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【SS 12月11日】南極点到達にまつわる記念日

【今日は何の日ショートショート】- THINK SOUTHの日

 南極にまつわる記念日として「Think Southの日」が制定されています。過酷な環境の南極において6カ国6人の冒険家が環境と平和の重要性を世界に訴えることを目的として犬ぞりで南極大陸横断を目指した。そして、12月11日、中間点である南極点に達したのだ。その後見事に全員が4000マイルを踏破した。


【SS】南極大陸への移住

 人類は脅威的なウィルスの恐怖に晒され続けていた。ついに全世界の人口は98%も減少し2億人にまで激減していた。生存が確認されているのは、日本、イギリス、フランス、ロシア、中国の六カ国のみとなっていた。皮肉なことに最初に南極大陸を横断したチームの国々だけに生存者が確認されていた。

 残った数少ない人類は、ウィルスの影響がない土地、そう南極を目指すことにした。2億人の南極への移住というとてつもない計画を考えたのだ。社会インフラの構築はもちろんのこと、各家族の住居の確保、食料の確保、教育の継続、コミュニケーションの取り方など問題はたくさんあった。

 しかし、宇宙へと脱出するまでの技術が育っていない今、できることは地球上で生き残る手段を考えることだった。あらゆる候補が検討された。地中、海上、海中、山岳地帯など食料をメインに考えるとどうしても温暖な場所が最適だったが、今はウィルスから逃げなければならない。人類は南極を選んだ。

 大型風力発電施設を建設し、南極点を中心とした放射線状に道を作った。南極点部分は巨大なマーケット棟が建設され、人々の食料や日用品を提供するための場所とされた。そして道に覆い被さるようにして住居もつくられた。暖房のために住居の上にも風力発電設備が備えられた。道の至る所に通信用の基地局も設置され必需品となったスマホも利用できるように整備された。食料を栽培するための工場も建設された。このインフラ構築のために数千人が先に南極入りして極寒の中で対応していた。

 10年の歳月が過ぎていた。すでに世界人口は当初の半分に減少していた。移住を急がなければならない。こうして人類の存亡を賭けた大移動が始まったのである。移動には大型ドローンが使われ、一度に1000人もの移動が可能となっていた。その後毎日移住を続け5年後、全人類は南極に移住完了した。

 祖先が残してくれた基地なども有効利用され、何とか人類は生き残る場所を確保した。ここでは、当たり前だが争いはなくなり、全てを共有して生き抜いていくことが最重要として認識された。言語は英語に統一され、子どもたちの教育も出身国関係なしで実施されるようになった。そして次第に「国」という概念が人々の脳裏から消え去っていった。すでに、80年の時間が経過していた。

 過去のウィルスの脅威を経験したものはすでに存在しなくなっていた。当時生まれてもいない世代が今は南極に集中している人類をリードするようになっているのだ。当たり前のように、声が上がり始めた。「南極から脱出してもいいのではないか」と。根拠はなかった。80年間もの間、誰も南極から出たものはいなかったのだ。いや、正確には何名かいたのだが誰一人として戻って来ることがなかっただけだった。そのことを人々は「南極より住みやすい場所を見つけたから戻って来ないんだ」と解釈するようになってしまった。

 閉ざされた環境で生活する人間は、壁の向こう側に憧れ、勝手に楽園を想像してしまうものらしい。南極の生活も外に出ると決して快適ではない。そんなところから、南極から脱出する時が来たんだと主張する人々も増加していた。

 南極での人口も今では安定して2億人程度で推移できるようになっていた。当初はなかった犯罪も年々増加するようになっている。人間の性なのだろう。内に持っている闘争本能や妬みなどが少しずつ復活してきていたのだ。すでに苦境に立たされた時の感情は忘れ去られ、より良い生活を目指したいと望む人々が増加してきていた。貧富の差も出始めていた。生き抜くために南極に集まり生活を始めた頃の精神は無くなり、ウィルスに侵される前の地球で生活していた人々と同じ考えを持つ人々が増加していった。

 歴史は繰り返すのだろう。残念ながら苦境を乗り越えるための工夫や譲り合いとうDNAは平和な環境に浸かりすぎると失われていくようだ。それよりも人より良い生活をしたいという欲が前面にでてくるようになっていた。南極に集った最期の地球人たちは分裂し、多くの人類はもっと良い暮らしをしたいと思い、暖かい地を目指して旅立っていった。南極に残った人類は約半分の1億人。どちらが正しいということではなく、未知を求める集団と今を守り抜く集団に分かれ、人類は分裂したのだ。そして、このことが最終的には人類滅亡につながる争いへと発展していくことを誰も知らなかった。

 環境と平和は重要だと主張した最初の南極大陸横断の冒険家たちの声をもう一度人類に届けたい。誤った道を選択する前に。。。

了 


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