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5月15日 国際家族デー 【SS】不思議な家族

日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。


【今日は何の日】-国際家族デー

1993年(平成5年)9月の国連総会で制定。国際デーの一つ。英語表記は「International Day of Families」。

各国において家族に関する問題についての認識と理解を深め、その問題に取り組む能力を高めるとともに、解決に向けての活動を促すことが目的。毎年、国連事務総長のメッセージが発表される。また、この日を中心に、NPO(非営利団体)などでイベントやキャンペーンが実施される。

家族は国や社会により、様々な形態と機能を有するものであるが、家族における男女の平等が求められ、暴力や差別、貧困のない家族が望まれている。また、子ども達が健康に育つためには、家族の愛情とともに、医療や教育をはじめとする基本的な支援も必要である。家族は重要な役割を担っており、その認識を高めるための日である。


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【SS】不思議な家族

「おはよう。お父さん」

「あぁ、愛、おはよう。母さんが朝食の準備してるから、愛も手伝ってやりな」

「はーい、その前に卓也を起こしてくるわね。あいつはいっつも遅いんだから」

 朝七時前、出かける前のごく当たり前ような会話が交わされている普通の家族の朝の光景だった。一見すると、至って仲良しの家族ではあるのだが、ちょっと他の家庭とは異なっていた。家族構成は、夫婦と子供二人の古い一軒家での四人暮らしである。父親の龍一は、五十八歳、母親の由梨は五十六歳、長女の愛は二十四歳、長男の卓也は二十三歳だ。子供たちは二人とも仕事についているが、まだ独身なので全員が同じ家に住んでいる。普通の家族に見えるのだが、実は最初は姉弟以外は苗字が違う家族だった。いや、法的には他人が集まった家族だったと言った方が正しい。

 もともとは違う場所のアパートに、父親である名島龍一という男性が一人で生活をしていた。八年前のことである。独身だった龍一はそれまで会社員としてSEをしていたのだが、独立しフリーのSEとして生計を立てていた。昨今はコロナ禍でリモートでの仕事が主流になり、龍一も完全にリモートからの仕事のみに舵を切って対応していたのだ。先行きのことを考えての決断だった。さらに、リモートによる仕事でも人とのつながりを希薄にしないために、独自の相談窓口をSNS上で開設し、日々の生活で発生する悩み相談をボランティアで実施していたのである。

 相談室の開設早々、DVに苦しむ女性からの相談が入った。偶然にも割と近いところに住んでいる女性だったが、もともと孤児で施設出身だったため逃げ出していく場所がなく、日々恐怖を抱きながら生活をしていた。そんな時ちょうど龍一の開設した相談室を見つけ、夫に内緒でメッセージを入れたのだった。

「助けてください。警察にも何度も行ったのですが、その度に連れ戻され、辛い日々を送っています。体に傷ができる暴行は加えられていないので客観的にDVと判断してもらえません。でも買い物以外の外出は許可されず、買い物の時はGPS付きのスマホでずっと監視されているのです」

 龍一はこの女性の相談内容を信じ、買い物に出た時スーパーのトイレにスマホを置いて、逃げ出してくるように指示をして、龍一はスーパーまで自分の車で女性を迎えに行き助け出して連れて帰ってきたのだった。なぜかその時はそれ以外に方法が思い浮かばなかった。手遅れにならないことだけを意識したのだ。それが田坂由梨という女性だった。それから、同居が始まったのだが男女の関係には至らないまま五年が経過していた。由梨の夫との関係はいまだに清算できていない。

 不幸な境遇の人への出会いは由梨のあとも続いた。偶然にも外出していて不遇な環境で生活を強いられている若者の兄弟に出会ったのだ。たまたま何人かに囲まれて暴行を受けていた兄弟がいて、そのままだと姉と思われる方が連れて行かれそうに見えた。咄嗟に大声で「お巡りさん、あそこです」と叫び、囲んでいた数人の男性が驚き慌てて逃げて行った後、声をかけたのだ。この時は由梨の服を買うために二人で買い物に出掛けていた時の出来事だった。

「二人とも大丈夫か。結構あざができちゃってるな」

「とりあえず、一緒に来て。手当してあげるから」

「ありがとうございます。助かりました」

 姉弟も夫婦らしき人物から声をかけられたので、警戒することなくついていったのだった。これが、杉崎愛と杉崎卓也だった。弟が成人した時に親から勘当を言い渡されたようだった。親は実の親ではなかったらしく複雑な家庭環境で育ったようだった。家を追い出された後は、アルバイトで収入を得て細々と生活をしていたようだ。とりあえず龍一はこの二人も連れて帰り、狭いアパートで四人暮らしが始まった。当然のように近所からは白い目で見られるようになった。そこで龍一は一大決心をして由梨、愛、卓也に話をした。

「ここじゃない土地で、四人で住める場所を探したいと思う。ついては、この四人で家族にならないか。由梨はまだ離婚できていないから正式に籍は入れられないけど別居期間の実績を作って、いずれ離婚できた時に籍を入れればいい。愛と卓也はもう成人しているから僕と養子縁組をすれば、法律上は僕の娘と息子になることができる。父親の経験はないけど相談相手にはなれると思うんだ。どうだ、みんな。僕からの提案を受けてくれるかな」

 龍一の話を聞いて三人は涙を流して喜んだ。新しい信頼できる家族が誕生した瞬間だった。その後、四人はアパートから離れたところに一軒家を見つけ、移り住んだ。そして親子四人を誰も知らない場所での新しい生活が二年前から始まっていたのである。近所の人たちから見れば仲睦まじい家族にしか見えないだろう。二階で寝ている卓也を愛は起こしに階段を軽快にトントントンと登っていった。階段を登る足音からも幸せを感じるようだ。愛は弟の部屋に入り声をかけた。

「卓也、おきなさーい。七時だよ。お母さんが朝ごはん作ってるから、私も手伝ってくるからね。さっさと起きなさいよ」

「あぁ、おはよう、姉さん。分かった、もう朝か〜」

 この家では、毎朝四人揃って朝食を取るのが当たり前の風景になっている。もちろん、朝は忙しいのでそんなに会話はできないが、それでもお互いをもっとわかりあうために話をしている。由梨が法的にも妻となり母となるために、家族は協力しあっている。血のつながりがない親子であってもお互いがお互いを信頼する心がこの家族にはあった。暖かいこの家族はきっと幸せになることだろう。


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