボットが故障箇所を点検整備してくれるようだ。しばらくしてロボットが報告にやってきた。
「セイビ ニハ スウジツ カカリソウデス ブヒン ヲ ツクリナオシマス」
そう告げると去っていってしまった。そのとき頭の中で言葉が響いていた。
『ようこそ、土星に。私たちはここの住人です。時々地球には発展の確認をするために訪問をしていました。やっとこの土星まで飛んでくることができるようになったのですね。人口衛星はこれまでも何度か見かけましたが、有人の宇宙船は初めてです。歓迎します』
「え、どこから話をしているのですか。私の周りには誰もいませんが」
『失礼しました。いきなり顔を出すと驚かれると思い、あなたの頭の中にメッセージを送りました。私たちは、地球人のように話すための口を持っていません。食べるためだけの口なのです。だから話す代わりに脳に直接話しかけます』
「なるほどそうだったのですね。わかりました。今回は親切に助けていただき本当に助かりました」
奥の扉が開いて土星人と思われる「人」が現れた。手足が細いが形は地球人に似ているような感じをケーリーは受けた。しばらく滞在することになり緊張しながらも快適に過ごし、修理が終わったという連絡を受け、ホッとした。ケーリーは自分の宇宙船に戻り、土星人に感謝しながら土星を後にして火星を目指した。
その頃土星では、研究者たちの会話が始まっていた。
「今回の宇宙船の弱点とテクノロジーは調査できたか」
「はい、全て把握しました。我々のテクノロジーと比べると千年は遅れているようです。侵略の憂いは全くありません」
「そうか、では人体についての調査はどうだ」
「はい、そちらも完了しています。今まで、地球に行ってサンプル調査していた種と変わりはないようですが、若干寿命が伸びているようです。とはいえ、寿命は我々の五分の一程度と推測されます」
どうやら土星人は親切心というより、人類を調査し把握しておきたかったようだ。
了
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