【SS】未来のエアコンと国策
今やどこの家庭にもある電化製品といえば、エアコンもその一つに入るだろう。昔、クーラーと言われていた時代にはかなりの高価格だったが今はダイソンの扇風機と張り合う程度まで価格が下がっているものも珍しくない。
しかし、普及とともにエアコン内のカビ対策が徐々に問題化してきている。冷房を利用した後はエアコンの中も冷えている。それが停止した途端に冷えていた内部の温度が高くなり水滴に変わる。そのまま放置するとカビ菌にとって好ましい環境となりエアコン内部にカビが蔓延るようになる。高級なエアコンは自動清掃機能が付いてはいるが、完全とはいえない。どうしてもエアコン清掃業者にお願いすることになってしまうか、カビの匂いを我慢して利用し続けるかと言うことになってしまう。後者の場合はアレルギー体質を助長してしまうので問題だ。
そんな問題を抱えたエアコンも時代とともに構造変化が起こった。エアコンの室外機、室内機という概念はなくなり、コンセントから電力を供給する必要もなくなったのだ。家や部屋の外で熱交換した際のエネルギーや太陽発電による電気をバッテリーに蓄え稼働できるようになっている。室内に設置されるのは、壁の端から端まで天井と壁の境目の部分および床と壁の境目の部分にフレキシブルに曲げられるパイプ状の吹き出し口が設置され、24時間快適な温度と湿度になるような制御ができるようになった。冬は下のパイプから暖かい空気が、夏は上のパイプから冷たい空気が出てくるようになっている。パイプなので部屋の長さに合わせてカットでき、どんな部屋にでも届けられるようになった。もちろん、浴室やトイレにもだ。
この新しいエアコンにより、家の中全てをほぼ同じ温度の状態に年中保つことができるようになり、寒さのためにショックを起こしたり、家の中での熱中症の危険性は排除された。しかも、機械的部品が少なくなったことで設置費用も安価なものとなり、設置の普及率を後押しすることとなった。
テクノロジーの進化は人々の普段の生活から、工夫することや我慢することを排除し続けている。それを人々は生活の質の向上と勘違いし、寿命を伸ばし、長い間働くことを強いられ続けているとは思っていない。国にとって財源となる税金をできるだけ長い間納めてもらうには、病院に行かなくていい健康な体が国民に必要だと判断され、国費が開発費に投じられ続けている。病院にかかる公的補助の支出は膨大だからだ。もちろんそう判断しているのは、AI内閣の中枢に鎮座するAIロボットだった。
了
便利になればなるほど快適性も向上する。そんなことをふと思った時、エアコンのフィルターやカビ掃除が面倒だなと思い、たどり着いた創作です。
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