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6月9日 無垢の日 【SS】命を守れ

日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。


【今日は何の日】-無垢の日

長野県松本市に本社を、愛知県名古屋市に支店を置き、オリジナル建材の製造・販売、木材・建材の輸入などを手がけるプレイリーホームズ株式会社が制定。

日付は「む(6)く(9)」(無垢)と読む語呂合わせから。自然素材志向、資源の有効活用、住宅の耐久性の向上などの市場ニーズに応えるために、無垢の木材の利用促進を図ることが目的。記念日は一般社団法人・日本記念日協会により認定・登録された。


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【SS】命を守れ

 山深いところに小さな村があった。この村の裏の山には、生まれたばかりの女の子ばかりを狙って喰らう鬼が住んでいた。村人たちは、赤ん坊が生まれるたびに冷や冷やしながら「どっちじゃ、今度はどっちじゃ、助かるのか」と心配そうに赤ん坊が生まれた家に押しかけた。そして女の子と解るや否や両手を合わせて「かわいそうに、かわいそうに」と言って帰って行った。

 山にいる鬼は、村に生まれた新しい命を匂いで判断していた。ただ、臭いだけでは男か女かはわからない。無垢な臭いを感じるだけだった。匂いを感じると大きな真っ赤な体を起こし、村へと向かい、匂いのする方へと歩き、村人たちに確認するのだ。

「今日生まれたのは、どっちだ。男か、女か。正直に言わないとお前を喰らうぞ」

「ひぇー、お助けを。今日生まれたのは、めんこい女の子でございますぅ」

「おお、そうか、そうか。正直ものは俺は喰らわないから安心しろ。家に帰っていいぞ」

「へい、ありがとうございます。大鬼様」

 鬼は赤ん坊が生まれた家に行き、隠そうとする両親を払いのけ、泣きじゃくる赤ん坊を片手で掴んであっという間に丸呑みにしてしまった。傍にいた大人たちは何もできずにただただ恐ろしい光景を見守るだけだった。満足そうに帰っていく鬼が見えなくなるまで、その場で固まってしまったかの様に動くことさえできなかった。赤ん坊を産んだ妻は、払いのけられた時の打ちどころが悪かったのか、そのまま息を引き取ってしまった。その後村人は集まって相談した。このままでは村は廃れてしまうだけだ。何とかしなければと神社の神官にすがった。神官は細い声で言った。

「わかりました。この村で今年から神官をしている身として、赤子を守り抜く手段を講じましょう。ついては大工衆のお力を貸していただきたい。この神社の裏にある木を切り乾かし、屋根も壁も床も無垢の木材のままで小さな家を二軒続きで建ててもらいたい。次の赤子が生まれる前までにできますか」

「おぅ、そんなことならお安いご用だ。俺たちで建ててやるよ」

 こうして、大工たちによる無垢の家を建てる工事が始まった。伐採をした木材を三ヶ月間乾かし、それを使って家を建てた。屋根にも瓦を使わず。無垢の木材を重ねて貼った。もちろん、雨や防腐対策のために家の外側は全て柿渋が塗られた。家の内側は無垢のままの木材が綺麗に磨かれ、木のいい香りに包まれていた。二軒続きの家は、「産みの家」と「育ての家」と名付けられた。産みの家に入ることができるのは、産婆と妊婦のみ、育ての家に入ることができるのは神官のみと告げられ村人は驚いたが、それで赤子が助かるのならと条件を承諾した。

 建物の完成の連絡を受けて、神官は家の内側のお清めを実施した。大工たちの気を消すことが目的だった。御神酒と塩とお祓いでお清めを実施し、完全に清らかな空間となる様にしたのだ。ちょうどその頃、臨月を迎える妊婦がいた。産気づいた時に産みの家に連れて来られ産婆と二人で中に入り、他のものは軒先で待機していた。中から「オギャー」という産声が聞こえ、産湯を軒先に準備し産婆が中に入れ、赤子を洗った。そしてすぐ様、育ての家に神官が連れて行った。女の子だった。

 その頃山では鬼は終始感じる無垢の臭いを不思議に思っていた。
「最近赤子は産まれてもいないのに、毎日無垢の匂いを感じるのは何故だ。一度、村に行って確認せねばなるまいな」そう思い、大きな体を起こし村に出向いた。匂いを感じる方に行くと産みの家と育ての家から匂いを感じることがわかった。鬼は大きな声で叫んだ。

「だれだ、こんな紛らわしい匂いのする建物を建てた奴は。出てこい」

「私でございます。神に使える身として清らかな建物を建てさせていただきました。すでにお札も貼り、家そのものは神聖な場所として祀ってあります」

「何、そんなもの俺様にかかれば、何の意味もないわ」

 鬼はそう言って、家に入ろうとしたが、近づくことすらできなかった。お札の力が強く、邪悪な魂を跳ね除けているのだ。鬼はなすすべもなく吐き捨てる様に捨てゼリフを言って山に帰って行った。

「ちくしょう。まぁ、どうせここ以外で赤子は生まれるんだから、ここはほっといてやるさ」

 こうして、新しい命を守る家ができた。村人たちは一様に喜びを隠せなかった。ただ、母親であっても直接会えないのは悲しかったが、鬼に食べられることを思えば我慢もできた。

 村人たちは神官は何故穢れていないのだろうかという疑問を持ち始めた。神官が育ての家に入って赤子を育てているが、神官は無垢なのだろうかと疑問を持ち始めたのである。もし無垢でなければ、綻びが出て結局鬼に食べられてしまうのではないかという恐怖を感じ始めたのである。そのことを察知してか、神官は打ち明けた。

「今、この村には女の子がいないから、嫁は隣村などから来てもらっているが、実は私はこの村で生まれた女の子なのだ。小さい時から男として育てられたため、生きながらえることができたのだ。両親に感謝している。お札に守られて成長し、恩返しのためにそのまま神官の大役を引き受けることになった。私もやっと一人前の神官になったと思った時、皆さんからの相談を受け、今回の対応を決心した。だから安心してくれ」

 こうして当分は幼い命を守ることを最優先とし、次に鬼を退治する手段を検討していこうということになった。みんなの土地は全員で守り抜くことを誓ったのである。団結する心はどんなに高い壁でも乗り越えていけることだろう。


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