【SS】気配
それは、少しばかりの木枯らしが吹いている時のことだった。人影のない広い歩道を歩いて交差点に差し掛かり、赤信号で立ち止まった時のことである。なんとなく、後ろに違和感を感じた。誰かが後ろにいるような感覚を覚えたのだ。振り返るのは怖かったが、まだ明るい昼間だったので、思い切ってゆっくりと振り返った。
当たり前だが、誰もいない。また向きを変えて元に戻ると、信号が青に変わり、交差点を渡るように促す例の信号とともに流れる音楽が流れ始めていた。無意識のうちに足を前にだし、横断歩道のストライプの上を歩いて渡った。なんとなく気持ち悪いままだったので、耳だけは澄ましていた。すると、ガサッガサッという音がついてくるではないか。
まだ明るい昼間ではあるが、車も通っていないし、誰一人として歩いていもいない。どうも、病院で診察を受けたあとから誰かにつけられている感じがしてならない。怖い。その時そう思った。
歩く速度を少し早めると、そのことを察したかのように冬の木枯らしも強くなった。寒さまで後ろから追いかけてくる。襟を立て、両手をポケットに突っ込み家路を急ぐ。しかし、ガサッガサッという音は相変わらずついてくる。足早に歩くと同じタイミングでガサッガサッと音がする。全く離れる気配がない。僕は立ち止まった。そして、振り返った。やはり誰もいない。
違和感は足元にもあった。下を見た時、左の靴が目に入った。よく見てみると、枯れ葉が何枚も絡まっていた。どうやらガムかなにかを踏みつけて枯葉を拾って歩いていたようだ。気持ち悪い音の正体が分かり、明るい気持ちで家路を急いだ。
了
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