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1月31日 愛妻の日・愛妻感謝の日 【SS】心の中で

【今日は何の日】- 愛妻の日・愛妻感謝の日

 1月31日は、似たような記念日が二つ制定されている。それが、日本愛妻家協会が制定した「愛妻の日」、そしてもう一つは愛妻感謝ひろめ隊という活動の隊長、神奈川県相模原市の浦上裕生氏が制定した記念日だ。いずれにしても妻を大切にしようと言う意思が込められている。

 愛妻に感謝の気持ちを表し、愛妻感謝を世界に広める日として「愛妻感謝の日」は一般社団法人・日本記念日協会により認定・登録されました。


【SS】心の中で

 中西一樹という営業課長がいた。彼は今年三十二歳になる。営業部として割と早くに課長になった方だ。今日は部下の大型案件が成約したと言う知らせが急に入ってきて、全員浮かれ気味になっていた。それで、急遽、部下を引き連れてのお祝い会を開催しようということになり、一樹は、部下の一人に声をかけた。

「おーい、小林さん。今日、お祝い会をやるからいつものお店を予約してくれ」

「解りました。私、あの店好きなんです。女将さんがとっても優しいしお母さんみたいだから」

「おお、そうかそうか、じゃあ頼むぞ」

 ただ、一樹には気がかりなことが一つあった。今日は、一樹にとって七回目の結婚記念日なのだ。朝、出かける時に妻の愛美とのやりとりを思い出していた。

◇ ◇ ◇

「じゃあ、行ってくるぞ」

「あなた、今日は何の日か知ってるわよね」

「ん、何かあったかな。覚えてないけど」この時一樹は、本当はちゃんと知っていたが知らないふりをするのが男というものだと考えていた。

「じゃあ、いいわ。行ってらっしゃい」

 自宅を後にして一樹は心の中で思っていた。『まったくあいつは。僕が忘れるわけ無いだろう。僕たちの結婚記念日を。帰りにはなにか買って帰らないとな。きっとごちそうを作って待っているだろうから、今日は早く帰ろう』

◇ ◇ ◇

 思い返して一樹は、それでも仕事ありきの家庭だから、妻もきっとわかってくれるだろうと思い直し、課のメンバーと一緒に行きつけの小料理屋に繰り出した。待っていた女将は、不審そうに小声で一樹に話しかけた。

「中西さん、今日は大切な日なんじゃないの。いいの、ここでみんなと飲んでて」

「女将さん、仕方ないさ。今日はとっても大きな案件を部下がまとめたんだから」

「じゃあ、電話ぐらい入れてあげれば、奥様に」

「いいのいいの、そんなに心の狭い奥様ではありませんからね〜」

 そう話をして一樹たちは奥の座敷で成約祝を始め、気持ちよさそうに飲み始めた。二時間くらい経過して全員がほろ酔いになってきた頃、徐々に翌日のことを考えて切り上げて帰るメンバーも現れはじめた。

「課長、僕、そろそろ失礼します。妻が待っていますので」

「おいおい、まだ十時だぞ。そんなんでどうするんだ。奥さんに気を使いすぎじゃないか」

「あー、課長。そんなこと言ってたら、課長は奥さんに逃げられちゃいますよ〜」

「バカ言ってんじゃないよ。うちの奥さんはそんなに心は狭くないんだよ。今日だってな結婚記念日だったんだけど、お前らとの飲み会を優先したんだぞ」

 その言葉を聞いて部下たちは一瞬で「まずい」と感じ、潮が引くように全員帰ってしまった。

「えっ、あれっ。みんな帰っちゃったよ。女将」

「中西さん、どんなに気心が知れてると思っている夫婦でもね、言葉にしないと伝わらなくて誤解されるものよ。手遅れになる前にお花でも買って早く帰ってあげなさい」

 一樹は急に罪悪感に苛まれたような感覚になり、店を出て近くの花屋に寄りバラの花束を買ってタクシーを拾った。タクシーの中で一樹は『僕の奥さんに限って僕のことが分からないなんて事はないと思うけど、今日はすっぽかしちゃったのは事実だしなぁ。怒ってるかなぁ、もしかしたら』などと考えていた。やがて自宅に到着したが、明かりが見えない。

「ただいまー、あれ」

 中から返事がないので仕方なく鍵を差し込み玄関を開けて部屋に入った。暗い。
なんとなく胸騒ぎを感じながらリビングに向かい、照明をつけた。ダイニングテーブルの上に一枚のメモがあることに気づいた。

『おかえりなさい。あなたといることに疲れました。あなたに振り回されるのはもう終わりにしたいので実家に帰ります。後日離婚届を送ります』

 一樹は焦った。どうしようもないくらい焦り、一気に後悔が押し寄せてきた。とりあえず、一樹は妻の愛美にラインを入れたが既読にならない。仕方なく妻の実家に電話を入れた。

「お義母さんですか、実は愛美が家を出てそちらに向かってしまいました。全部僕が悪いんです。心の中ではいつも愛美に感謝していたのに、言葉では全く伝えていなくて。勝手に解ってくれていると思っていたんです。僕は別れたくなんか無いんです。愛美を愛してるんです。愛美にはとっても感謝しているんです。なんとかお義母さんから伝えてくれませんか。戻ってきてほしいと」

 実家の電話に出ていたのは、妻の愛美だった。

「あなた、私よ。最初から言ってくれれば良かったのに。言葉で言ってくれないと女は不安になるのよ。でもあなたの気持ちがわかってホッとしたわ。今日はこっちに泊まって明日帰ることにするわ。今回だけは許してあげる。だから、これからはちゃんと言葉で伝えて、ね」

「あっ、愛美だったのか。お義母さんだと思って喋りまくってしまった。でも、解った。僕が悪かった。そうだよな、心の中だけで思っていても解らないよな」

「ううん、いいの。でも、あなたはいい部下の人たちと、いい行きつけのお店を持っているみたいね。みんなが教えてくれたのよ。今日は飲み会になって申し訳ありませんとか、女将さんからは、あなたのことを許してあげてねとか言われちゃったわ。なーんだ、外ではちゃんと話ししてるんだと思ったのよ。なんだかそれも悔しくって家を飛び出しちゃったの」

「そうだったのか。ごめんな。愛美にはとっても感謝してるよ。今の僕があるのは愛美のおかげだから。本当だよ。今日、バラを買ってきたんだよ、結婚記念日だから。花瓶に入れておくから明日見て。じゃあ、明日、おやすみ」

「ええ、じゃあ、明日。おやすみなさい」

 一樹と愛美はなんとか糸が切れないで済んだようです。感謝の気持ちを持っていてもちゃんと言葉にして伝えないと解らない時はありますよね。あなたも気をつけたほうがいいですよ。


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