10月17日 貧困撲滅のための国際デー 【SS】富の分配
日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。
【今日は何の日】- 貧困撲滅のための国際デー
1999年(平成11年)12月の国連総会で制定。国際デーの一つ。英語表記は「International Day for the Eradication of Poverty」。
フランスを拠点とするNGO「国際運動ATD第4世界」の発案により、多くの国でこの日が「極貧に打ち克つための世界デー」となっていることから、国連総会で「貧困撲滅のための国際デー」とすることが宣言された。貧困の撲滅を目指し、人権と尊厳の尊重を呼びかける日である。この日を中心に、国連事務総長よりメッセージが発信される。
1987年(昭和62年)、貧困・飢え・暴力・恐怖の犠牲者に敬意を表するため10万人がフランス・パリのシャイヨ宮の人権広場に集まったのが最初である。この呼びかけをしたのは「国際運動ATD第4世界」を創設したフランスの活動家ヨゼフ・レシンスキであった。1996年(平成8年)は国連が定めた「貧困撲滅のための国際年」(International Year for the Eradication of Poverty)だった。
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【SS】富の分配
世の中は決して平等ではない。それどころか、国による貧困の差はますます増加するばかりだ。日本に生まれてよかったと思う反面、日本の中でも貧しい暮らしを強いられている人も多い。世の中を見渡せば、戦争により一瞬にして平和な生活を失った悲惨な人々、生まれた時から貧困の中で育ち、少ない栄養でかろうじて命を繋いでいる人々、国から逃げ出したいと思いながらもお金の工面ができずに貧しい生活に甘んじている人々など、ニュースになっているだけでも悲惨な現状の中に身を投じている人たちがなんと多い事か。
そんな世の中を見て、立ち上がった富豪たちがいた。彼らの資産を合わせると国がいくつも買えるのではないかというほどの資産家たちだ。彼らは、巨万の富を手に入れ、黙っていてもその富は時間と共に増殖していく。資産家たちは手にした富の次なる投資を考え始めていた。
そんな折、世界の貧困のニュースは毎日のように世間に流れるようになり、資産家たちも横目では見ていたが、ある時、閃光のような閃きが資産家たちの脳裏を襲った。思い立ったら早い動きをするのは、どの資産家も同じだった。瞬く間に意思疎通が図られる。当然のように、資産家たちをつなぐネットワークで連絡専用チャットが飛び交った。
『最近の報道を見ていて世の中で貧困にあえぐ国が多すぎると感じたんだ。我々で何とかできるんじゃないか』
『全く、同じことを考えていたよ。我々が力を合わせれば、人々を救うこともできるはずだ。早速計画を練らないか』
『我々の計画は、絶対に極秘で進めないと我々はヒールになってしまい、本業の方にも影響が出かねないな。このメンバー以外には情報が漏れないようにしよう』
『行動を起こすなら早い方がいいな。対象とする国々を早速決めようじゃないか』
『我々と繋がりを持っている国をまずはターゲットにしようか』
『それがいいな。だが、宗教戦争の国は多分我々の手には負えないだろう。今回は見送らざるを得ないな』
『そうなると、やはり食糧不足で貧困にあえぐ国々がターゲットということになりそうだな』
『我々の実名を明かすわけにはいかないから、プロジェクトネームのようなものが必要だな。チョコレート・エンジェルってのはどうだい』
チャットではどんどんと話が進み、プロジェクト名まで決定し、複数の国が数名の資産家たちの手に委ねられようとしていた。当然ではあるが、ターゲットとなった国の元首はおろか政府も知るよしはなかった。資産家たちは、貧困にあえぐ人々に救世主のように手を差し伸べると同時に、自分たちの掌にも利益という見返りが入ってくることを計画していた。それは壮大な計画だった。現在の資産家たちの悩みは、各国に展開している工場や物流倉庫が、その国の政情の変化で打撃を受けることだった。大きな投資をして回収する前に打撃を受けると大きな損失となるのだ。その額は、我々の想像を遥かに超えるものだろう。
資産家たちは、ターゲットと定めた国々の政府に対し、チョコレート・エンジェルと名乗って秘密裏に打診を始めた。資産家たちが最初に取った行動は、食料の安定供給に向けた輸送路の確保と食料そのものだった。貧困にあえぐ人たちに直接届くようにすると、瞬く間に救世主のような扱いを受け始めた。食料が安定して供給されるようになると子供には学習する環境、大人には労働して現金を得る仕事を提供することを実施し始めた。チョコレート・エンジェルは、多くの学校を作り、教師も送り込んだ。そして、インフラ整備の仕事を提供し大人たちの雇用を作り出した。
十年が経過した頃、チョコレート・エンジェルに対する信頼は揺るぎないものにまで育っていた。そして、この十年で多くの子供だった国民が成人し選挙権を持つようにもなっていた。働いていた大人たちの中からは、リーダーとなるものも多く育って来ていた。十年の間にチョコレート・エンジェルを指示する国民は、なんと九割以上にまで達していたのである。反対派は、その国の中で昔から裕福だったものたちだけになっていた。
チョコレート・エンジェルは、すでにその国の武装組織も完全に掌握していた。これで、準備は全て整ったのだ。これから先はョコレート・エンジェルが投資した資産を回収する時になったのだ。チョコレート・エンジェルは、全国民に対し声明を発表した。
「私たちチョコレート・エンジェルは、皆さんのために様々な投資を行い、十年間に渡り、皆さんの生活の改善を支援させていただきました。現在の結果に対し、私たちも大変嬉しく思っています。そこで、国民の皆さんに今後のことを判断していただきたいと思い、声明を出すことにしました。もし、今後もチョコレート・エンジェルを信頼していただけるのであれば、新しい国として生まれ変わる選択を皆さんにお願いしたいと考えています。クーデターではありません、平和的に現政府には退いてもらい、皆さんの中のリーダーが新しい政府を作り、我々が外部顧問としてサポートするという形での新しい国をスタートさせたいのです。そうすることで、現在では一部の人に流れていく利益を直接国民の皆さんに分配できるような政府にしたいのです」
全国民は諸手を挙げて喜んだ。十年前までは本当に貧しかった生活を強いられていたということを現在の成人国民は全員が認識していたのである。翌年、この国では新政府が誕生した。そして、チョコレート・エンジェルによる、次の段階、すなわちそれまでの投資を回収し、自分たちの利益を増加させる政策を開始したのである。チョコレート・エンジェルのメンバーが保有する工場を新たに建設し、安価な労働力の雇用促進を図り、税制優遇も実施し、本社に利益が流れる仕組みを構築したのである。計画では、十年後には、総投資額より利益の方が上回る計画だ。チョコレート・エンジェルによる、二十年計画のビジネスは、人財育成も伴い、国民を豊かにすることで自分たちにも利益が転がり込んでくるような国作りだったのである。
了
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